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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

マザー、今度は救助班補佐になりました。私ごときがお役に立てる職場なのかが心配です。救助されてまだ日も浅い見習いなのに…。なんとかうまくやっていますが、救助班の仕事は多いのですね。

ゼル様が「そるじゃぁ・ぶるぅ」に新しいマイクを与えて以来、シャングリラにパワーアップした「かみお~ん♪」が響かない日はありませんでした。救助班が呼ばれて耳栓を配ったことも度々です。それなのに今日は奇妙に静か。
「静かだ…」
夕食も終わり、当直以外は自室に引き上げようかという頃、先輩がボソリと呟きました。
「歌いすぎて喉を痛めたという噂を聞いたが、静かすぎる。俺の経験からして、こんな日はろくなことがない」
「そうだな…。このまま無事に済むわけがない…」
先輩方は百物語でも始めそうな顔でテーブルを囲んで座っています。過去に何があったというのでしょうか?あのぅ、と質問しようとした時、ブリッジから緊急連絡が入りました。
「ヒルマン教授の実験農園で遭難事故発生。被害者1名、救助班、急げ!」

「うわぁ…。ビンゴ」
「よりにもよって農園かよ…」
露骨に嫌な顔をしつつも先輩方は機敏に準備を整え、飛び出します。置き去りにされないように必死で艦内を走り、実験農園へ駆けつけてみると…既に野次馬が一杯でした。私は実験農園に来たのは初めてですが。
「どけ、どけ!…これは見世物じゃないぞ!」
「そんなことを言われても…。なぁ?」
面白いじゃん、という思念が飛び交っています。そして、そこはかとなく漂う変な匂いは…?救助班補佐の立場も忘れて、私は思いきり背伸びしました。でも人の頭しか見えません。
「そうか、そうか…。そんなに救助したいか、新人?」
リーダー格の先輩に背中をバン、と叩かれました。
「では、英雄の地位を譲ろう。ほら、ロープだ。しっかり救助してやってくれ」
わっ、と笑いが巻き起こりました。状況が全く掴めないまま、私は前へ押し出され、野次馬たちが道を開け…。

ああ、マザー!…思い出したくもありません。いかに実験農園とはいえ、シャングリラに『肥溜め』があるとは知りませんでした。まして「そるじゃぁ・ぶるぅ」に「人を化かす」特技があったとは…。被害者さんの名誉のために名は伏せますが、肥溜めはとてもいい湯加減だったらしいです。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が早くカラオケに復帰できますように…。

 

 

 

 

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マザー、看護師最後の仕事はゼル様のお相手でした。怒りで血圧が上がってらっしゃったので「落ち着かせて差し上げるように」とのドクターの指示です。先輩と一緒に噛み傷の手当てもしましたが、頭を噛まれてしまわれたなんて、よほど怒らせたのでしょうか…「そるじゃぁ・ぶるぅ」を。

「あんたに言っても分からんじゃろうが、わしはちょっとよろけただけじゃぞ!」
「…ゼル様、お茶が入ってます」
「いらん!…確かに、よろけた拍子に『女神ちゃん』に軽くぶつかりはしたが、ほんのちょっとじゃ。『女神ちゃん』もニコニコしておったのに、ガブリとやられたんじゃぞ、後ろから!」
「…災難でしたね…」
「あやつ、なりきってしまっておるわ。なにが『キャロル~!!』じゃ。金髪というだけではないか!」
「あのぅ…『ナイルの姫』…ですか?」
「おお、分かるのか!ならば話は早いわい。…ハーレイめ、とんでもない本を与えおって!…当分、ごっこ遊びに振り回されるぞ。わしは噛まれた後、『おのれ、カプター大神官!』と言われたんじゃ!」
ぶっ。…『王家の紋章』を借りて読んだことを後悔しそうな瞬間でした。ゼル様がカプター大神官!ナイス・キャスティングです、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。…っていうか、ゼル様も読んでらしたのですね、『王家の紋章』。

「わしは…わし耐えられん。わしはカプター大神官なのに、ハーレイがイズミル王子と呼ばれたりしたら!!」
「は?!」
思いきり間抜けな声が出ました。いくらなんでもミスキャストでしょう…それは。
「いいや、十分あり得るぞ!…考えてみい、イズミル王子は…イズミル王子はメンフィスの天敵なんじゃぁああ!!」
…あ。ルックスばかり考えていて、肝心なことを忘れていました。『敵』というポジションならキャプテンがイズミル王子でもよさそうです。いえ、全然問題ありません。さすがゼル様…長老だけあって妙なところで冷静です。
「いやじゃ、わしは絶対にいやじゃ!…そうなる前に、ごっこ遊びを止めさせねば。…何か、何か妙案は…」
「…歌しかないんじゃないでしょうか」
あまり言いたくない考えでしたが、シャングリラ中が巻き込まれる前に「そるじゃぁ・ぶるぅ」を止めなければ。
「カラオケか!」
「はい。…もう、四六時中、歌わせておけば忘れるかと。うるさくても構わないのでしたら…」
「構わん!ハーレイがイズミル王子と呼ばれる前に、なんとしてでも止めてみせるわ!!」
ゼル様は凄い勢いで飛び出してゆかれました。シャングリラ中に「かみお~ん♪」が響き渡る日も近そうです。

マザー、懺悔します。実はわたくし、キャプテンがイズミル王子でも別に構わなかったのですが。ソルジャー・ブルー様に妙なポジションが振られたら困る、とただそれだけを考えてました。ネバメンとか、ネバメンとか、ネバメンとか…。




マザー、今日はキャプテンが胃薬が欲しいと言ってこられました。皆様のお部屋に『置き薬』を配るのも看護師の仕事で、キャプテンのお部屋の分は今朝、補充した筈ですが…。胃痛が酷くなられたのでしょうか?

「…ドクター、本当に困っているのだ。胃薬はどれも同じだと思ったのだが…」
「口に合わないということもあります。子供に多いケースです」
「なるほど、ならば納得がいく」
あらら?…キャプテン用ではないようです。
「アヒルから離れないので、下痢止めを飲ませようとしたら噛まれた」
「はぁ…これは痛そうですね」
ドクターがキャプテンの腕を診て、傷薬と包帯を持ってくるようおっしゃいました。手際よく手当てなさいます。
「で、下痢は止まっているのでしょうか?」
「そもそも下していなかったようだ。ひきこもりたい気分だったらしい。…それとも浪漫に浸っていたのか?」
「なるほど…。意外にデリケートですな」
「アヒルで読書中でもあった。デリケートならそんな所で本は読まない」

胃薬は「そるじゃぁ・ぶるぅ」用みたいです。今日も読書をしているんですか…。
「しかも私の本なのだ。気に入ったとは分かっていたが、2巻以降は複製が出来てから渡せばよかった。…アヒルから離れさせようとアイスで釣ったら、食べすぎたらしい。ムカムカすると訴えたので私の薬を飲ませたのだが…」
「吐き出してしまったんですね」
「ああ。…胃が痛むのか、本も読まずに丸まっている。子供用なら飲めるだろうか?」
「放っておいても治りそうですが、その前にキャプテンが胃薬のお世話になりそうですし…」
ドクターはサラサラと処方箋を書き、先輩の看護師に手渡しました。
「この薬をキャプテンに。…棒つきキャンデーも一緒に頼む。一番大きいソーダ味のだ」

マザー、看護チームに来ても「そるじゃぁ・ぶるぅ」から逃れられません。どうせなら「お体が丈夫でない」というソルジャー・ブルー様のために看護師の仕事をしたいのですが…。あ、『王家の紋章』は貸出し中になっていました。出版部が複製を作るためだそうです。さきほど聞いた話からして、キャプテンが「そるじゃぁ・ぶるぅ」用に発注されたのでしょう。ジャンルは少女マンガでした。内容とキャプテンの蔵書リストが気になります、マザー…。




マザー、看護師チームに転属しました。劇場支配人という肩書きはやはり「お飾り」だったようです。見習いが支配人だなんて変だと思ったのですが。医療の心得が無いので、この職場ではちょっと肩身が狭いです。サイオンで一通り習ったものの、実地が伴っていませんから。でも初仕事は容赦なく舞い込みました。

「ドクター、ちょいと手当てを頼むよ」
ブラウ様が左手にタオルを巻いて入ってらした時、先輩方は休憩中でドクターと私しかいませんでした。
「派手に噛まれちまってねえ…。唐辛子アイスは作ったけども、あたしが作ったってバレたんだろうか?」
「それは…ちょっとまずかったですね。あれで嗅覚はいいようですよ」
ドクターは手際よくブラウ様の袖をまくって傷の手当を始めました。
「あまり妙なアイスは作らない方がいいでしょう。変な菌は持っていないでしょうが、噛み傷は治りが遅いですし」
噛み傷に加えて手作りアイス。…またまた「そるじゃぁ・ぶるぅ」のようです。ブラウ様まで噛まれるなんて…。

「おや、今度は看護師やってるのかい。せっかくだから縫ってもらおうかねえ」
「えっ、私ですか?…そんなの無理です!」
いきなり話を振られた私は思わず叫んでしまいました。傷口の縫合なんて、まだできるわけありません。
「ぶきっちょでも全然かまやしないさ。…それに縫わないと困るじゃないか」
「で、でも…私、縫えません!配属になったばかりなんです。ドクター、無理だと言って下さい!」
「おやおや、ホントかわいい子だねえ。…これが縫うような傷に見えるかい?」
差し出された手には歯型がくっきりついていました。けれど裂けているようには見えません。
「あはは、縫ってほしいのは服の袖だよ。…こっちの方が重傷なんだ」
ブラウ様のお召し物の袖に大きな穴が開いていました。咥えたまま力任せに引っ張ったものと思われます。
「…ブラウ様、新人を苛めないで下さい。人手不足の昨今、一人でも定着して欲しいんです」
ドクターの溜息とブラウ様の笑い声に送られて、私は針箱を取りに行きました。

マザー、これが私の初仕事です。ちょっと「縫う」対象が違いましたが…。
「あ。唐辛子アイスじゃなくて、邪魔したのがいけなかったかねえ。熱心に本を見てたんだ」
「読書ですか?…それはまた…珍しいですな」
「だろ?あれは絶対ハーレイのだね」
お二人は「そるじゃぁ・ぶるぅ」が読んでいたらしい本を肴にとっても楽しそうでした。『王家の紋章』って、なんなのでしょう?タイトルからして歴史小説かミステリーだと思うのですが…。今度、図書館で調べてみます。『ガラスの仮面』を返しに行かねばなりませんから。とても読み応えのあるマンガでした、マザー。




マザー、恐れていた「キャプテンの貸切」が入りました。劇場ポスト最後の夜にまた入るなんてツイていません。ですが見習いの身でサボれませんし、覚悟を決めて支配人室で待っているとキャプテンがいらっしゃいました。
「先日は酷い目に遭ったそうだな。安心しろ、今夜は私も一緒だ」
えっ、キャプテンもご一緒ですか?とっても心強いです!
「その代わり、もっと華やかな服を。…花束を渡してもらいたいからな」
キャプテンが持ってらしたのは、見事なバラの花束でした。
「私では絵にならんのだ。それに贈り主は私ではない、ということになっている」
「はぁ…」
「いいから早く着替えなさい。衣装部屋に何かあるだろう。ベルばら風のドレスでもいいぞ?」
キャプテン、ベルばらをご存知ですか…。私は花束に負けないドレスに着替えてキャプテンと一緒に出かけました。

劇場に入るとやはりシールドが張られ、キャプテンと私はその中です。
「大丈夫だ、落ち着いて自分の周りにシールドを張れ。これで三半規管の乱れはかなり防げる」
「はい、キャプテン」
「1曲終わる度に拍手だ。全部終わったらアンコールするのを忘れるな」
「分かりました。…でも、どうして今夜はキャプテンもいらしたのですか?」
もしや私を助けに来て下さった?…だったらちょっと嬉しいかも。
「…今日は新曲発表会だ。ギャラリーがいないと不機嫌になる」
なんだ。…つまらない、という思念はきっと漏れていなかったと思います。
間もなく派手なカクテル光線が舞台に飛び交い、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が自信たっぷりに登場しました。
「♪ねぇ、答えはないお~ん!!!♪」

新曲もやっぱり「おーん」ですか…。歌は延々と続きましたが、乗り切れたのはシールドのおかげです。拍手も忘れませんでした。そしてアンコールで十八番の「かみおーん♪」が終わり、いよいよ花束贈呈です。
「メッセージカードはくっついてるな?…いいか、落ち着いて言うんだぞ」
「は、はい…。頑張ってきます」
私は花束を抱え、緊張して舞台に上りました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」に花束を渡し、笑ってしまいそうな棒読みで…
「紫のバラの人からです。伝言は…えっと…。いつもあなたを見守っています」。
大きな紫のバラの花束を抱え、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は満足そうに退場しました。

マザー、なんという奇妙な出来事でしょう。…キャプテンと一緒に『そるじゃぁ・ぶるぅ独演会』、花束のオマケつき。あの紫のバラの花束、50本はあったと思います。それに、それに…不可解な謎のメッセージ!
「キャプテン、『紫のバラの人』ってなんなのですか?」
支配人室まで送って下さったキャプテンに聞かずにはいられませんでした。
「ぶるぅを陰から見守る熱烈なファンだ。長老全員で演じる架空の人物。…詳しいことは図書館で分かる」
「図書館、ですか?」
「美内すずえ作、『ガラスの仮面』。20世紀後半から21世紀初頭に描かれた少女マンガの名作だ」
少女マンガ…。えっ、少女マンガ!!?…先刻の『ベルばら』発言といい、キャプテンは実は少女マンガがお好きなのでしょうか?マザー、シャングリラはますます奥が深いです…。




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