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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

※2009年クリスマスの「ぶるぅお誕生日企画」の作品です。




《ブルー……まだか?》
《もう少しだ。頑張ってくれたまえ。君はぶるぅの父親だろう?》
 青の間に生息する座敷童的存在――と表現するとぶるぅ本人が怒って噛み付いてくるのだが、実際そんな存在だ。

 いつの間にか青の間にあった石。いつの間にか大きくなり、それが卵で暖める必要があると悟ったブルーはベッドに持ち込んだ。
 だが一人で暖め続けられるはずもない。
 指名されたのは当然ハーレイだった。
 ベッドの中央で、時々は端っこで暖め、ついに孵化して出て来たのはちっちゃいブルーだった。だから「ぶるぅ」と名付けられた。
 そしてぶるぅは最初に見たハーレイをパパと呼んだ。
 それは理解出来る。
 だが次に目にしたブルーを見て口を閉ざす。
 生まれた瞬間、たくさんの情報がぶるぅの中で目覚めた。卵を暖めるのはパパとママの役目だと知っていたが、目の前にいるのはどう見てもパパとパパだったのだ。
 そんな混乱をブルーは楽しんだ。
 そしてパパとパパでもいいじゃないか、と提案した。
 卵を暖めたのは確かにブルーとハーレイなのだから。
 ママがいないことは残念だが、パパが二人なんてないことで、自分は特別なんだ!と思うぶるぅはウキウキとした。
 だがブルーとハーレイはどちらが真に父親かという論争を今でもたまにしているのだ。
 もちろん娯楽の一つとして。

 父親の座を譲らないハーレイは今、ブリッジで苦悶の表情を浮かべている。
 原因はハーレイを見ればすぐに分かる。
 ハーレイの膝丈くらいの身長であるぶるぅが、ガブリとハーレイの腕に噛み付いてそのままブラブラと宙に揺れているからだ。
 とにかくとんでもなく痛くて、いつもならば怒声を浴びせているところだが今日はそうはいかない。
 理由を知っているブリッジクルーも何も言わず、ぶるぅを引きはがそうともしない。

 ――なんかへんだぞ?

 そう思うが噛み付いたまま目をキョロキョロさせてぶるぅは様子を伺う。
《ハぁレイ》
 思い切ってぶるぅは思念で尋ねてみる。
 ちっさいブルーであるせいか、サイオンタイプもブルーなのだ。しかし出力全開は三分間というリミッター付なのだ。
 全開でなければ思念波も普通に操ることが出来る。
《なんだ?》
《なんかヘンだよ?》
《そうか?》
《だって、ハぁレイ、離せって怒らないもん》
《そういえばそうだな》
《言う? 離せって言う?》
《言う。もう少ししたらな》
《どうして今じゃないの?》
《どうしてだろうか》
《ハぁレイにも分からないの?》
《ああ》
《じゃあブルーに聞いてみる?》
 そうだな、とハーレイが答えようとした瞬間、まだ駄目、とブルーから思念が届いた。
《ぶるぅ。ブルーは今忙しいようだ》
《先に聞いてくれたの?》
《あ……ああ》
《さすが僕のパパ!》
 そんなことで喜ぶぶるぅは可愛い。
 可愛いと思うが歯は鋭すぎる。
 腕の先でプラプラと揺れているぶるぅは嬉しそうにしている。
《あ……あ……ぶるぅ、うれしいのは分かるがそれ以上揺れるな。……痛い》
《ごめんなさい》
 それきりしばらく話しかけてこなくなった。
 できればこのまま時間をやりすごしたいと思ったがそ上手くはいかないように出来ているようだ。
《……ハぁレイ》
《なんだ?》
《腕、痛い?》
《痛いな》
《じゃあ何があるのか教えて》
《それは出来ん》
《出来ないってことは、何かはあるってことだよね?》
 パタ、と床に落ちる音がする。
「ま……待て、ぶるぅ!」
 まだブルーはOKしていない!
 が、目の前でぶるぅの姿は消えた。
《すまん、ブルー》
《準備完了、危機一髪。それより早く》
 ブルーの言葉にホッとしつつブリッジの出入り口から出ようとした瞬間、ハーレイは青の間にいた。
《……ブルー》
「ブリッジからここに来るのを待つ時間はないからね」
「そうだが……」
「ねえ、何? どうしたの?」
 ブルーとハーレイの間でぶるぅが目をまんまるにして尋ねる。
「ハーレイにね、お願いしていたんだ。ぶるぅが青の間に来ないようにしてくれって」
「ああ! それで噛み付いても怒らなかったんだね? でも言ってくれればよかったのに」
「言ったら好奇心旺盛すぎるぶるぅは絶対に来るだろう?」
「もっちろん♪」
 その場でくるりと一回転してぶるぅは答える。
「だからだよ」
「……どうして僕、来ちゃだめだったの?」
「それはね」
 そう言いながらブルーはベッドの隣に置かれた大きな包みを指し示した。
「今日、あげたかったんだ」
「今日?」
「開けてみてごらん」
 ブルーに促されて自分の身体よりちょっと大きい箱にかかった虹色のリボンを解き、箱を明けると……、
「かみお~ん♪」
 喜びの雄叫びが青の間に響く。
「すごいやこれ。新しい土鍋だね!」
「そう。この土鍋で今夜、サンタクロースを待つといい」
「うん! 楽しみだなぁ」
 言いながらぶるぅは土鍋の中に入る――と、しばらくして寝息が聞こえてきた。
「……土鍋の威力はすさまじい」
「ぶるぅが一番安心出来る場所だからね」
「ところでブルー。土鍋の用意にお昼までかかえるというのはどういうことだ?」
 そのせいで噛まれていた左手は痛くて痛くてズキズキしているのだ。
「良く見てくれたまえ」
 ブルーは土鍋を指さす。
「あ……ああ!」
 用意すると言っていたのはアヒルの絵柄も土鍋だったが、今あるのはアヒル以外の絵も描かれている。
「せっかくだから描いたんだよ、お風呂隊を」
「ブルーが?」
「うん。僕が」
 可愛いだろう?というブルーの問いを肯定しつつ、負けた気分になった。


 これがきっかけでハーレイが木彫りを始めたということは、本人以外誰も知らない……はずだ。たぶん。





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ノルディ×ブルー

 
 どこからともなく囁かれるようになった言葉「エロドクター」
 言わずと知れたみゆ様作のシャングリラ学園のドクターへの賛辞の言葉!?です。
 いつの日かブルー(シャン学生徒会長)と甘い夜を…と思っているようですが……。

 
 このお話は、拙作の「絶賛修行中」の中で教頭先生がうちのブルーとの素敵な経験の記憶を見てしまったことに端を発し、好奇心を抑えきれず『シャングリラ学園 → うちのブルーの元へ』という前提です。

 さてエロドクター。うちのブルーを射止めることが出来るのか否か!


+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

「あ、ノルディ先生、いらっしゃい。健康診断の予定はないよね? あ、も…もしかして僕? 僕は元気一杯。全然元気。すっごく元気」
 生徒会長であるブルーの側にいつもいる元気で小さな「そるじゃぁ・ぶるぅ」が答える。
 病気、医者が嫌いなせいか、元気っぷりを強調するようぶるぅはにニコニコ笑いながら飛び跳ねる。
「いやいや、そういう用事ではないんだ。向こうのぶるぅと連絡取れるかな?」
「うん。いつでも大丈夫。僕たち仲良しだから♪」
「あちらの世界を是非とも見学したいのだが、どうだろう?」
「ん~。……あのね、ぶるぅがね、ブルーに聞いたらいいって。今行く?」
「今? 心の準備が…。いや、この誘惑に勝てようか。行く。連れて行ってくれ」
「いいけど、僕は行かないよ。パイ生地を作ってる最中だからね。ぶるぅに頼んでおくよ。ノルディ先生をよろしくねって」
「頼むよ」
「は~い♪ じゃ、行ってらっしゃい」

 そしてノルディは旅立った。

 

 

 


「ではドクター、処置を」
 声のした方を向けば至近距離に紅の瞳があった。
 だが見慣れた色合いではなく、緊張を含んだものだ。
「ドクター?」
 ハッとして周囲を見回した。
 ここは格納庫。
 煙が立ちこめ、焼けた臭いが鼻をつく。
 目の前に横たわる青年はひどい火傷を負っており、それで一気に意識がはっきりした。
「大丈夫です。手当をします」
「頼む」
 厳しい表情のブルーは駆け込んできたゼルと話をしている。
 その横顔は今まで見たことがないほど鋭く冷たく美しい。
 ソルジャー服を纏った姿は何度も見ているが、職務を忘れるほど見入ってしまったのは初めてだった。
 思わず見とれた自分を心の内で叱責して、ノルディは負傷者の手当に没頭した。



「お疲れ様」
 気がついた時、ノルディは青の間にいた。
 いつの間に移動したのかと問おうとしたが、緩やかにマントを翻して歩み寄って来たブルーに見据えられて口が動かなくなってしまった。
「さすが手際が良い」
「……ブルー…」
「疲れたか? 少し休むといい」
 そう言って示されたのはベッド。
 青の間のブルーのベッドだった。
 自分が住む世界の生徒会長であるブルーの方から誘ってきたことは一度もない。
 それどころか逃げ回り、予防線を張りまくっているのだ。
 教頭であるハーレイにならば数限りなく仕掛けているが、危険視されているノルディに生徒会長の方のブルーは誘いをかけたことはないのだ。
 喉が鳴る。
 期待に鼓動が早くなる。
「……いや、あり得ない。ブルーが私を誘うなど」
 ノルディの呟きを拾ったブルーは、不審の表情を一瞬見せ、その後、喉の奥で笑い出した。
「記憶が飛んだか?」
 ブルーの問いにノルディはようやく自分が別の世界にやってきたことを思い出した。
 そう、ハーレイの記憶の中の別世界のブルーなら誘惑することもあるだろう。
 しかし別人とは言い難い。
 ソルジャー服を着たブルーと、全く変わりがないのだ。
 先程の緊張した表情も見たことがある。
 そして今、楽しげに笑う姿も見たことがある。
「違いを探してみるか? 君はドクターだから診察するといい」
 言うとブルーは手袋を取り、マントを脱ぎ捨てる。
 ブーツを脱ぎ、上着を床に落とし、アンダーのファスナーに手をかけたところで熱っぽい瞳のノルディを見つけた。
「診察の時は本人が脱ぐか、看護師が脱がせるかだけど、ドクターが脱がせてみる?」
 負傷者を前にしていた時と正反対の笑みが浮かんでいる。
 更に歩み寄ってノルディの手を取り、ファスナーに触れさせるが、動かない。
「視姦が好み?」
 赤い舌を見せて尋ねると、ノルディの身体の芯がぞわぞわと泡立った。
 快感の嵐の卵、竜巻の源。激しいものを予感させるに十分な感覚だった。
 躊躇わずファスナーが下ろされる。
 腕を抜き、肩を落としあっという間に全て脱ぎ去ってしまった。
「お前の欲しい人と同じか?」
 裸体を惜しげもなく晒すブルーから視線を逸らせず、ノルディは考えるより先に行動に出た。
 歩み寄り、ブルーをベッドに押し倒す。
 戸惑いの色はなく、組み敷かれた下で微笑を浮かべていた。
 両手をシーツに押しつけ、ノルディは首筋に舌を這わせる。
 目眩がするほど甘い。
 耳朶を舌先で舐めれば、腰が浮くほど反応し、しゃぶっては甘く噛んだ。
 押さえつけたブルーの両手が震えている。
 ああ、ここが弱いのか、と征服者の笑みを浮かべながら、ノルディは更にそこを嬲った。
 微かに声が漏れ聞こえる。
 自分の世界のブルーではあり得ないことだ。
 嵐が吹き荒れ始めた感覚に、ノルディ理性が翻弄されてゆく。
 執拗に耳朶を嬲りながら、指は胸を這い回り、ブルーの身体は本能的に逃れようとしていた。
「ああ、ブルー」
 思わず零れた言葉に反応したのはブルーだった。
「……ノルディ」
 愛撫することに没頭しているノルディは、視線だけをブルーに向けた。
「ねえ、ノルディ。僕はお前の覚悟が知りたい」
「覚悟……ですか?」
「ソルジャーである僕を抱く覚悟」
 言いながらブルーはノルディの前に小瓶を差し出した。
「これは……」
「僕が君の世界のブルーに渡したお土産。これの正体が君には分かっているだろう? ノルディ」
「……媚薬…ですね。これを…どうしろ…と?」
「飲んで」
 ブルーの瞳と同じ紅。それも透き通っている液体だ。
「苦くないと思う。僕は必要ないから飲んだことないんだ」
 はい、と言って手渡す。
「私も……飲む必要はないと思いますが」
「淫乱ドクターなんだ。診察は拷問? それとも至福の時?」
「その時々でしょうか。ブルーの診察の時は拷問ですが」
「そうだろうね」
 クスリ、とブルーが微笑した。
「飲まないんだね。じゃあ、頑張って」
 いつの間にかノルディとブルーの位置が入れ替わっていたことにノルディは気付かなかった。
「――頑張る…とは?」
「すぐに分かる」
 起き上がろうとしても身体が鉛のように重いことに気付いた。
 ブルーは苦もなく身体の位置を反転させると、まだ堅さが十分でないノルディの昂ぶりを舌先で悪戯しはじめる。
「ソ……ソル…」
 舐め始めるとブルーの身体が揺れ、目の前のブルー自身は半テンポ遅れて揺れる。
 緩く握り込まれ、含まれ、熱に包まれるとノルディの感覚は一瞬にして一か所に集中した。
 自分でも聞いたことのない自分の喘ぎが耳に届き、全身が熱くなる。
 そして羞恥を初めて感じた自分に、更に快感が高まっていった。
 身体は動かないが何とか舌は動くと分かると、ノルディは舌を伸ばして目の前のブルー自身に触れようとする。
 揺れて一瞬触れては遠のき、焦燥すら感じながらそれに集中する。
 ノルディの行動を見ていたかのようにブルーの腰が少し落ちると、先端だけを舐めることができた。
 ビクとブルーが反応するとノルディの唇の端が持ち上がる。
 ブルーもまた、ノルディを焦らしながらも欲しいのだと知ったからだった。
 この手を差し伸ばして、腰を抱いて、引き寄せて……思うが身体はベッドに縛り付けられたように動かない。
 ソルジャー、どうか、と言おうとした時、
「上から飲まないなら、下からだね」
 ブルーの声が届き、ちゃぷん、と水音が響いた。

 

 気がついた時、ノルディは見慣れたベッドの上にいた。
 自宅のベッドだった。
 起き上がって自分の身体を見れば、いくつか残る赤い痕。そして下肢部の痛み、怠さ。
 記憶を辿って冷静に判断したノルディは驚きに息が止まった。
 ソルジャーに組み敷かれる自分。
 喘いで泣き、許しを乞う。
 快感に翻弄され、最後は……。
 医者として、自分の身体を観察した。
 情事の痕がある。
 認めたくないが痛みもあった。
 そして解放された後の感覚も。
 だが記憶がない。
 達した時の記憶が全くない。ここに戻ってきた記憶も。
(どういう事だ?)
 改めて記憶を探る。
 と、そこに作為的なものを感じた。
(作られ、埋め込まれた記憶か? いや、途中までは真実のはず。一体どこまで…?)
 何度も記憶を再生するが、真実と偽りの境は分からなかった。

 


 

■作者メッセージ
 一体何が起こったのか!
 とりあえずナイショらしいです(笑)
 「僕はやってないから」とうちの長、笑いながら言っております。
 ……アヤシイ





ハーレイ+ハーレイ×ブルー

 お一人目のハーレイは、クリスマス企画の掲示板で現在生徒会長のブルーに片想い中のハーレイ教頭先生。
 彼はうちのハーレイが驚くほどの超強力ヘタレですv それがまたいじらしくて素敵なんです。(みゆ様作です)
 そのみゆ様から『女性向とか18禁とか知っている、おませなアルトさんぶるぅのお話をお願いします』というキリリクが♪
 みゆ様のぶるぅは家事カンペキで悪戯しない良い子ぶるぅなのですが、うちのは……(笑)
 どうせならヘタレ教頭先生を拉致っちゃおうかな~?なんて思って書きました。
 「ブルーを壊さないでね」と「昨夜はお疲れ気味だったの?」という過去に私が書いたぶるぅ台詞を入れることも忘れずに。
 …が、ちょっと変則な台詞挿入になってしまいました。ごめんなさい。
 悪のり大好き~なので遊んでみましたv
 ヘタレ教頭先生、ごめんなさい。でもたぶん懲りないです(笑)
 教頭先生の超強力ヘタレっぷりが楽しいので♪


+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

「この前は隠れてなかったから怒られちゃったんだ」
「……は…はぁ」
「だからね、これ以上頭をあげちゃ駄目なんだよ。分かった? キャプテン」
 ベッドの端から目から上だけ出して、ぶるぅはチラリと隣で同じようにしているハーレイ教頭を見る。
「は…はい」
「その返事の仕方、僕、ちょっと心配」
「頭は上げませんが……、このままここにいてもよろしいのでしょうか?」
「大丈夫だよ。僕、ちゃんと調べたから」
「調べた?」
 ハーレイ教頭は視線をぶるぅに移して尋ねたが、ぶるぅが変な顔をして見返していることに気付き「どうかしましたか?」と重ねて尋ねた。
「……キャプテンのスーツ姿って見慣れないから変」
「私は最近はこの服装の方が多いですから」
「そうなんだ。じゃあキャプテンって呼ぶよりハーレイの方がいいんだね。それとも教頭先生の方がいい?」
「あ……いや…どちらでも」
 答えるハーレイの視線は今はもう隣のぶるぅにしっかり向けられていて微動だにしない。
 聞こえてきた声に視線が動かせなくなってしまったのだ。
 甘い声と誘う言葉。
 衣擦れの音と肌を這う静かな水音。
 ベッドの上の二人が気になって気になって、だが見てはいけないという気持ちも働き、結果ぶるぅだけを見るという結論に至ったのだ。
「どっちにしようかな~?」
 ぶるぅが真剣な声でそう言った瞬間、ベッドの上のハーレイが動きを止めた。
「……ぶるぅ」
「なぁに?」
「お前もミュウだったと思ったが」
「そうだよ」
「それもタイプブルーだ。3分というリミッター付だが」
「そうなんだよね。全開だと3分しか力が使えないって、僕がまだ子供だからかなぁ?」
「その件はおいておいてだ。思念波で会話すること、シールドで姿を隠すことにリミットはないはずだ」
「うん。それはほとんど力を使わないからね」
「何故それを今使わない?」
「何でって、その方がいいかなと思って」
「理由を聞いている」
「この前ライブラリで調べてたら見つけたんだ。見られてると燃えるんだって」
 うっと呻いたのはぶるぅの隣のハーレイ教頭だった。
「教頭先生?」
 鼻を押さえたハーレイ教頭は、その奥がカッと熱くなるのを自覚した。
 くすくすくすと笑い声が室内に響く。
 成り行きを見守っていたブルーだったが、堪えきれなくなったのだ。
「お前の好奇心はどこまで行ってしまうんだろうね? ぶるぅ」
「好奇心じゃなくて探求心!」
「ああごめん。でも、見られて燃える人もいるけれど、僕たちは違うんだよ」
「みんな同じじゃないの?」
「僕は見られても平気。ハーレイは見られると意気消沈」
「縮んじゃうの?」
 これは二人のハーレイが咳き込んでしまった。
「そう。気持ちが縮んじゃうんだよ」
「なんだぁ。じゃあ姿が見えちゃうと駄目なんだね」
「そうだよ」
「教頭先生が修行に行くからよろしくねってシャン学のぶるぅに言われたから色々調べたのに失敗だったのか。残念」
「修行……ですか?」
 加えて一体どんな修行なのかと問いたいような問いたくないような声音でハーレイが尋ねれば、
「はひ」
 鼻を押さえたままハーレイ教頭が答えた。
 ハーレイのその思いを感じとったのか、それとも興味からか、ブルーが身を乗り出し、
「念のために聞くけど、どんな修行?」
「ヘタレ直し!」
 すくっと立ち上がったぶるぅが声高らかに答えた。
 げふ、と再びハーレイが咳込み、ハーレイ教頭は身体全体を縮ませた。
「あ、教頭先生が縮んだ……」
 ぶるぅの指摘にブルーがまた笑う。
 自分そっくりの……と言うより自分の分身が二人に遊ばれているようで少々不快になったが、それを指摘して反省するような二人ではない。
 諦めろと自分に言い聞かせ、ベッドサイドからティッシュボックスを取り教頭に渡す。
「ず…ずびばせん」
 受け取ると何枚か取り出し鼻を押さえた。
《そういえばお前は鼻血出したことなかったな。刺激が足りなかったってことか?》
 ブルーが思念でハーレイに問う。
《……鼻血を出す暇もありませんでした》
 馬鹿正直な返答にブルーの口元が緩む。
「ぶるぅ」
「は~い」
「土鍋」
「え?」
「聞こえなかったのか?」
「……だって僕が頼まれたのに」
「ここから先は大人の時間」
 ビク、と反応したのはハーレイ教頭だった。
「大人って何年後? 十年後? 百年後? 二百年後?」
「恋をしたらね」
「………」
 トトト、と部屋の隅に置いてある土鍋の中に入ると物音一つしなくなった。
「では今夜は私もこれで」
 床に落ちていたバスローブを拾い上げようとしてブルーが止める。
「お前はここに」
「承伏致しかねますが」
「お前はお前自身を助けてやろうとは思わないのか? 成就出来ない恋を応援しようという気持ちはないのか?」
「私の助力の必要性を感じませんが、ソルジャー」
 しばらく見つめ合う二人を、鼻を拭きながらハーレイ教頭は恐々とした思いで上目遣いでチラチラと見る。
 やがてブルーが手を差し出すと、ハーレイはバスローブを拾い上げて手渡した。
 きちんと着込んで再びベッドの上に上がると、ベッドの端を軽く叩いてハーレイに座るよう促し、溜息をつきながら腰を下ろしたハーレイを確認してからハーレイ教頭の前に寝転がった。
「訂正。見られてると欲情する。それもお前に見られていると特別に」
 はいはいと小さく頷いたハーレイは諦めたようだった。
「修行に来たんだろう? 上がって」
 言葉で誘っても動かないハーレイ教頭を見て、ブルーは身を寄せて首に抱きつくと「きて」と耳元で囁いた。
 鼻の奥どころか、頭の芯まで熱に満たされた。

 

 

「こんにちは~!」
 シャングリラ学園のぶるぅの部屋にぶるぅが元気に飛び込む。
「いらっしゃい。今日はアップルパイを焼いたんだよ」
「良い匂い」
「食べていってね」
 エプロン姿のぶるぅが言うと、上機嫌で「うん」とぶるぅが答える。
 そこに姿を現したのはシャングリラ学園生徒会長ブルーだった。
「分身してるな」
「お邪魔してます。分身じゃなくてあっちもこっちもぶるぅだよ」
「ごめんごめん。いらっしゃい。もしかして送ってきてくれたのかい?」
「うん。教頭先生疲れちゃったから、送ってあげなさいってブルーに言われたの」
「疲れたって何か運動したの?」
 できたてのアップルパイをお皿にのせてキッチンから戻ってきたぶるぅが尋ねる。
「うん。昨日の夜、いっぱい運動したんだよ。ブルーがね壊れちゃいそうだって言ってた」
 ありがとうと言いながらパイにかぶりついたぶるぅを見つめ、ブルーは眉をひそめる。
「それは本当なのか?」
「だって教頭先生、送ってきたらすぐにベッドに潜り込んじゃったし。ブルーもベッドから出てこないし」
「ねえねえ、どんな運動?」
「えっとね、大人の運動。僕も恋をしたらするんだ!」
 エッヘンとパイを頬張ったまま威張る。
「いいなぁ。僕も大人の運動とか恋とかしたいな」
「じゃあさ、僕とする?」
「うん!」
 二人のぶるぅが盛り上がっている中、真実を知ろうとブルーはぶるぅの思考を読もうとしたが出来なかった。
「僕、まだ大人じゃないから土鍋の中に入れって言われたから、何にも見てないよ。それに防音土鍋だし冷暖房も完備だし」
 説明しながらおかわりのパイに美味しいと言ってかぶりつく。
「あ、これね、ブルーからお土産だよ」
 テーブルの上に乗せられたハート型の箱にブルーは嫌な予感を感じた。
「何が入っているのかな~?」
「開けるな」
「駄目だよ。ちゃんと説明してきなさいって言われたから」
 蓋を開け、一つずつ取り出して並べる。
「綺麗な色」
「これもこれも気持ちよくなる魔法の薬だよ。こっちは飲んで、こっちは塗るの。あとね」
「説明は必要ない」
「え? ブルーも持ってるの?」
「持ってない。持ってないが分かる」
「すごい。タイプブルーってすごいなぁ。僕は3分限定だから色々調べないと駄目なんだ」
「僕だってタイプブルーだけど、これ、全然見たことないし何だか分からないよ」
「分からなくていい」
「やっぱり恋をしないと駄目なんだ」
 ブルーの言葉をきっぱり無視して結論づける。
「ぶるぅ。アップルパイをお土産に渡して、お帰り願ってくれ」
「もう? せっかく遊びにきてくれたのに」
「焼きたてを食べてもらいたいだろう?」
「あ、うん。そうだね。ちょっと待っててね」
 準備していたのかキッチンに行ったかと思えば。ぶるぅはすぐに箱を持ってきた。
「ありがとう。じゃあね」
「ばいばい」
「ぶるぅ、僕と恋しようね」
「うん」
 ぶるぅが消えると同時にブルーから大きな溜息が漏れた。

 

 

「美味しいよ。ハーレイ」
 ベッドの中でパイを食べるブルーの傍らで、ハーレイはまた清掃チームに文句を言われると重いため息を吐き出した。
「そんなに甘くないから食べられると思うよ。ほら」
 口を開けて、とブルーが勧める。
「少し……後ろめたいのですが」
「大丈夫。すぐにバレるから」
「ですが……」
「だって」
 思い出してブルーはくすくす笑う。
「何とかベッドに上がって、僕の上に身体を乗せたら僕の胸元に鼻血が垂れて、それ見て失神しちゃうんだからさ。筋金入りのヘタレだよね」
「………」
「修行に来たのにそれじゃ何にもならないし、僕も満足出来ないからその後のお前との睦み合いを記憶に流したけど、教頭先生は正視出来ないだろうからしばらくは自分がと思っているだろうね」
「……ものすごく、恥ずかしいのですが」
「どうして?」
「あちらの方はすぐに気がつかれるでしょうし」
「ああ、お前、見られて煽られるタイプか」
「ちっ……違います」
「見られなくても大丈夫なら、ねえ」
 絡みついてきたブルーの腕を振り払えなかった。





 それはニューイヤーイベントのお祭り騒ぎが終わり、船内がいつもと変わらぬ空気になった頃のことだった。
 イベントの空気を惜しむというより、いつまでもダラダラするための口実にしていたブルーだったが、ついに青の間にも明日掃除部隊が突入することが決定したのだ。
「あと一週間くらい問題ないだろう? 同じ月内だし」
「生活にはメリハリが必要だ」
 きっぱり言い放ったハーレイだったが、あと一日と言われると強く却下出来ない。
「ではこの辺りを片付けるのなら、もう一日だけ延期するよう伝えよう」
「ありがとう、ハーレイ。じゃあそこの片付け宜しく頼む」
 そう言ってベッドに寝転がってしまったブルーに向けて大きな溜息を吐き出してみたが、見えているのに全く反応はない。
 視覚シールドを張っているのかと思うほどだ。
 もう一度溜息をついて床に広がるパーティの痕跡を一つ一つ拾い片付けてゆく。
 思い出してみればクリスマスからお正月とイベントは続き、その間一度も床が綺麗にならなかった。
 子供たちと作った紙吹雪や紙の花、飾りがあちこちに落ちている。
 それらを適当に拾い集めていると、小さな塊に気づいた。
 白い袋なのだが、ラッピングされているようでもなく、リボンがついているわけでもない。
「ブルー?」
 袋を拾い上げてから呼びかける。
「終わったか?」
「……いや。これは? 誰かからのプレゼントか?」
「どれ?」
 言いながらハーレイの手の中の袋を見やる。
「ああ、それね。プレゼントだと思うんだけど、送り主が分からないんだ。クリスマスの朝にあった。ひょっとしてハーレイからかと思ったんだが、違うようだね」
「クリスマスの朝ですか?」
「たぶん……。気がついたのは二日くらい後だったけれど」
「リボンも何もついておりませんが」
「ああ。中にメッセージカードが入っていたんだ」
「読んでも?」
「構わない。どこかに落ちていると思う」
 しれっと答えたブルーにハーレイは肩を落とし、まだ半分も片付いていない床の上に視線を巡らせる。
 と、ブルーが着たサンタクロースの衣装の下から白い紙片を見つけて拾い上げて中を読んだ。
 ――よろしく
(よろしく? 何をだ?)
 袋の中を覗き込む。
「んん?」
 妙な声を出してハーレイが袋から取り出したものは子供用の洋服だった――それもブルーの服を一筆書きしたような簡単な装飾のものだ。
「意味が分からなかったんだ。それ」
「確かに……」
 ハーレイが広げた服は三歳くらいの子供が着るサイズで、マントもあるがこちらもブルーのものに比べたら三分の一くらいの大きさだ。
「あ……」
「どうかしましたか?」
「動いてる」
 ブルーがベッドの中を指さす。
 そこには去年のクリスマス、いつの間にか青の間にあった青い色の石――意思をもった卵があったのだ。
「これと関係あるのでしょうか?」
 ハーレイが言いかけた時、卵は光を放ち、二人が驚いている間にヒビが入り、殻から拳が突き出すと粉々に壊れてしまった。
「――っ?」
「かみお~ん♪ 初めまして、パパ、ママ」
 卵の中に謎の生物がいるのは分かっていたが、出てきたのは小さなブルーに酷似していた。
 容貌がブルーに似ていることにハーレイは心底驚いたが、ブルーが反応したのはそこではなかった。
「どちらがパパでどちらがママなんだい?」
「え……ええ? ええっと……」
 子供はブルーとハーレイを何度も見比べ、
「パパ」
 と言ってハーレイを指さした。が、ブルーに向かって「ママ」という言葉は投げかけられなかった。
「ハーレイがパパということは、僕がママ?」
「……違う…よね」
「じゃあ、僕がパパでハーレイがママ?」
「…違う……。かみおぉぉ~ん。僕のママはどこに行っちゃったの?」
「いないよ」
 くすくすと笑いながらブルーは答える。
「ええっ?」
「この卵は僕とハーレイの二人で暖めたんだからね」
「……じゃあパパが二人?」
「そういうことになるね」
「…………」
 じっと割れた卵を子供は見つめる。
「……ねえ」
「なんだい?」
「パパが二人でも変じゃないよね?」
「変だ」
「うわ~ん」
 ブルーの即答に子供が泣き始めると、ハーレイは抱き上げて背を軽く叩いて宥める。
「ブルー。その言い方は……」
「事実だろう? 僕も君も男なんだから」
「そうだが……。――変でもいいだろう。何だかよく分からなかったが、アレを暖めていたのは私たちだったのだからね。保護者であることに間違いはない」
「……変でもいいの?」
「問題ない」
「わ~い♪」
 ハーレイの腕の中からぴょんと飛び出して空中でくるりと回って床に降り立つ。
「まず服を着た方がいい」
 そう言うと小さなブルーは小さな手足を動かして服を着始める。
 少々着るのに難解らしく着替えを手伝うハーレイにブルーは小さく微笑みながら頷き、
「分かった。アレは僕へのクリスマスプレゼントなんだ。サンタクロースからの」
「プレゼント?」
「服だよ。一昨年が卵で、去年が服。きっとぴったりのはずだ」
 ブルーの指摘に視線を向けると、服は子供の身体を綺麗に覆い隠していた。
 同時に全身から薄く青い光が発せられている。
「サイオン……? それも青い…」
 ハーレイは驚愕の瞳で子供を見つめる。
「ねえねえ。僕、こんなことも出来るみたい」
 嬉しそうに裸足で走り始め、壁も天井も人工重力を無視して縦横無尽に走る。オマケに水の上もだ。
「待ちなさい! こら!」
「やだよ~♪ 楽しいもん♪」
「止まれ!」
 青い光の軌跡を青の間中に描いて走る子供だったが、ハーレイの真上の天井を走っていた時、魔法が切れたように落ちてきてハーレイの腕の中に綺麗に収まった。
「こら!」
 見下ろすともう眠っている。
 狸寝入りかと思えばそうでもなさそうだ。
「エネルギー切れ。サイオン切れかな」
「時間制限有りか。内心ホッとした。あのままでは船内が混乱する」
「そうだな。まあとりあえず、よろしく、ハーレイ」
「はぁ?」
「カードによろしくって書いてあったのはこの事だろう」
「いや……これはブルーへのクリスマスプレゼントだろう?」
「君、パパだろう?」
「それは……完全否定出来ないが。それを言うならあなたもパパだ」
「ハーレイの腕の中が居心地良さそうじゃないか」
「…………」
 ハーレイは複雑な表情をしていたが、腕の中で丸まって寝ている様子は小動物のようで、暖かく可愛いと感じる。
「僕はその場所を誰にも譲る気はないんだけどね」
 告げるブルーの髪にそっと口付けてから、
「寝床はここで?」
 確認するより先にベッドに下ろす。
「寝相が悪くなければね」
 そう言ってブルーも小さな子供の頭を優しく撫でた。






「ハーレイ」
 勤務を終え二人分の食事を手に青の間にやってきたハーレイに、ブルーが声をかけた。
 近づくのを待たず、青の間に足を踏み入れたと同時だ。
(何かあったのか?)
 急ぎ足でスロープを上れば、ブルーは食事を摂るテーブルにつき、チラリと視線を向けてきた。
「どうかしたか?」
「どうもしない」
「―――?」
「どうもしないけど……」
 言いながらテーブルの上で何かを転がしている。
 何だ?と歩み寄って覗き込むように見れば、掌で包み込めるほどの大きさの青い丸い石のようだった。
「……これは?」
「変化しちゃったんだ」
「何がだ?」
 どうも今ひとつハーレイには状況が飲み込めない。
 もっとよく見ようと食事の乗ったトレイを置き、ブルーと向かい合わせに座って石を見つめる。
「この前のクリスマスに子供たちからプレゼントをもらったろう? その中に指の先ほどの白い石があったのを覚えているか?」
「ああ、もちろんだ。何の意味があるのかとあれを入れた子供を捜したが、入れた者はなく不思議だった。……もしかしてそれが?」
「名乗り出られない理由があるのかもしれないし、その子にとっては大切な物かもしれないから捨てられなくて。でも仕舞ったまま忘れてたんだ。さっきふと思い出して調べてみようと思ったんだ」
「サイオンを使ったのか?」
「そう。何か秘密が隠されているんじゃないかと思ってね。そうしたら―――大きくなって色が変わった」
「……普通の石ではなかった、ということだな」
「そうなんだ。そうなんだけど……石には変わりない」
 青い石を摘み上げてハーレイの掌の上に落とす。
 ブルーが触れていたからか、それほど冷たくないそれは、動かせばコロコロと転がった。
「本格的に送り主を捜すことにしよう」
「頼むよ」
 好奇心そのものの笑みをブルーは浮かべた。
「遅くなったがそろそろ食事を……」
 言いかけたハーレイの唇が塞がれる―――甘く熱いもので。
「僕はお腹より心の方が空腹なんだけど?」
 問うように囁かれて否と言えるはずもない。
 そのままブルーを抱き上げてベッドに向かった。

 

 

 ハーレイの腕の中に綺麗に収まって甘い余韻に身を浸していたブルーの眉が寄せられた。
 身じろぎ視線を僅かに上げてハーレイを見る。
「―――?」
「……石。あの石、お前、こっちに持ってきたか?」
「いや。持ってきてない」
「………そうだよな」
「ブルー?」
「……ここにあるんだけど」
 ブルーの視線を追えば、二人の身体の間にその石はあった。
「ちょっと…」
 ハーレイは身を離してベッドから抜け出しテーブルの上を見れば、そこにあるはずの石はなかった。
「妙だな…」
「心なしか大きくなっているような気がするんだけど」
「まさか」
「ほら」
 先程までブルーが握れば掌で隠せるほどだったが、今はもう隠れない。
 その不可解さにハーレイはツカツカと歩み寄りブルーから石を取り上げようとした。
「……っつ!」
 ビリ、と鋭い痛みがハーレイに走り、掴むことが出来なかった。
「大丈夫か?」
「ブルー。危険かもしれない。すぐに……」
 ―――ダメ~っ
「え?」
 互いに今の声が聞こえたか?と視線で問い、聞こえたと視線で答えた。
「これ? 石が?」
 二人で石をじっと見る。
「今、駄目って言ったか?」
 問いかけてみるが答えはない。
 頷くとハーレイは、
「危険だからすぐに捨てなければ……」
 ―――ダメダメダメダメっ
 思念の主を知って二人が驚く。
「石が…生きてる」
「あ……ああ。そのようだ。いや、しかし…信じられん」
「捨てられるのが嫌なようだな」
「それこそが生きているという証のようだ。だが……本当に?」
 試しにとブルーが石を撫でれば、照れたようにほんのりピンク色になった。
「………奇っ怪な感じが…」
 率直な感想をハーレイが言うと、不快感を表すかのように石は倍の重さになった。
「面白い」
 ブルーは微笑し口付ければ、今度は真っ赤になった。
「……ブルー」
「なんだか、ペットみたいだ。ほら、ハーレイもキスしてみて」
 差し出されてそっと唇で触れれば、一瞬の間を置いてほんのり赤くなった。
「もっと愛情込めるといいんじゃないか?」
「私がそうするのはブルーだけだ」
 きっぱりと言えばブルーは赤くならず、花のような微笑を浮かべた。
「じゃ、そうして」
 石を手にしたままハーレイの背に腕を回せば、幾十もの口付けが落ちてきた。
 甘い吐息が途切れ途切れに漏れ始めれば、石はブルーの手から落ちてしまった。

 

 その石をハーレイのいない日は抱き締めて眠り、甘い話を聞かせていれば日ごとに大きくなり、抱えるほどにまで成長した。
 もはや危険という意識はなく、愛情を注ぐべきものになっていた。
 たまにハーレイが抱けば、仕方なさそうに大人しくしていると、ブルーは評した。

 その石が実は卵で、中から悪戯小僧が生まれてくるのは、次のクリスマスのことになる。





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