シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
仕事探し中・その1
マザー、「そるじゃあ・ぶるぅ」がカラオケの練習をしているのを目撃してしまいました。外にはグルメの他にも誘惑が沢山あるようです。苦労人のキャプテンも、この際、一緒にカラオケに出かけてはどうかと思うのですが…艦を留守には出来ませんか?ならばシャングリラには劇場がありますし、ちょこっと手を加えれば存分に歌いまくれるかと…。
「そるじゃあ・ぶるぅ」の方は、練習中の姿を見られて激怒したらしく、思い切り噛まれてしまいました。カラオケが上達したら「もっと…聴いてって」と言い出しそうな気がしますけど、いつか達人になるのでしょうか?今は「おーん」としか聞こえませんが…。
仕事探し中・その2
マザー、今日も「そるじゃあ・ぶるぅ」が餌を食べていないはずなのに「食べすぎてすまないと思っている」と青ざめた顔で言っています。こっそり食べてミシュラン作りだかアイス番付だか知りませんけど、消化器官が弱いのではなかったのですか?それともアヒル君と仲良くしてるのも「最後に餌を食べた日」の表示と同じで「建前」、俗に言う偽装工作で…私たちは騙されているのでしょうか。
実は消化器官は元気印なのに「胃腸が弱い者と女子供は丁重に扱えと教えられていないか」と裏でニンマリ笑いつつ、「食べすぎてすまないと…」と同情票を稼ぎ「もっと…して」もらおうと思っているとかありませんか、マザー…!
皿洗い
マザー、「そるじゃあ・ぶるぅ」には相変わらず振り回されっぱなしの身ですが、シャングリラで皿洗いをさせて貰えるようになりました。ありがたいことです。
で、早速お皿を洗っていたら、先輩から「特に気をつけて洗うように。洗剤はこれを」と特製らしき自然素材の洗剤と、見るからに上等そうな器を手渡されました。もしや、と器を裏返してみると「BLUE」の文字が…!
ミュウの長でらっしゃるソルジャー・ブルー様には一度もお目にかかったことがございませんが、麗しいお姿は存じていますし、思い浮かべただけで胸がドキドキです。ああ、ソルジャー・ブルー様のお皿をこの手で洗えるなんて…なんて幸せなことでしょうか…。
と、ウットリ夢見る乙女になっていたのですけども。
先輩に「手がお留守になっている」と注意された上、「それは「そるじゃあ・ぶるぅ」のお皿よ。我侭だからとても気を遣うの」って爆笑されてしまいました。
マザー、頑張っていればソルジャー・ブルーのお皿を洗える時が来るのでしょうか?シャングリラの厨房はまだまだ奥が深そうです…。
シャングリラ新参者・その1
マザー、丸まってうとうとしている「そるじゃあ・ぶるぅ」に餌をあげようとしたら「太らせて食うつもりか?」と言われてしまいました。そんなぁ…。あんなに可愛く丸まって寝てる生き物を煮たり焼いたりできるはずないのに、どうして分かってくれないのでしょう。
あ。「丸まってる可愛い生き物」と、「煮る」。
マザー、一度『ぶるぅ鍋』を試してみてもいいですか?
シャングリラ新参者・その2
マザー、「そるじゃあ・ぶるぅ」が今日は餌を食べてない筈なのに「食べ過ぎてすまないと思っている」と言っています。やはり「最後に餌を食べた日」は建前のデータで、本当はランチにティータイムと外食三昧なのではないでしょうか。…ひそかに「ぶるぅミシュラン」とか作って発行していませんか?でなきゃ「ラーメン番付」とか。
シャングリラ新参者・その3
マザー…楽しい夢を見ている「そるじゃあ・ぶるぅ」を撫でてやったら「もうちょっと右」だと言われました。寝言だったのでしょうか?…でも起きている時に撫でても「もうちょっと右」とそっぽを向いてましたし、「もうちょっと右」に何があるのか気になります。
撫でてほしい場所が「もうちょっと右」…。肩こりで湿布でも貼っているのか、実は痒いのだけど「かいてくれ」と素直に言えないのか?彼の生態は本当に謎が一杯です、マザー!
「職業は一通りやってみてはどうか」と仰せなのですね。やはり成人検査で脱落すると適性診断はして頂けない運命ですか…。厨房が人手不足なら厨房に所属できるかも?
もしもシャングリラに「土鍋」があったら早速借りて『ぶるぅ鍋』をやってみたいと思います。「そるじゃあ・ぶるぅ」が土鍋に入って丸まって眠ってくれたら、きっととっても可愛いでしょうね!
成人検査脱落
マザー、成人検査に脱落してしまって申し訳ありません。それもこれも「憧れのブルー様のお世話をしたい」一心で…、げふげふげふ。
えっ、ブルー様、と聞こえましたか?とんでもございません、マザー!私は「そるじゃあ・ぶるぅ」の世話に日夜心を砕いております。一方的に心を砕かれまくっている気がしますが、「そるじゃあ・ぶるぅ」が噛むのはストレス発散のためと諦めることにいたしました…。
逃亡中
マザー、「そるじゃあ・ぶるぅ」が寝酒をたしなんでいたので遊ぼうとしたら「一緒にいたずらしよう」と誘われてしまいました。酒乱の気があるのでしょうか?メタボの次は酒癖が心配です。
ところで、マザー…。私、どこまで逃げればいいのでしょう。っていうか、ちゃんと処分されずに逃げ切れますか?
無事保護
マザー、寝起きが悪いという「そるじゃあ・ぶるぅ」を撫でたらそっぽを向かれ、遊んでやろうとしてもそっぽを向かれてしまいました。寝起きが悪いのだから仕方ないとは思うのですが、横っ面を張り飛ばせないのが残念です。キャプテンならやってくれそうだ、と期待するのは「苦労性のキャプテン」には酷でしょうか?
そして、わたくし、無事に保護されたようですけども。この先にどんな運命が待ち受けているのか不安です。新入りは「午前3時起床で食事は薄い御粥と漬物、一日3回の座禅とシャングリラ中の廊下の拭き掃除が必須」だったらどうしましょう…。
※こちらはアルト様の『ハレブル無料配布本』に掲載された作品です。
アルト様のサイトに『情熱の果実』は現在、掲載されておりません。
ところが、このお話に想を得たシャングリラ学園番外編が1話、生まれてしまい…。
テキストで頂いた『情熱の果実』が見つかったため、掲載させて頂きました。
アルト様の御好意に感謝いたします!
「廃棄してもよろしいでしょうか?」
医療室に呼び出されたハーレイは目の前に置かれた物をじっと見る。
「石と土に見えるが?」
「はい。他に葉や種子もあります」
見れば確かに土の塊ではなくて丸まった葉の塊で、小石ではなくて種子だ。
「廃棄するのは構わないが、何故私の許可が必要なのか分からない」
ハーレイの言葉にノルディは伝言を聞いていないのだろうか? と思ったが、それは口にせず、
「失礼致しました。こちらはソルジャーがお持ち帰りになったものです」
「ソルジャーが?」
「はい。正式には救出に外に出向いた際、ソルジャーの衣服、頭髪に付着していたものです」
「そうか。ではこれは検査済みなのだな」
「はい。危険な菌が検出されませんでしたので、このまま廃棄して問題ないと思われます」
そういう報告だということは、ノルディから伝言だと言ってきたブラウからは聞いていなかった。
二人の内どちらが省略したのかと考えればブラウである可能性の方が高い。
ハーレイは後で確認しなくてはと思いながら、
「ではそのように」
告げてブリッジに戻ろうとした。
「いや、ノルディ」
「はい」
「それは何の種子だろうか?」
種子が付着するような場所に行った話はブルーから聞いていない。と言う事はブルーはそれを秘密にしていたのだ。
場所に意味があるのか、植物に意味があるのか、ハーレイは気になった。
「さあ。そこまでの検査はしておりませんでした。調べてみましょうか?」
「育てても問題ないだろうか?」
「はい。ではヒルマン教授に……」
「私が」
「はい?」
「私が育ててみようと思う」
「――そうですか。では」
反対されるかと思えばあっさり容器に入れて種子を渡す。
それはハーレイの指先よりもとても小さいものだった。
「芽が出るだろうか?」
「どうでしょうか。しかし廃棄するものですから芽が出なくてもお困りになる必要はないかと思います」
「……そうだな」
容器の中の一粒の種子を見てハーレイは自分を納得させるように小さく頷いた。
「では」
ハーレイが退出したのを見届けると、ノルディがため息を吐き出した。
「お前が気に病む必要はない」
奥の部屋から出てきたのはブルーだった。
「……しかし」
「仕向けたのは僕だ」
「育てるのでしたらそれこそヒルマン教授にお願いする方が確実かと思いますが」
「うん。でもねハーレイが育てる事に意味があるんだ」
ブルーはクスリと笑う。
「あれが何の実なのか、ソルジャーはご存知なのですね」
「知ってる。でもノルディ、君の為を思って言っておく。あの実が何なのか調べてはいけないよ」
ブルーの微笑に背筋が冷たくなったような気がした。
「はい」
「協力ありがとう」
ノルディの返事を待たず、ブルーは瞬きする間にその場からかき消えてしまった。
種子を鉢に植えて数日で元気な芽が出た。
双葉が出て本葉が出て、世話をするハーレイはその成長を楽しみにしていた。
ブルーの秘密を育てている気持ちにすらなっていた。
花は艶やかに、秘密の香りがするのではないかと思う。
何色だろうか?
ブルーが気に入った花だろうか? そんなことを考えながら世話するのが楽しかった。
植物も愛情を込めれば美しい花が咲くとどこかの資料で見た気がする。美しい音楽も有用と知ってからは音楽を流すようにもしていた。
時折ブルーがハーレイの部屋を尋ねてくるが、ブルーは鉢に気づきもしない。
尋ねられてもなんだか返答に困ると思っていたハーレイには好都合だった。
そして一ヶ月。
部屋の奥に置かれた鉢。
それは今やハーレイが持ち上げるのも一苦労というほどの大きさになっていた。
よく見れば小さな蕾がいくつか付いている。
もし花が咲くようならば、その時ブルーに見せようと思っていたハーレイはひっそりと笑みを浮かべた。
毎日元気に育てよと声をかけてきた。
綺麗な花を咲かせるか?
それとも美味しい実をつけるか?
そんな事も語りかけてていた。
小さいながらも青々とした葉をつけた樹は訪れたブルーの目を引き、
「それは?」
問いかけにハーレイは経緯を話した。
と、ブルーは、
「これが実をつけたら僕のものだね」
「は?」
「僕が持って帰ってきた種だろう?」
「……いや」
「違うっていうのか?」
「いや待て」
ハーレイは気がついた。
ブルーは草花を育てることにあまり興味がない自分が育てていることに驚いていない。
驚いていない。
からかいもしない。
(……ということは)
「これはもしかして計略か?」
「人聞きの悪い……」
「計画的だな?」
「僕が育ててと言ってもお前は育てないだろう?」
「それは……」
植物を育てるということに興味があまりないハーレイは、ブルーが育ててくれと言えば枯らさないことを優先させ、種をそのままヒルマンに渡していたろう。
多忙や難しいということを理由にして。
「……しかし何の為に」
「僕が持ち帰った種子で、何か分からないという事をエサにしたんだ。お前は食いついた」
「…………」
「そしてお前が育てた」
「それにどんな意味が?」
「実がなれば分かる」
「しかし……部屋で育てるにはそろそろ限界が……」
「大丈夫。これ以上大きくならない」
「何の実か、分かっているのだな」
「もちろん」
ブルーは静かに笑みを浮かべ、
「お前に育てて欲しかったんだ」
「…………」
意味が分からないと言った風にハーレイは頭を振り、大きな大きなため息を吐き出す。
「知らずにお前が育てることに意味があったんだ」
「だがもう知ってしまった。終わりだろう?」
「うん。でももう大丈夫。そろそろ知りたいだろうしね」
ブルーはハーレイの心臓が壊れそうなほどの艶やかな笑みを見せ、
「実をならせて。僕のために」
ここまで育ててきたのだ、そんなことを言われなくても世話をする。
だがこの種子の一体何が特別なのかと思わざるを得なかった。
「検索しても出てこないよ」
「…………」
「特別だからね」
「どう特別なんだ?」
「知りたい?」
「当然だろう?」
「研究所が作り出した新種」
「研究所?」
「サイオン研究所。この植物はサイオンを吸収する」
「――――?」
「育てる者のサイオンを吸収するんだ」
「ブルー!」
怒声に近いかと思えば、ハーレイの表情は羞恥に赤く染まっていた。
「僕を思って育ててくれた植物がどんな実になるか、とても楽しみなんだよ、ハーレイ」
しばらくして、恋人たちの間で「情熱の果実の樹」として密かなブームになったことは言うまでもない。
情熱の果実・了
※このお話から生まれたシャングリラ学園番外編は、こちら→『情熱の木の実』
それはハーレイが休憩時間に公園を散歩している時のことだった。
遊んでいた子供たちが一斉に駆けてきたのだ。
その勢いに傍らにいたブラウが「何事だろうね」とつぶやく。
「お前が目当てではないか? ブラウ」
「あたしかい?」
言われてみればハーレイは船長然としていて、子供たちが全力で駆け寄ってくるということは考えにくい。
故にハーレイのその指摘は正しかった。
しかし今回は例外だったらしい。
「キャプテン!」
「キャプテン!!」
子供たちが口々に叫ぶ。
「残念だねぇ。あたしじゃないみたいだよ」
肩をすくめて楽しげにハーレイに告げる。
「何だ?」
尋ねると子供たちは口を閉じた。
ハーレイの低くよく通る声に子供たちは威圧を感じ緊張してしまったからだ。
「キャプテン」
その様子を見てブラウが肘でこづく。
だがハーレイはにこやかに尋ね直したりはしなかった。
「――あのっ!」
集まった子供たちの中で最年長の男の子が意を決して声を出す。
こちらも両隣の女の子にこづかれてのことのようだ。
「何だ?」
「キャプテンとソルジャーのどちらがぶるぅを産んだんですか?」
その問いをハーレイは全く理解出来なかった。
いや理解は出来た。
だがどこをどうしたらそんな疑問が出てくるのか、そしてどうしてどちらかが産むことになるのか、全く全然これっぽっちも分からなかった。
「子供たちの疑問にきちんと答えるのが大人の義務だよ」
ブラウは思い切り楽しそうに子供たちの肩を持って言い添えた。
たっぷり時間をかけて考えたハーレイが「それは誰から聞いた?」と尋ねると、子供たちは「ぶるぅだよ」と元気よく答えた。
その時ぶるぅは「僕のママはどっちだと思う?」と尋ねてきて、誰も答えられなかったのだとも。
「そうだろうな」
と、ハーレイは呟く。
「キャプテンは絶対答えられる?」
確かめるように問いかけてきた子供の頭をハーレイは撫で、
「それは明日ぶるぅに聞いてみるといい」
「明日?」
「そうだ。明日だ」
「はいっ」
期待に満ちた笑顔で子供たちは礼をして走って行く。
どっちかなぁ? という言葉をそこに置いて。
「ハーレイ」
「……なんだ?」
「明日なんて期限を切って大丈夫だったのかい?」
「責任はとってもらう」
「ぶるぅにかい? それは無理だろう。あいつの頭の中は食べ物の事と悪戯の事しかないからね」
「この船にはもう一人ブルーがいる」
言い残してハーレイは足早に公園を出て行った。
「責任をとってもらう……ねぇ……。悪あがきじゃないかって思うけどね」
消えた後ろ姿を思い浮かべながら言うブラウの表情は、悪戯を思いついたぶるぅのように楽しげだった。
「ぶるぅにどう説明したのか、教えて欲しいのだが」
ブルーを前にするなりハーレイはいきなりそう口にした。
「どうって?」
「出生のことだ」
「ああ、卵から生まれたと言った」
「他には?」
「別に」
「そんなことはあるまい。きちんと説明していればあんな質問が出るはずもない」
「どんな質問だ?」
「どちらが卵を産んだのか、ということだ」
「どちらって?」
「お前か、私か」
ほんの少し怒気を含んだ真面目な表情で言い放つハーレイを見やり、ブルーは小さく吹き出して笑ってしまった。
「ブルー!」
「可愛い誤解じゃないか」
「見過ごして良いものとそうでないものがある」
「お前はこれがそうでないものだと言うのか?」
「そうだろう。我々は産む事は出来ない。そもそも人間は卵から孵化しない」
「じゃあぶるぅは人間じゃないんだ?」
「……………」
「ある日アレはここにあった。丁度クリスマスだった。誰かが僕にプレゼントしてくれた綺麗な石だと思った。正直、お前だと思ったんだけどね、ハーレイ」
「私ではない」
「それが石ではなく卵だと分かり二人で温めた。アレは少しずつ大きくなり一年後、割れてぶるぅが出てきた」
「そうだ。だが……」
「僕にもお前にも真実は分からない。だがぶるぅは信じている。僕かお前が卵を産んだのだと」
「有り得ん!」
ハーレイが言い放った時、青の間のベッドの向こうから泣き声が聞こえてきた。
それも聴覚を補う補聴器が悲鳴をあげるほどの大きさで。
「ぶ……ぶるぅ!」
補聴器を取り、耳を覆ってハーレイがベッドに駆け寄る。
「うわぁぁぁぁぁん」
「ぶるぅ」
「僕にはパパもママもいないんだ~~~っ」
「いいか、ぶるぅ……」
「わぁぁぁぁん」
泣き声が青の間中に響き、ハーレイの身体を揺さぶるほどだ。
「ぶるぅ、落ち着きなさい」
「うわぁぁぁぁん。ぼく……ぼく……ママに抱っこしてもらいたかったんだもん。ぎゅってしてもらいたかったんだもん」
泣きながらも懐から取り出したのは一冊の本だった。
データベースの中にあった古い古い子供向けの話を絵本にしたもので、内容はハーレイもよく知っている。
母親を捜して旅に出て、最後に出会うというものだった。
わんわんと泣き続けるぶるぅをハーレイは見つめ、そしてそっと抱き締めた。
と、ピタリと泣きやみ、
「ぎゅってして~、ハーレイ、ぎゅってして~」
言われるままに抱き締めるとぶるぅは涙の残る顔で嬉しそうに笑った。
翌日から『ぶるぅのママはハーレイである』という否定出来ない噂が流れ出したのは言うまでもない。
■作者メッセージ
と言うわけで、ぶるぅのパパママ戦争に決着がつきました。
…ハーレイの意志とは関係なく(笑)
さて、黒幕は誰でしょう?
という問いは必要ないと思いますv