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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

雲の天気予報
(今日は、いろんな雲…)
 形が色々、とブルーが見上げた窓の外。学校から帰って、おやつの後で。
 二階の自分の部屋の窓から眺めた空。青い空には、雲が幾つも。モコモコなのやら、筋雲やら。
 様々な姿をしている雲たち。前の自分ならば、アルテメシアで雲の上を飛んでいたけれど…。
 青い地球の上に生まれ変わった自分は、サイオンがすっかり不器用になった。空を飛ぶなど夢のまた夢、思念波さえもろくに紡げないレベル。雲の上は、文字通り「雲の上」。
(こうやって見上げるだけになっても…)
 雲の上には行けなくなっても、それも平和の証拠だよね、と考える。前の自分の強いサイオン、あれが無ければ、ミュウは一人も生きられなかった酷い時代。SD体制の時代は遥かな昔。
 そのサイオンが不器用でも誰も困らないのも、今が平和な証だけれど…。
(今みたいに、雲…)
 地上から雲を見上げる贅沢。
 踏みしめる地面を持たなかったミュウには、まるで考えられないこと。雲を仰ぐなんて。
 前の自分も、アルテメシアに降りた時には、空に浮かんだ雲を見上げていたけれど…。
(いつも地上にいたわけじゃないし…)
 シャングリラは、常に雲の海の中。消えない雲海を隠れ蓑にして、あの星に潜み続けていた。
 踏みしめる地面を持たないままで、いつか地球へと願いながら。ミュウと判断され、処分される運命の子たちを救い出しながら。
 船の周りは雲の海でも、展望室の窓の向こうは真っ白。雲の形は分からなかった。とても細かい水の粒子が、無数に浮かんでいるだけで。強化ガラスを隔てて流れてゆくだけで。
(まるで霧の中にいるみたいに…)
 白いだけだった、船の中から見えた雲。モコモコなのか、そうでないのか、それさえも謎で。
 地上に降りれば雲の形は色々だけれど、様々な雲たちが空に浮かんでいたけれど。
(それを見られるのは、前のぼくだけで…)
 他の仲間たちは仰ぐことさえ出来なかったし、後ろめたい気持ちになることもあった。潜入班や救出班の仲間も地上に降りるけれども、任務が優先。雲をゆっくり見る暇は無い。
 空を仰げない仲間たちを思うと、そうそう雲には酔えなかった。どんなに綺麗な雲があっても、刻一刻と形を変えてゆくのが面白くても。



 前の自分が見ていた雲は、そういった雲。のんびり見られはしなかったもの。
 見上げる時間はたっぷりあっても、いつも心に仲間たちのことが引っ掛かっていたものだから。
(今だと、ゆっくり…)
 こうして考え事だって出来る。仲間たちや白いシャングリラのことは、何も心配しないまま。
 SD体制の時代は遠い時の彼方で、今は本当に平和な時代。考え事だって、好きに選べる。空に浮かんだ雲を見ながら、色々なことを。
 雲の上には天国があるし、白い翼の天使たちもいる。きっと自分は、其処から来た。青い地球の上で新しい命と身体を貰って、ハーレイと生きてゆけるようにと。
 残念なことに、天国の記憶は無いけれど。…ハーレイだって、何も覚えていないのだけれど。
(雲の隙間から、光が射したら…)
 地上に向かう光の道が空にあったら、「天使の梯子」の名前で呼ばれる。天使たちが使う、空と地上を結ぶための梯子。
 そういう時に空を観察したなら、雲の端から天使が覗いているらしい。眩しい光の中に紛れた、遠い空にいる天使の顔を見られるチャンス。
(天使の梯子が無くっても…)
 天使が何処かにいないかな、と目を凝らしてみる。雲の端っこに見えはしないかと、翼を持った天の使いが顔だけを出していないかと。天使を探すだけでも楽しい、雲を仰ぐこと。
(それに、雲の形…)
 色々な形の雲がある上、同じ雲でも形が変わる。空の上の気流や、湿度のせいで。
 見る間に形が変わってゆく雲もあるし、同じ形を暫く保ち続ける雲も。
(ホントに見てるだけでも楽しい…)
 モコモコとした雲の羊がいたり、丸くなった猫のように見えたり。空に浮かんだ雲の彫刻。どの彫刻も雲で出来ているから、すぐに崩れてしまうけれども。
(崩れちゃっても、また違う形…)
 羊が猫になったりもする。猫が龍みたいになることだって。
 素敵だよね、と眺めていたら、雲の一つが隠した太陽。空を悠々と流れる間に、太陽の道と交差して。太陽の顔を隠す形で横切って。
 たちまちサッと陰ったけれども、雲が通り過ぎたら出て来た太陽。元の通りに、青い空の上に。



 一瞬だけの曇り空。ほんの一部だけ、雲の影に入っていた所だけで「消えた」太陽。通り過ぎた雲の下にいなかった人は、陰ったことさえ知らないだろう。青空に白い雲があるだけで。
(面白いよね?)
 太陽が消えてしまった所と、そうでない所。雲の下にいたか、いなかったかの違いで変わる。
 こういうのだって楽しいよ、と考えていたら気が付いた。前の自分が生きた時代のことに。
(シャングリラは雲の中だったけど…)
 いつもアルテメシアの雲海の中を飛んだけれども、赤いナスカでは違っていた。前の自分は深く眠っていたから、ナスカに降りてはいないのだけれど。
(ナスカに着いたら、シャングリラは宇宙に浮かんだままで…)
 地上に降りようと決めた仲間は、赤い星へと降下した。何機ものシャトルで、船を離れて。
 踏みしめる大地を手に入れたミュウ。若い世代が夢中になった、赤い星。
 その星にあった二つの太陽の光や、恵みの雨の話だったら、今のハーレイに聞いたけれども…。
(雲の話は聞いていないよ?)
 シャングリラから離れて、皆が仰いだ空の雲。ラベンダー色だったというナスカの空に、幾つも浮かんでいただろう雲。
 その雲たちは嫌われ者だったのか、愛されたのか。
(曇っちゃったら、お日様の光が遮られるから…)
 作物に光が届かなくなる。直ぐに晴れればいいのだけれども、曇ったままなら、気を揉む仲間もいたかもしれない。「こんな空模様で大丈夫かな」と、収穫のことを心配して。
(お日様の光を、うんと沢山浴びないと…)
 甘くならない果物もあるし、トマトなどの野菜もそうかもしれない。酸っぱくなるとか、綺麗な色にならないだとか。
 それに季節が冬だったならば、太陽が隠れてしまうと寒い。雲に覆われて消えてしまったら。
(…寒くなったり、野菜が美味しくならなかったり…)
 雲にはそういう面もあるから、嫌われたろうか?
 それとも、今の自分みたいに「眺めて楽しむ」ものだったろうか。雲海の中を飛ぶ船と違って、いつでも空を仰げたから。雲の形を観察することも出来たから。
 「今日は羊だ」とか、「あれは猫だ」とか、雲の彫刻を探すことだって。



 ナスカの雲は嫌われていたか、愛されていた雲だったのか。…前の自分はまるで知らない。深く眠ったままでいたから、目覚めた時には滅びの時が迫っていたから。
 もちろん今の自分も知るわけがなくて、想像の域を出ないもの。ナスカの雲を、仲間たちがどう見ていたのかは。
(えーっと…?)
 答えを出せる人がいるなら、ハーレイだけ。赤いナスカにも降りたキャプテン・ハーレイ。
 今のハーレイはその生まれ変われりだし、記憶もきちんと引き継いでいる。ハーレイに訊けたらいいんだけれど、と考えていたら、聞こえたチャイム。
(…ハーレイだ!)
 この時間なら、と窓に駆け寄ったら、門扉の向こうで手を振るハーレイ。生き証人が訪ねて来てくれたのだし、ハーレイと部屋でテーブルを挟んで、向かい合わせで問い掛けた。
「あのね、雲って嫌われていた?」
 空にある雲、嫌われてたのか、それとも好かれていたのか、どっち…?
「はあ? 雲って…。何の話だ?」
 昔の地球の雲の話か、俺が教えている古典の世界の。…まあ、雲によって色々なんだが…。
 めでたいと喜ばれる雲もあったし、不吉だと嫌われた雲もあったが…?
 喜ばれた雲にも色々あって…、と話し始めたハーレイの言葉を遮った。「そうじゃなくて」と、「前のぼくたちの頃の話」と。
「ぼくが知りたいのは、ナスカの雲だよ。あそこの雲はどうだったのか」
 ナスカの太陽や雨の話は聞いたけど…。今のハーレイから、いろんな話を。
 虹の話も聞いたけれども、雲の話は聞いていないよ。…ナスカの雲って、嫌われてたの?
「嫌うって…。どうして雲を嫌うんだ?」
 何処からそういう話になるんだ、大昔の人間じゃあるまいし…。雲は雲だぞ?
 めでたい雲でも、不吉だと言われた雲でも雲の一種だ、とハーレイは「雲」で片付けた。迷信が生きていた時代ならばともかく、SD体制の時代に嫌いはしない、と。
「そうだろうけど…。でも、シャングリラはずっと雲海の中だったし…」
 展望室の窓の向こうを隠していたのは、いつだって雲。あれじゃ好きにはなれないよ。
 ナスカに着いた後になったら、雲はお日様を隠してしまうから…。



 嫌われそうな感じだけれど、と説明をした。
 雲が太陽を隠してしまえば、降り注ぐ筈の日射しが地上に届かなくなる。作物を育てたり、実を甘くしたりする光が。
 それに冬なら、人間だって「寒い」と感じる。日が照っていたら暖かいのに、雲が太陽を覆って隠してしまったら。
「今のぼくだと、雲があるな、って見上げておしまいだけど…。あるのが当たり前だもの」
 前と違って、空を飛ぶのは無理だから…。ホントに見ているだけなんだけど。
 今日も見ていて、シャングリラの頃を思い出したら気になったんだよ。ナスカに降りた仲間たちには、雲はどういうものだったかな、って。
「なるほどな…。それで雲だと言い出したのか。ナスカの雲なあ…」
 どうだったっけな、とハーレイも考え込んでいる。「あそこじゃ、雲は当たり前に空に浮かんでいたから」と、「前の俺もそれほど気にしてないな」と。
「そうなんだ…。前のハーレイでも、そうだったんなら…」
 他の仲間もきっと同じだね、「雲だ」って空を見上げておしまい。好きとか嫌いとか、そういう気持ちは生まれないままで。
「そんなトコだろうな、なんと言ってもただの雲だし」
 アルテメシアの雲海の方なら、雲は大事なものだったが…。消えたりしたなら、シャングリラが外に出てしまうから。…ステルス・デバイスが作動してても、そいつはキツイぞ。
 監視衛星からは捉えられなくても、視認できる距離に船がいたなら見付かっちまう。正体不明の大型船だ、と調べられたらおしまいだしな?
 元はコンスティテューション号だった船だとバレちまうから、とハーレイが言っている通り。
 「未知の大型船」と認識されたら、固有周波数から特定可能な船の正体。
 記録の上から、いつ消えたのか。何処で消えたか、此処にあるなら、乗っているのは何者かも。
「そうだっけね…。アルテメシアで雲が消えたら、ホントに大変」
 だからいつでも雲の中を飛んで、雲海のデータを集め続けていたんだっけ。
 一年中、消えないって分かっていたって、星が相手じゃ何が起こるか分からないから…。
 なんのはずみで気流が変わるか、雲の流れがどうなるのかは、誰にも正確に読み取れないもの。
 何かありそうだ、って予兆があったら、航路を変えて飛ぶくらいしか出来ないものね。



 アルテメシアでは大切だった、雲海のデータを集めること。雲が厚い場所を常に選んで、雲海の中を飛び続けること。
 けれど、ナスカでは雲の海はもう、必要なかった。懸命に雲に隠れなくても、人類軍が来たりはしない。船から降りて地面にいたって、何も襲っては来ないのだから。
「…ナスカの雲だと、あっても無くても、関係ないよね」
 あれが無ければ困っちゃう、っていうわけじゃないから。…アルテメシアの雲と違って。
「うむ。太陽や雨とは違うからなあ、星の上にいても、直接、影響を受けたりはしない」
 お前の言ってる作物にしても、旱魃だとか、大雨だったら、皆、大慌てをしたんだろうが…。
 雲が太陽を隠した程度じゃ、そうそう困りはしなかったろう。長雨となったら、話は別だが。
 しかし、大雨や長雨だったら、問題は雨の方でだな…。それを降らせてる雨雲の方は、さっさと消えてくれればいいのに、と思われておしまいだったんじゃないか?
 もっとも、大雨は降っちゃいないし、雨は喜ばれていただけだ。恵みの雨だと、「これで作物がよく育つだろう」と。
 そんな具合だから、誰も雲には注目しない。…隠れ家だったわけでもないしな、アルテメシアの頃と違って。
 だが、待てよ…?
 本当にそれで全部だったか…、とハーレイは顎に手を当てた。「雲だろう…?」と。
「他にも何かありそうなの?」
 ナスカの雲にも、何か素敵な話でもあった…?
 トォニィが生まれた時の雨で生まれた花園みたいに、とても特別で、みんなが喜びそうなこと。
 それとも、前のハーレイが虹を追い掛けて歩いてたような、ちょっと悲しいお話だとか…?
 前のハーレイ、虹の橋のたもとを探していたって言うから…。宝物が埋まっているって聞いて。
 眠ったままの前のぼくの魂、其処に埋まっていそうだから、って…。
「あれは悲しい話ではないぞ、俺にとっては希望の一つだ。虹を追い掛けて歩いてたのも」
 前のお前に目覚めて欲しくて、それを考え付いてだな…。
 歩いている時は、ちゃんと幸せだったんだ。「今日こそ宝物を見付けてやろう」と。
 追い付けないままで虹が消えても、次の機会がまたあるだろう?
 ガッカリしながら歩いていたって、希望までは消えちゃいないんだからな。



 其処の所を間違えるなよ、と訂正してから、またハーレイは考えている。「何だった?」と。
 ナスカにあった雲の話を、それに纏わるらしい記憶を。
「雲には違いなかった筈だと思うんだが…。しかし、俺には縁のないことで…」
 キャプテンの俺が無関係なら、若い世代の連中だよな?
 あの星の上でだけ、意味があったか、何かいいことでもあったのか…。雲ってヤツで…。
 そうだ、その雲を使ってたんだ!
 ナスカにいた若い連中が、とハーレイがポンと叩いた手。「天気予報だ」と。
「…天気予報?」
 なんなの、それは?
 天気予報っていうのは、ホントに天気予報のことなの、今のぼくたちが知ってるような…?
 今日は一日晴れるでしょうとか、明日は午後から雨になりますとか、そういう天気予報のこと?
 ぼくは他には知らないけれど、と首を傾げた。天気予報は天気予報で、この先の天気を予想するもの。傘を持たずに出ても大丈夫か、持って出た方がいいのかなどと、暮らしの参考になる予報。
 農家の人やら、海で漁をする漁師だったら、仕事などにも役立てる。
 けれど、ハーレイは「雲だ」と言った。雲を使った天気予報と言われても…。
(…天気予報は、気象衛星とかを使っているんじゃなかった?)
 今の時代も、前の自分が生きた時代も、基本の仕組みは変わらない筈。白いシャングリラでも、似たようなことをやっていた。船の周りの雲海の動きを読むために。
「お前、すっかり忘れているな? その様子だと」
 今の俺が得意としているだろうが、雲で天気を読むってヤツ。
 空模様を見て、「この雨だったらじきに止むな」とか、「予報じゃ晴れだが、降るぞ」だとか。
 あれも天気予報の一種ってヤツだ、観天望気と呼ぶんだがな。
 ずっと昔は、天気予報の仕組みは無かったモンだから…。雲だの風だの、自然の動きを観察して天気を読んでいたんだ。漁師も、作物を育てる農家も。
「雲の天気予報…。今のハーレイ、そういえば得意だったっけね」
 でも、ナスカでそれをやってたの?
 雲の流れや形を眺めて、晴れになるとか、雨になるとか…?
「やっていたとも。…もっとも、そいつをやっていたのは俺じゃないがな」
 前の俺じゃなくて、若い世代だ。さっき、お前に言った通りに。



 ナスカに入植した連中だな、とハーレイは懐かしそうな顔。「あいつらだった」と。
 人類が放棄した植民惑星、かつてジルベスター・セブンと呼ばれていた星。その星にフィシスが「ナスカ」と名付けて、何機ものシャトルが降下していった。
 其処で暮らそうと夢を抱いた、若い世代のミュウたちを乗せて。彼らの希望と、未来への大きな夢を積み込んで。
 そうして始まった、ナスカでの日々。踏みしめられる地面の上で。
 赤いナスカに降りたからには、必要なものが天気予報。様々な作物を育ててゆくにも、ナスカで暮らしてゆくためにも。
 作物を上手く育てるためには、気温などのチェックが欠かせない。寒くなりそうなら、そうなる前に保温をするとか、暑くなりそうなら早い間に水を撒くとか。
 人間の暮らしの方も同じで、外に出掛けて作業をするなら、準備するものが日によって変わる。雨はシールドで防ぐにしたって、作業の方はそうはいかない。シートで覆って中断するとか、最初から作業を延期するとか。…予定の作業を、別の仕事に切り替えたりして。
 防水用のシートを持って出掛けるのか、それは持たずに出ていいのか。作業そのものを、屋内のものに切り替えるのか。持ってゆく工具や道具なんかも、そっくり変わってしまうとしても。
 そういったことを決めてゆくには、天気予報が必要だった。雨になるのか、晴れるのかと。
 シャングリラの中だけで暮らした頃なら、一部の者しか気にしなかった天気予報。
 アルテメシアの雲の流れや、他の様々な気象データは、ブリッジクルーだけが見れば良かった。船の航路を決めてゆくのに、それらは必須のデータだから。
 長い年月、船の仲間が見てもいなかった天気予報。この先、どういう天気になるか。どう天候が変わってゆくのか、変わるタイミングは、どの辺りなのか。
 それらがナスカで、皆に共有されることになった。赤い星に降りた若い世代に。
 ナスカでも気象観測は可能だけれども、シャングリラの方が遥かに優れた機能を持っていた船。長い年月、アルテメシアで観測を続けていただけに。
 もちろん船のデータベースにも、膨大な情報が入っていた。人類が暮らす都市があった幾つもの植民惑星や育英惑星、其処で得られた観測データ。
 船のコンピューターに計算させれば、ナスカでの天気予報も可能。衛星軌道上に停泊した船で、ナスカを観測し続けながら。どの雲がどう動いてゆくのか、風の流れはどう変わるかと。



 白いシャングリラで弾き出された、計算の結果。赤いナスカの天気予報。
 それは直ちに、地上で暮らす仲間たちの所に届いたけれども…。
「やっぱり外れちまうんだ。…どんなに計算し直してみても、これで確実だと思っていても」
 アルテメシアにいた頃だって、常に観測し続けてないと、急に変わるってことがよくあった。
 あの頃よりも遥かに技術が進んだ、今の時代の天気予報だって、百パーセントじゃないだろう?
 だからだな…。仕方ないっていうヤツだよなあ、ナスカで予報が外れちまっても。
 そうは言っても、頼りにしていた連中からすれば、とても納得できないわけで…。予定していた作業がパアとか、作業を控えて別のにしたのに、雨なんか降りもしなかったとか。
 朝から晩まで快晴でな…、とハーレイが浮かべた苦笑い。今の時代でも、よくあること。予報がすっかり外れてしまって、持って出た傘が荷物になっただけで終わるとか。
 赤いナスカで天気予報が外れた時には、文句を言っていた仲間たち。
 入植地からは遠すぎて見えない、白いシャングリラが浮かぶ方を仰いで、「何やってんだ」と。
 けれど、彼らは次第に気付き始めた。
 ラベンダー色の空の上にある、雲の形や流れなど。…それが天気と共に動いていることに。
 何処に雲が湧けば雨になるのか、あるいは雲は其処にあるだけで晴れるのか。
「…それって、今のハーレイみたいに?」
 じきに晴れるぞ、って言ってるみたいに、ナスカの仲間も予報をしてたの?
 雲の形だとか、どっちの方に流れて行くかで、雨が降るのか、降らないのかを…?
 若い世代の仲間だよね、と赤い瞳を瞬かせた。前の自分がアルテメシアで救い出させた、大勢のミュウの子供たち。彼らが育って、ナスカに降りた。「あの子供たちが、天気予報を?」と。
「そういうことだ。今の俺と同じに、読み始めたんだな、雲の動きを」
 ナスカの上で暮らす間に、色々な経験を積んで知識を増やしていって。
 シャングリラの方で出した予報が外れちまったら、そいつに腹を立てたりしながら。
 あの星と一緒に暮らしていれば、星の気分にも詳しくなる。シャングリラの中で、観測データを見ているだけのヤツらと違って。
 あっちの方に雲が出たなら、降るだとか。…あの雲なら、じきに消えるとか。
 シャングリラから届く予報と、ヤツらの経験。それを組み合わせりゃ、けっこう当たった。
 だが、季節によって変わっちまう部分も沢山あるから、すっかり定着する前に…。



 赤いナスカは燃えてしまった。キースが放ったメギドの炎で、跡形もなく。
 ミュウの安住の地になるよりも前に。…雲の予報を完成させて、次の世代に伝える前に。
「それでも、ヤツらは楽しんでいたな。自分たちが作った天気予報を」
 たった四年しか暮らせなかった星だが、俺が視察に降りた時には、皆、生き生きとしてた。
 あいつらが出した予報が当たって、シャングリラが出した予報が外れた、と喜んだりして。もう何年か此処で暮らしたら、天気予報は自分たちだけでも出来るだろう、とな。
 そしていつかは、この星の天気をすっかり当ててみせる、と勢い込んでいたもんだ。「俺たちのナスカの天気くらいは、俺たちの力で当ててみせるぞ」と。
「そうなんだ…。みんな、ナスカで、ホントに幸せだったんだね」
 雲の予報を見付けたりして、シャングリラよりも当たる天気予報が出来たくらいに。…ナスカのことが好きでなければ、そんなの、絶対、無理だから…。
 毎日、ナスカを観察してなきゃ、出来るわけがないことなんだから。…雲の予報なんて。
 その方法で、いつか自分たちで天気予報をしようと、みんなはナスカで思ってたのに…。
 でも、それよりも前に、そのナスカは…。
 メギドの炎で焼かれちゃった、と俯いた。あの星に降りた若い世代は、前の自分も知っていた者ばかりだから。…白いシャングリラで育った世代で、幼かった頃に船に迎えた仲間たち。
 彼らはどんなに幸せな日々を、あの星で送ったのだろう。…ナスカの空を流れてゆく雲、それを見上げて生きていたろう…?
 彼らが夢を膨らませた星は、夢と一緒に儚く消えた。あの星で生まれた、自然出産児のトォニィたちだけを残して、暗い宇宙に。…ラベンダー色の空も、其処に浮かぶ雲も炎に焼かれて。
「残念だったが、仕方あるまい」
 前の俺たちがナスカを選んだのも、それがメギドで滅ぼされたのも、歴史の流れというヤツだ。
 ミュウの時代を手に入れるためには、ああなるしかなかったんだろう。
 前のお前も失くしちまって、とんでもないことになった星だが…。
 あの時代に生きた俺から見たなら、疫病神のような星だったのがナスカなんだが…。
 そんな星でも、雲を眺めて楽しめた時代もあったんだ、とハーレイは微笑む。
 「雲で予報をしていたんだぞ」と、「ほんの短い間でもな」と。
 前のハーレイは、それを確かに見ていたから。…雲の姿で天気予報を始めた、若い仲間たちを。



 ラベンダー色だったという、ナスカの空。其処に幾つも浮かんでいた雲。
 幼かった頃にシャングリラに来た若い世代は、雲を仰ぐのは初めてと言っても良かっただろう。養父母に育てられた時代は短かったし、シャングリラで暮らした年数の方が遥かに長い。
 アルテメシアの地上で仰いだ雲の記憶は、すっかり薄れてしまっていた筈。自分が本当にそれを見たのか、映像などで仕入れた知識か、それさえ区別がつかないほどに。
 シャングリラの中では、雲と言ったら「展望室の窓の向こう」を覆い尽くすもの。太陽が昇る、昼の間は真っ白に。太陽が沈んだ後の夜には、闇を含んだ重たい色に。
 そんな雲しか知らなかった世代が、赤いナスカで雲と出会った。空にある雲を仰いで暮らして、天気予報までするようになった。「あそこに雲があるから雨」とか、「雨は降らない」とか。
 今のハーレイは、それが得意で、観天望気という言葉も口にしていたけれど…。
「ねえ、ハーレイ…。前のぼくは、それを知らないよ」
 雲の形や流れなんかで、天気を読むっていう方法は。…雲の予報は。
 ナスカには一度も降りてないから、そんなの、耳にしてもいないし…。眠っていたから、教えてくれる人も一人もいなかったしね。
 アルテメシアに隠れてた頃も、前のぼく、やっていないから…。
 雲で天気が分かるなんてことには、気付いてさえもいなかったから…。
 何度も地上に降りてたのにね、と零した小さな溜息。「前のぼくって、駄目だったかも…」と。
「駄目ってことは無いだろう。前のお前は、立派なソルジャーだったんだから」
 とはいえ、雲の予報ってヤツに関しちゃ、そうなるのかもしれないな。アルテメシアも、星には違いなかったんだし、やろうと思えば出来ただろう。…雲の予報も。
 雲海だらけの星ではあったが、育英都市は雲海を避けて作ってあったしな。
 アタラクシアとか、エネルゲイアの天気予報は出来ただろうさ、とハーレイは笑む。
 「前のお前にその気があったら、恐らく出来ていただろう」と。
「…雲の予報を知っていたら、っていうことだよね?」
 そういうやり方があるって話を、前のぼくが何処かで読んだりしていたら…。
 ううん、ナスカで雲の予報をやってた若い仲間たちは、そんなの知らなかったんだし…。
 ナスカで暮らして覚えたんだし、前のぼくでも出来た筈…。
 雲の予報は知らなくっても、アタラクシアのも、エネルゲイアの天気予報も…。



 若い世代の仲間たちが気付いて始めたのなら、前の自分にも出来たのだろう。アタラクシアや、エネルゲイアの天気予報が。…雲の予報が。
 予知能力など使いもしないで、雲の形や流れなどを読む天気予報。白いシャングリラのデータも使わず、コンピューターにも計算させずに。
「雲の天気予報…。今のハーレイは凄く得意だけど、コツはある?」
 ぼくにはちっとも分からないけど、天気予報をするためのコツが。…ナスカでも出来た天気予報だし、前のぼくでも、その気になったら、アタラクシアやエネルゲイアで出来たんなら。
 コツはあるの、と興味津々で投げ掛けた問い。今のハーレイは、雲の予報の名人だから。
「雲の予報のコツってか? これというコツは無いんだが…」
 あるとしたなら、場数を踏むってことだろうな。ナスカでやってた若い世代は、そうだった。
 あの星の上で毎日暮らして、新鮮だった空を見上げて、そして覚えていったんだ。こういう雲が出て来た時には、天気ってヤツはこう変わるんだ、と。
 今のお前がやりたいのならば、毎日、窓から見ているだけでも、ある程度まではいけるだろう。
 関心を持って、きちんと雲を観察してれば。
 どういう具合に流れて行ったら、どんな形なら、その後の天気はどうなるのか。
 天気の変化と結び付けて覚えることが大事だ、と教えられた。ただ漠然と雲を見ていても、雲の予報は身につかない。雲や風向きをちゃんと覚えて、天気と結び付けないと。
「難しそうだね、雲の予報って…」
 雲を観察する所から始めて、それを覚えるだなんて…。その後のお天気、どうなったのかも。
 何度も何度も見ている間に、やっと方法が見付かるんだね…?
「そういうことだな、自分で一から始めるんなら」
 ナスカのヤツらはそうしたわけだが、幸いなことに、今はデータというヤツがある。
 データと呼ぶより、言い伝えとでも呼びたいんだがな、俺の好みとしては。
 この地球の上で生きた先人、その人たちが集めてくれた情報を生かしてやればいい。雲の予報をする名人は、代々、そうして来たもんだ。何世代もの積み重ねで。
 人間が地球しか知らなかった頃には、その予報しか無かった時代もあったしな?
 俺の場合も、そうした知識を幾つも貰って活かしてる。
 あの雲だったら、もう確実に降るだとか…。あの雲は雨が降る雲じゃないとか。



 雲の形だけで、幾らかは分かるものらしい。雷雲だったら、この形、といった具合に。
 それに風向きを加えてやれば、雷雲が来るかどうかが分かる。頭上の雲の流れを読んだら、風の方向が分かるから。
「雷雲ってヤツは基礎の基礎だな、形も覚えやすいだろう?」
 あれが雲の予報の入門編ってトコか、子供でも直ぐに覚えられるから。雷雲の形と、風向き。
 他に面白いヤツと言ったら、場所が変わると当たらなくなる予報だな。
 ナスカでも使われていた方法なんだが、雲が湧く方向や風向きなんかで決まるヤツ。あの方向に雲が湧いたら、必ず雨になるだとか…。この方向に雲が流れて行ったら、明日は晴れるとか。
 その手のヤツは、地形で変わってしまうんだ。
 同じような雲があったとしたって、場所が違えば、もうそのままでは当て嵌まらない。すっかり逆になるってこともあるほどだから。
 こっちは迂闊に使えないぞ、とハーレイは鳶色の瞳で見据える。「覚えたからって、何処ででも使えるモンじゃない」と。
「そうなんだ…。地形で変わってしまうっていうのは分かるけど…」
 山に囲まれた場所か、そうじゃないかでも違うんだろうし…。
 おんなじように山があっても、その山の向こうがどんな風かは、何処でも同じじゃないものね。
 山の向こうは海があったり、ずうっと山が続いていたり…、と考えてみる。地理の授業で習った地図を思い浮かべて、「ホントにいろんな場所があるよね」と。
「よしよし、分かってるじゃないか。変わっちまう理屈というヤツを」
 しかし、世の中、理屈だけでは済まないってな。
 この地形だからこうだろう、と決めつけるのは素人判断ってヤツで、愚の骨頂だ。何処にでも、色々な気象条件がある。…初めて其処に行ったヤツには、分からないことが山ほどな。
 だから、釣りなんかで知らない所へ出掛けた時には、だ…。
 自分では「こうだ」と思っていたって、それを使っちゃ駄目なんだ。
 思い込みで勝手に動いちまう前に、地元の人の考えを聞く。今日の天気はどうなりますか、と。
 そうすりゃ親切に教えて貰えて、天気予報よりも良く当たるってな。
 「今日は晴れだと言ってましたが、雨になりますよ」と言われたりもして。
 その手の情報、大切なんだぞ。自然が相手の釣りなんかだと。



 晴れていたって、急に荒れる時もあるもんだから、とハーレイは首を竦めてみせた。
 「そういった時に小さな船で沖に出てたら、大変だぞ?」と、恐ろしそうに。
「今の時代はサイオンがあるから、そう簡単に遭難したりはしないんだが…」
 それでも漂流しちまったりしたら、大勢の人に迷惑をかけてしまうしな?
 釣りに行った人が帰って来ない、と船を出したり、場合によっては空からも捜索するんだから。
 いくら思念波で連絡が取れても、船を見付けて連れ帰らないと駄目だろう?
 嵐で流された船の中だと、乗ってる人間もヘトヘトだ。食料や水も流されちまって、腹ペコってこともあるんだから。
 そうならないためにも、事前の準備が大切なのだ、と説くハーレイ。天気予報を確かめた上で、地元の人にも話を聞く。自分の考えだけで決めたりしないで、慎重に。
「ふうん…。雲の予報って、難しいんだね」
 ナスカでもやってた予報なんだし、簡単なのかと思ったけれど…。ホントにそれを使う時には、自分一人で決めてしまっちゃ駄目なんだ…。
「そうでもないぞ? いつも住んでる町の中なら、何も心配要らんしな」
 其処が自分の地元なんだし、他所から来た人に教える方の立場だろうが。こうなりますよ、と。
 他所の町でも、何度も通えば自然と覚える。
 ナスカでさえも、ちゃんと予報をしてたんだから。たった四年しか住めなかったのに。
 それと同じだ、そっちも場数が大切だ。色々な場所に出掛けて行っては、其処ならではの天気の動きを覚えることが。
 俺も親父に連れて行かれて、あちこち出掛けて、けっこう覚えた。…色々なことを。
 お蔭で、この町と隣町なら、ほぼ大丈夫だな、雲の予報は。
 滅多に外れん、とハーレイは自信たっぷりな様子。そして実際、ハーレイの予報は良く当たる。天気予報が「晴れです」と言っても、ハーレイが「降るぞ」と言った日は雨。
「ぼくも覚えたいな、雲の天気予報…」
 難しそうでも、覚えたら役に立ちそうだから。
 傘を持ってた方がいいのか、持って行かなくてもいいか、自分で分かれば素敵だもの。
 天気予報だけだと、外れちゃう時も多いから…。
 それに、「所によっては雨」って言うでしょ、あれがどうなるか分かるといいよね…。



 天気予報で、気になる言い回しの一つ。「所によっては雨」というもの。
 予報の対象区域は広いし、何処で降るのかは分からない。そういった時に雲の予報が出来たら、きっと便利に違いない。「傘が要るよ」とか、「要らないよね」と自分で判断出来たなら。
「ふうむ…。お前がやるなら、まずは頑張って観察からだな」
 どの雲が出たら、どういう天気になったのか。そいつを覚えろ、窓から雲を何度も眺めて。
 先人の知恵も大切なんだが、自分の力で身につけたことは忘れない。
 現にナスカじゃ、本当に一からやったんだから。…あそこで暮らしていた連中は。
 もっとも、ヤツらを船に連れて来た前のお前は、そんな予報に気付きもしなかったようだがな。
 アルテメシアじゃ、何度も外に出てたのに…。
 雲を見上げる機会ってヤツも、前のお前には、山ほどあった筈なんだが…。
 それでも気付かなかったのか、とハーレイが言うから、逆に質問してやった。まるで同じのを。
「じゃあ、ハーレイは気付いてたの?」
 前のハーレイは、その方法を知ってたって言うの、船の外には出ていなくても…?
 アタラクシアとかエネルゲイアの方に動いていく雲、何度もデータを見ている内に…?
「おいおいおい…。前のお前でも気付かないんだぞ、俺に分かると思うのか?」
 俺もナスカで目から鱗というヤツだ。「そんな方法があったのか」と。
 言われてみれば、確かに筋は通ってた。雲は大気の流れで動くし、それで予報は可能だからな。大気の流れや雲の性質を掴んでいたなら、答えを弾き出せるんだから。
 もっとも、そいつを知った後でも、やはりシャングリラで気象データを見ている方が…。
 俺の場合は主だったがな、というのが前のハーレイ。
 白いシャングリラを纏め上げていた、船の最高責任者。今は英雄のキャプテン・ハーレイ。
 船を預かるキャプテンなのだし、天気予報を勘だけで決めてはいけないから。
 赤いナスカでそれを覚えて、「こうなるだろう」と思っても。
 シャングリラのコンピューターが計算して出した天気予報を見て、「これは外れる」とナスカに送る前に手直ししたくても。
 キャプテンは、それをしてはいけない。
 たとえナスカの天気予報でも、自分一人の判断だけでは変えられない。「こうなるんだ」という答えを自分が持っていたって、それは雲の予報。ナスカで暮らす仲間に習った、雲の形を読み取る不思議な天気予報。…SD体制の時代には誰も、それを使いはしなかったから。



 前のハーレイは使わなかった、雲の天気予報。赤いナスカで聞いてはいても。
 「そっちの方が当たるようだ」と感じてはいても、白いシャングリラのデータが全て。其処から計算される答えが「本当のこと」で、赤いナスカの天気予報。
 「また外れた」と言われていても。ナスカの仲間は、雲の予報を使っていても。
「…今の俺なら、あの予報でも使えるんだがなあ…」
 こういう雲が出たからこうだ、と自信を持って言ってやれるし、それで問題ないんだが…。
「だよね、みんなの命は懸かってないもんね」
 学校で天気予報をしたって、誰の命も懸かってないから…。生徒も、それに先生たちだって。
「そうなんだよなあ、柔道部員のヤツらも別に困りはしないぞ。俺の予報が外れても」
 せいぜい、降らないと言っていた筈の雨に降られて濡れる程度で…。あいつらだったら、濡れるよりかはシールドだろうな、ちゃっかりと。…俺を信じてしまったお蔭で、傘が無いなら。
 そんな平和な時代なんだし、お前もゆっくり覚えていけ。雲の予報を。
 観察するのが一番だぞ、とハーレイがまた繰り返すから、「でも…」と恋人の瞳を見詰めた。
「雲の観察は頑張るけれども、ハーレイもぼくに教えてよ?」
 大勢の人が雲を見上げて、覚えた知識も大切なんでしょ。何世代もの経験ってヤツの積み重ね。
 ハーレイもそれを使ってるんだし、ぼくに教えてくれるよね?
 いつか一緒に出掛けられるようになったら、いろんな場所で。
「もちろんだ。…この町でも、隣町でもな」
 俺の師匠の、親父と一緒に教えてやるさ。あちこち一緒に出掛けて行っては、雲を指差して。
 「あの雲がこう流れているから、今日の天気は…」といった具合にな。
 楽しみに待っていることだ、と約束をして貰ったのだし、雲の予報を覚えたい。赤いナスカで、若い世代の仲間たちもしていた天気予報。
 それを地球の上でやってみる。…まずは窓から雲の観察、其処から始めて。
 天気予報も頼もしいけれど、自分で補足出来たら幸せ。
 いつかハーレイに教えて貰って、とても上手になれたらいい。
 ハーレイと二人で「降るんだよね?」と傘を持ったり、「大丈夫」と置いて出掛けたり。
 そういう予報が出来たらいい。
 雲の形を二人で見ながら、「明日は晴れるね」などと、雲が流れてゆく方向を眺めながら…。



            雲の天気予報・了


※雲を仰ぐ機会が無かった、アルテメシア時代のミュウたち。ナスカで出会った空の雲。
 若い世代は雲を眺めて、天気予報が出来たようです。今のブルーも、ハーレイに習える予定。
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