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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

整備士補佐  第1話

マザー、今度は整備士補佐になりました。保守整備は機関部のお仕事なので上司はまたまたゼル様です。前に「役立たず」だと言われましたが、今回はそれで済まないような…。

「新しい整備士補佐と聞いたが、またお前かい!」
着任挨拶にお伺いするとしっかり覚えておいででした。すみません、ゼル機関長。
「ハイオクとレギュラーのことは忘れとらんぞ。お前なんぞに整備されたらシャングリラは即、沈没じゃ!」
「…分かってます。自分でも自信ありません。でも部品を磨く程度なら…」
「いかん、いかん!一切手出しさせんわい。関係者との会話も禁止じゃ。何か起こってからでは手遅れじゃからな、その前に出向してもらおう」
「でも…。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の留守番はもう要らないと言われましたが」
「操舵士見習いの時と同じでいいんじゃ!ハーレイに何か仕事をもらってこんかい、バカ者が!!」
役立たずからバカ者に昇格したのか降格なのか、叩き出されてしまいました。とほほほ…また出向です。

「そういうことで出向になりました。キャプテン、よろしくお願いします」
ブリッジで挨拶するとキャプテンは苦笑いしておいででした。何か仕事はあるのでしょうか?
「そうだな…。なんでもいい、というなら無いこともないが」
「このままだとバカ者で終わってしまうんです。何か仕事をいただかないと…」
「では、ぶるぅを掻いてやってくれないか」
「は?」
「そのままの意味だ。ぶるぅが痒いと騒いで困っている。もちろん、シラミの心配はない」
どうやら「そるじゃぁ・ぶるぅ」はまだ痒いと訴えているようです。
「あたしにも「痒い」って言ってたよ」
ブラウ様がおっしゃいました。
「ハーレイ、シラミ騒ぎの時にぶるぅを甘やかしすぎたんじゃないか?あれからずっと痒い、痒いって」
「…それは…。本当に痒そうだったし、遊んでやらないと風呂にもおとなしく入らなかったし」
「ほら、やっぱり。痒いと言ったらかまってくれると思ってるんだよ。可愛いじゃないか。ぶるぅはこの子に掻いてもらうより、あんたに来てほしいんだと思うけどねえ」
「…甘やかすのはためにならない」
ブラウ様は笑っておいででしたが、キャプテンは苦いお顔です。
「だが、放っておくのもかわいそうだ。…ぶるぅが痒がっていたら満足するまで掻いてやってくれると助かる」
「分かりました。じゃあ、さっそく様子を見に行きますね」
これでお仕事ゲットです。私は「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋へ出かけていきました。

「かみお~ん♪」
部屋を覗くと「そるじゃぁ・ぶるぅ」はカラオケの真っ最中でした。が、私の姿に気付くなり歌は途切れて…。
「痒いんだ」
シラミを貰った時そっくりに「そるじゃぁ・ぶるぅ」は首の後ろを掻きました。
「…だが背中まで掻くには、ぼくの身体は固すぎる。誰かにゆだねなければ…ぼくの首筋、もっと下の方、ぼくの背中を掻ける者。誰か、誰か、誰かぁぁぁぁ!!」
えっと。なんだか芝居がかっていますけど?
「…痒くて痒くてツライんだ…」
あまり本当とは思えませんが、キャプテンのご命令でもありますし…。
「痒いっていうのはこの辺ですか?」
背中の真ん中あたりを掻いた途端にガブリと右手を噛まれました。
「触れると火傷するよ」
いたたた…。やはり遊ばれているようです。こんなこともあろうかと用意してきた救急箱で応急手当。ここで引き下がっては、出向先でも無能のレッテルを貼られますから。私は秘密兵器を取り出しました。
「そういうことなら、これで掻きます」
庭師見習いだった時の先輩に借りた小型熊手。鉄製の片手サイズです。
「孫の手は自分で掻くものですけど…不肖わたくしが存分に掻かせていただきますっ!」
「やめたまえ!!!」
「いいえ、痒いんでしょう、遠慮なさらず!!!」
熊手を振り上げて突進すると「そるじゃぁ・ぶるぅ」は転がるように壁際に逃げ、そのまま丸くなりました。
「…すまない…痒いなんて言って…。心からすまないと…思って…い…る…」
あ、狸寝入り。でもまぁ、痒くないんならいいでしょう、うん。

マザー、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は今日も「痒い」と騒いでいます。私がキャプテンに報告したので「そるじゃぁ・ぶるぅ」が痒がった時は小型熊手で掻くということになりました。小型熊手を忘れた人は「無視」か「自己責任で掻いてやるべし」とシャングリラ中への通達です。ちょっと可哀相なことになったでしょうか…?




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