シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
マザー、今度の職場は機関士補佐です。機関士がどんな仕事かも分かりませんし、おまけに上司はゼル様とあって緊張は今までの比ではなく…。ドキドキしながら着任のご挨拶をしにお部屋の方へ伺いました。
「失礼いたします。本日付で機関士補佐に着任しました」
「なんじゃ、お前か。ペダルボートしか運転できない方向オンチと言われとったな」
ゼル機関長…。もっとマシな人材を期待してらしたのでしょうか。私なんかが配属になって申し訳ありません。
「で、機関部の方はどうなんじゃ。操縦がダメで方向オンチでも動力関係に強いというなら問題はない」
「えっと…機関部のお仕事って何でしょう?」
正直に尋ねるとゼル機関長は苦虫を噛み潰したようなお顔をされました。
「保守整備なぞ期待はせんが…。そうじゃ、シャングリラの動力源は何か知っておるのか?」
「…知りません。ハイオクとかレギュラーでないってことは分かりますけど」
「せめて原子力とくらい言わんかい!学校で何を習ったんじゃ!!」
「科学の成績は下から数えて3番目でした」
「…もういい…」
ゼル機関長は机に突っ伏してしまわれました。
「とりあえず雑用係をさせておくのが一番平和に思えるわ。エンジンに何かあっては大変じゃからな」
ここでも雑用係ですか。とことん能無しみたいです、私。
「喜べ、ハーレイ。…機関部の大事な雑用係を貸し出してやることにしたわい」
ブリッジに連れて行かれた私はキャプテンの前に押し出されました。
「こやつ、シャングリラの動力源は何かと聞いたら、ハイオクではないと言いおったんじゃ」
「ハイオクですか…」
あ。キャプテンの目が点になってます。
「レギュラーでもないとハッキリ言った。こんなヤツ、危なくて見習いもさせたくないわ。機関部に在籍しとる間は出向という形で使ってもらえるとありがたい」
「確かに不向きな人材ですな。で、出向ということは…」
「ぶるぅの番でもさせておけ。また当分の間、助かるじゃろう」
「分かりました、機関長。ありがたくお借りしておきます。…ということで、よろしく頼む」
キャプテン、なんだか嬉しそうです。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が大切なのは確かでしょうけど、胃が痛くなるのはできれば避けたいと思ってらっしゃるみたいですね。
「機関部からの出向ならば、仕事はぶるぅの番だけでいい」
「あのぅ。お茶くみとか、おやつ配りとかは?…機関部には必要ないんでしょうか」
「ハイオクにレギュラーと言ったのだろう?いくら違うと思っていたといっても、ガソリン車と同列にされたのではな…。機関長はシャングリラのエンジンにとても誇りを持っている。機関部は聖域のようなものなのだ」
「…理屈も分かっていない人間は立ち入り禁止ってことですか…」
今までで一番役に立てない職場に来たことが分かりました。これからどうすればいいんでしょう?
「そう気を落とさなくてもいい。機関長に言われた任務があるだろう?…今日から引き続き、ぶるぅの番だ」
マザー、そういうことで機関部から出向させられました。仕事は「ぶるぅが外出している間、扉の前でじっと帰りを待つこと」です。ゼル機関長の精神衛生のためとキャプテンの胃の健康のため、新しい職場で頑張ります。