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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

終業式・第1話

今日は終業式!明日から楽しい夏休みです。ワクワク気分で登校すると校門の辺りに人だかりが。なんだろう、と近づいてみると校門の両脇に背丈よりも大きな信楽焼の狸が置いてありました。それだけじゃありません。構内にも信楽焼の狸が…ありとあらゆるサイズの狸が所狭しと並んでいます。校舎へ向かう途中にも、校舎の中にも狸がいっぱい。A組の教卓やロッカーの上にも狸がズラリと…。
「なんだろう、これ」
ジョミー君がロッカーの上の狸を1つ抱えてきました。他の男子も狸を持ち上げてみたり、ひっくり返して裏側を見たりしています。スウェナちゃんと私も、ジョミー君が持ってきた狸をしげしげ眺めましたが、どう見ても何の変哲もない信楽焼の狸でした。
「学校中、狸で一杯よ?…何かイベントでもあるのかしら」
「いつの間に並べたのかな、あんなに沢山…」
3人で悩んでいると柔道部の朝練を終えたキース君とマツカ君がやって来ました。柔道部の練習場所やロッカー室にも狸が溢れていたようです。
「俺たちが登校した時には既に狸が置かれていたな。まだ校門は閉まっていたが」
「ええ、鍵がかかっていましたよね」
「じゃあ、ものすごく早い時間か、夜中に並べたってことになるのか。…誰が?」
う~ん、と私たちは首を捻りました。もしかして「そるじゃぁ・ぶるぅ」が悪戯したのかな?でも、それを尋ねようにも、会長さんの机がありません。今日はA組に来ないってことですよね。クラス中が狸の話で持ちきりの中、グレイブ先生が登場しました。
「諸君、おはよう。いよいよ明日から夏休みだ。お楽しみの宿題を沢山プレゼントするぞ。A組の宿題はこれと…」
先生が取り出したのは山のように積まれたプリントとドリル。げげっ、と皆がのけぞった所へ更に追い討ちをかけるように…。
「諸君の自主性を尊重しての自由研究。学校指定のレポート用紙で二十枚以上が条件だ。いいな?」
いいわけない!と叫びたくなるのをグッと堪えて私たちは先生を睨みました。
「なんだ、何か言いたそうだな?…そんな諸君の心を汲んで、教員一同からスペシャルでゴージャスな提案がある」
グレイブ先生はニヤリと笑って眼鏡を指先で押し上げました。
「学校中に溢れる信楽焼の狸を見たかね?…昨日、諸君が下校した後、教職員が総出で並べた狸たちだ。もちろん、ただの狸ではないぞ。…いや、大部分は普通の狸なのだが…」
クッ、と先生の喉の奥が鳴って。
「金なら1体、銀なら5体。…金色の狸を1個か、銀色の狸を5個探し出して提出した者は夏休みの宿題が免除になる。これから終業式が始まるわけだが、狸は式が終了してから探すように。そんなものは必要ない、と思う者は式が終わり次第、帰ってよし」
夏休みの宿題免除。金なら1体、銀なら5体。これを探さない人がいるんでしょうか?
「そうそう、狸で宿題免除は全学年が対象になる。そして数にも限りがある。金でも銀でも早い者勝ちだ。ただし昼休みの間は探すのは禁止。終了時間は午後3時。…貴重な狸を上級生や他の生徒に取られたくなければ頑張るように」
A組一同は固い決意で頷きました。絶対、狸ゲットです。

終業式の会場では学校中の生徒が狸の話題に夢中でした。例年、夏休みの宿題免除の特典は出ていたらしいのですが、抽選だったり早食い競争だったり、方法は実に色々で…狸は初の登場だそうです。校長先生の訓示の間もあっちでヒソヒソ、こっちでヒソヒソ。会場にも狸があるのですから、気にならないはずがありません。終業式が終わった途端、全校生徒が会場の狸めがけて殺到しました。
「…ダメだ、ここには置いてないらしい」
床板まで剥がしかねない勢いで家捜しした後、収穫の無かった私たちは会場の外へ。後はそれぞれ思った場所へ狸探しに出発です。私も頑張って探しました。あっちこっちで血眼になった生徒が探しまくっていますが、金の狸も銀の狸も発見されたという噂すら聞かない内に昼休みに…。
「誰も見つけていないんでしょうか?」
食堂で買ってきたサンドイッチを手にしたマツカ君が首を傾げました。今日は終業式だけだと思っていたので、皆、お弁当を持っていません。食堂は上級生に占拠されてしまい、1年生はパンかサンドイッチしか買えなかったんです。こんな時に会長さんがいれば「そるじゃぁ・ぶるぅ」特製お弁当を分けて貰えたのに。
「…呼んだかい?」
教室の扉が開いて、入ってきたのは会長さん。
「はい、お待ちかねのお弁当だよ。サムとシロエにも届けてきた」
大きな風呂敷包みが机に置かれ、中から豪華なお弁当が!私たちは大喜びで割箸を割り、早速ぱくつき始めたのですが…。あれ?会長さんは食べないのかな?
「ぼくはもう食べてきたんだよ。ゆっくり食べてくれればいいから」
そう言った会長さんは少し離れた所で菓子パンを食べているアルトちゃんとrちゃんの所へ歩いていきました。
「…お守り、使ってくれなかったね。残念だな」
アルトちゃんとrちゃんが真っ赤になり、「お守りって何?」とジョミー君。なんと説明したものか…とスウェナちゃんと私は顔を見合わせましたが、次の瞬間、そんな心配など見事に吹っ飛ぶ出来事が…。
「これ、君たちにプレゼント」
会長さんがポケットに手を入れ、アルトちゃんたちの机の上にコトン、と何かを置きました。コトン、コトン…コトン。ビー玉を2つ並べたくらいの、とても小さな…小さなもの。
「金なら1体、銀なら5体。はい、金が1個と銀が5個だよ」
「「「えぇぇっ!!?」」」
教室中が総立ちになり、私たちもアルトちゃんたちの方を眺めて愕然。そこには金と銀の小さな狸が6体、燦然と輝いていたのです。感激のあまり「ありがとうございます」と言ったきり後が続かないアルトちゃんとrちゃん。会長さんは二人にニッコリ微笑みかけて私たちの所に戻ってきました。
「た、た、た…狸!な、な、なんで…」
「落ち着け、ジョミー!…で、会長。あんたは何処からアレを?なんでアルトとrにプレゼントした?」
キース君の問いに会長さんは…。
「まりぃ先生がくれたんだ。先生それぞれに割り当て分があったらしいよ。で、ぼくのために取っておいてくれたんだけど、ぼくに夏休みの宿題は出ない。だから誰かにあげようと思って…。あの二人ならちょうど人数が合う。君たちは7人グループだから喧嘩になってしまいそうだし」
会長さんに夏休みの宿題が出ないとは知りませんでした。確かに全科目満点を取れちゃう人に宿題なんか、出すだけ無駄かもしれませんけど…。いいなぁ、アルトちゃんとrちゃん。私も狸、欲しかったなぁ…。
「あんなに小さいなんて思わなかったよ。よ~し、午後は徹底的に探すぞ!」
ジョミー君が叫び、昼休み終了の鐘が鳴ると同時に私たちは狸探しに飛び出して必死に頑張ったのですが。

「…ダメだぁ…。もうすぐ2時になっちゃうよ。あと1時間じゃ、とても無理だよ」
学校中を探しまくっても成果は上がらず、ジョミー君が呟きました。
「見つからないものは仕方ない。諦めて宿題に取り組むことだ」
「キースには簡単なことだろうけど!…あんな量の宿題、見るのも嫌だ…」
「じゃあ、ぼくの家の別荘で勉強会をやりますか?みんなで手分けすれば早いかも…」
マツカ君の提案に頷きかけた私たち。でも自由研究はどうしましょう?
「あーっ、それがあるんだよ!やっぱり狸を探すしかないや」
「だが、未だに見つからないんだぞ?…これ以上、いったい何処を探せと…」
キース君が言うとおり、狸探しは絶望的な状況でした。合流してきたサム君とシロエ君なんかは金の狸も銀の狸も一度も目にしていないのです。もうダメかも…と座り込みかけた時、会長さんがやって来ました。
「どうだい、狸は見つかったかい?…見つけたいなら手を貸すけど」
「「「お願いします!!!」」」
声を揃えた私たちの姿に会長さんは即座に頷き、先に立ってスタスタ歩き出します。辿り着いたのは教頭室。もしかして教頭先生の割り当て分の狸を取り上げるつもりでしょうか?いえ、手に入るなら何だって構わないんですけれど。
「君たちは外で待っていて」
会長さんが扉の向こうに消え、しばらく廊下で待っていると。
『来てくれ、すぐに!!!』
頭の中に会長さんの声が響いて、教頭室に飛び込んでいった私たちが見たものは…。
「「「………!!!!!」」」
ソファに座った会長さんの前で教頭先生がベルトを外し、社会の窓を全開にしてズボンを下ろそうとしていました。えっと、えっと…。縞々トランクスなんですねぇ、なんて暢気に言ってる場合じゃない~っ!!! 




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