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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

球技大会・第1話

見損ねてしまった親睦ダンスパーティーのワルツ。発売された公式録画を買った私は、帰宅するなり再生しました。本当は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋で見ようとしたのですけど、ジョミー君たちが「照れるから家で見てよ」と言ったんです。うわぁ、流れるようなステップが素敵。「壁の花になりたい」発言をしたアルトちゃんは途中でまりぃ先生と入れ替わったんですね。それに…まりぃ先生、私たちが体育館に戻ってくる前に教頭先生とタンゴを踊っていたなんて!…そのまりぃ先生のお色気が5割増になった原因が、生徒会長さんの保健室通いだったとなると…なんだか心配になってきました。会長さんとまりぃ先生、まさか本当に大人の関係?

会長さんとまりぃ先生のことが気がかりで、私はろくに眠れませんでした。寝不足の頭で登校すると…。
「諸君、おはよう」
グレイブ先生が今日も軍人みたいにカッカッと靴音をさせて現れました。
「突然だが、明日は健康診断がある。まりぃ先生の意向で球技大会に備えて実施することになった。全員、体操服を用意して登校するように」
げげっ!そんな急に言われても心の準備がありません。今更ダイエットなんか間に合わないし。あちこちで女子のブーイングが上がりましたが、グレイブ先生は涼しい顔で。
「健康診断は抜き打ちだからこそ意味がある…のかもしれないな。いいか、明日、食事抜きで来て倒れるような輩が出たら容赦はしない。該当者には向こう1週間、特別に宿題を出すことにする。むろん数学だけではないぞ。各自の弱点克服のため、苦手科目を加えておく」
うわぁぁ!…こんなことを言われちゃったら、食事を抜いても無駄ですよね。いっそヤケ食いしてもいいかも…。そんなわけで私とスウェナちゃんは普段どおりに昼食を食べ、放課後は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ。今日はカロリーが高そうなチーズケーキが待っていました。ジョミー君とサム君は早速パクつき始めましたけど、スウェナちゃんと私が一瞬ためらったのを「そるじゃぁ・ぶるぅ」は見逃しません。
「どうしたの?…チーズケーキは嫌いだった?」
「ううん、そうじゃなくて。…太るかなぁ、って」
「太る?…二人とも急にどうしたの?」
キョトンとしている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。紅茶を飲んでいた会長さんがクスクスと笑い出しました。
「明日は健康診断だそうだよ。だから体重を気にしているのさ」
「そっか。…ぼく、検査票に手形を押してあげようか?」
検査票に手形。そりゃ、パーフェクトにはなるでしょうけど…。
「ぶるぅ、女の子に失礼だよ。乙女心は複雑…だよね?」
うう。ウェディング・ドレスが似合う超絶美形の会長さんには、私たちの悩みなんて分からないでしょう。スウェナちゃんと私はチーズケーキのお皿を引き寄せ、ヤケクソで食べ始めました。ああ、でも…悔しいけれど、とってもとっても美味しいですぅ…。おかわりっ!

チーズケーキが無くなった頃、部活を終えたキース君たちがやって来ました。お腹を空かせた3人のために「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお好み焼きを焼き始めます。お決まりのコースで、いつもは私もスウェナちゃんも『おやつの追加』とばかりに食べるんですけど、さすがに今日は…。
「どうした、具合でも悪いのか?…それとも焼きソバ気分だったか?」
「今日は我慢してるんだよ。明日は健康診断だから」
キース君の言葉に即答したのはジョミー君です。
「なるほど、体重が気になる…か。俺に言わせれば体重なんか大したことではないんだがな」
「男の子には分からないわよ!とてもデリケートなことなんだから!!」
スウェナちゃんがブチ切れましたが、キース君は溜息をついて。
「…体重くらいで騒げる女子は幸せなんだぞ?…俺たちは明日はセクハラの危機だ」
「「セクハラ!?」」
見事にハモッた私たちの声に、柔道部の三人が頷きました。キース君、シロエ君、マツカ君。いったい何を知っていると…?
「…ぼくたち、運動部ですからね…。健康診断、よくあるんです…」
か細い声のマツカ君。
「そうなんです!…で、まりぃ先生の所に行くんですけど、まりぃ先生の好みに合った生徒の健康診断はいつだって特に念入りで!」
拳を握り締めたのはシロエ君。
「…筋肉の様子を調べるとか言って腕を撫で回すくらいは序の口だな。筋肉は腕だけに限ったわけではないし」
キース君が肩をすくめて言いました。
「そんなわけだから…ジョミーとサムも覚悟しておけ。俺の情報網によると生徒会長が一番ヤバイが、健康診断を受けずに済ませていると聞いたし、矛先は他に向くと思うぞ」
「ふぅん?…まりぃ先生がぼくを待ってるのか…」
のんびりとした口調で会長さんが呟いた時、フィシスさんが部屋に入って来ました。会長さんの隣に座ったフィシスさんに「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお好み焼きのお皿を渡します。
「せっかく待ってくれているのに、行かないとガッカリされちゃうかな?…どう思う、フィシス。ぼくは健康診断に行くべきだろうか?」
「…健康診断は体操服で、と聞きましたわ。体育にはお出にならないのですし、体操服が無いではありませんか」
えっ、会長さんは体育の授業は不参加?虚弱体質っていう噂は本当だったのでしょうか。
「さぁ、どうだろうね?…体操服を持ってないのは事実だけど」
会長さんの顔に悪戯っぽい微笑が浮かびました。
「今日、ハーレイの所に検査服が届けられたみたいだよ。ハーレイはぼくの担任だけど、健康診断のことも検査服のことも…ぼくに伝えてはこなかったな。セクハラ疑惑も聞いたことだし、明日は検査服を着て健康診断に行ってみようか。ほら、こんなヤツ」

言い終わった途端、会長さんの制服は浴衣みたいな水色の検査服に変わっていました。バスローブほどではありませんけど、鎖骨とか…浴衣より短い裾からのぞいている白い足とか、胸がドキドキしてきます。こんな格好で出かけていったら、まりぃ先生の思うツボでは…。
「似合うかい?…体操服より検査っぽくていいだろう?」
「好きになさって下さいな。…よいではないか、と言われても私は知りませんわよ」
「大丈夫。帯はついてないから、帯回しなんてできっこないさ」
帯回しというと、もしかして時代劇で有名な…。まりぃ先生ならやりかねないような気がします。でも会長さんは健康診断に行く気満々で、フィシスさんも止めはしませんでした。どうか健康診断が無事に終了しますように!…あ、でも…その前に…。気がかりなことがあるんでしたっけ。セクハラ疑惑もあるという健康診断にわざわざ出かけようという生徒会長さんはやっぱり、まりぃ先生と…?
「…夢以上のサービスはしてないよ」
えっ?
「まりぃ先生には夢を見せてあげてただけなんだけど。…言っただろう、ぼくは昼寝がしたかったんだ。運動なんて面倒じゃないか」
パチン、とウインクする会長さん。私たち1年生はキース君を除いて全員真っ赤になってしまいましたが、フィシスさんは平然としています。会長さんの健康診断、まりぃ先生と会長さんのどちらが勝者になるのでしょうか…。 




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