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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

初雪が降り、街はクリスマス前で浮かれています。今日は2学期の終業式。1学期の終業式の日は学校中が信楽焼の狸に埋め尽くされていましたけれど、今回は何もありません。1年A組の教室には会長さんが遊びに来ていました。机は無くて本人だけです。アルトちゃんとrちゃんに何か渡しているみたい。
「冬休みはもちろん家に帰るんだよね?…しばらく会えなくなってしまうし、これ、クリスマス・プレゼント。もしもサイズが合わなかったら直して貰うよ。ピッタリのを選んだつもりだけれど、きちんと測ったわけでもないし…教えて貰ってもいないし、ね」
プレゼントの箱はとても小さなものでした。ちゃんとリボンがかかっています。いったい何を贈ったのでしょう?アルトちゃんとrちゃんも箱を手にして怪訝そうな顔。
「大丈夫、怪しいモノじゃないから。クリスマスの朝に開けてみて?…気に入ってくれたら、次にお守りを使う時に着けててくれると嬉しいな。あ、左手じゃなくて右手に、ね。…左手の薬指はぼくの女神のものなんだ」
フィシスの場所だけは譲れなくって…と会長さんは微笑みました。左手に右手、薬指。おまけにサイズと揃ってくれば箱の中身は明白です。アルトちゃんとrちゃんは感激のあまり声も出ません。
「石はついてないし、銀だけど…アルトさんとrさんのイメージに合わせて選んできたんだよ。あ、学校ではアクセサリーは婚約指輪しか許されないし、うっかり着けてこないようにね。没収されたら大変だから」
やっぱり中身は指輪でした。アルトちゃんたち、クリスマスの朝までドキドキでしょうね。会長さんが「じゃあね」と姿を消すと、入れ替わりにグレイブ先生が…。
「諸君、おはよう。2学期も今日でおしまいだ。冬休みの宿題は何も無い。出してもやってこないに決まっているし、用意するだけ労力の無駄というものだからな」
やったぁ!どおりで信楽焼の狸みたいな変なモノが置かれてないわけです。あれは宿題免除の特典用に並べ立てられていたんですから。私たちはグレイブ先生の後に続いて終業式の会場へ行き、校長先生の退屈なお話を聞いて、教頭先生から冬休みに関する注意を聞いて…。
「諸君、冬休み中にはクリスマスと正月という行事がある。羽目を外して学校の恥になるようなことを起こさないよう、くれぐれも気をつけるように」
はーい、と元気のいい声が上がります。教頭先生は「うむ」と頷いて続けました。
「終業式はこれで終わりだが、生徒会から提案があって、今年は諸君にお歳暮を贈ることになった」
えっ、お歳暮?生徒会から提案ですって?…毎日のように影の生徒会室に通っていながら、何も聞いてはいませんでした。生徒会の実務は副会長のフィシスさんと書記のリオさんがやっているので、私たち7人グループは会議はおろか資料作りすら経験してはいないのです。私たちでもそうなのですから、他の生徒は大騒ぎ。教頭先生は咳払いをし、会場が静かになったところで。
「誤解がないよう説明しておく。お歳暮は生徒会が贈るのではなく、私たち教師一同からだ。そして全員が貰えるわけでもない。幸運な1名だけが対象なのだが、その1名が希望した場合、友人もその対象になる。ただし上限は十名まで。先生方からのお歳暮を手に入れたい、という物好きは手を上げるように」
歓声と共に全校生徒が挙手します。もちろん私も、その一人でした。

お歳暮の件の詳しい話は生徒会から聞いてくれ、と教頭先生がマイクを譲ったのは書記のリオさん。サボッてばかりの会長さんと違ってとても真面目な先輩です。
「教頭先生がおっしゃったとおり、今回、先生方からお歳暮を頂けることになりました。ただし1名限りになります。その方がお友だちとお歳暮を分かち合いたいと思った場合は、9人まで恩恵を蒙ることができますが…取り分は人数に応じて減りますよ。よく考えて下さいね」
そりゃそうだ、とあちこちで囁く生徒たち。うーん、私がゲットできたら、どうしましょう?やっぱり分けないといけないかなぁ…。私の他に9人ならばジョミー君たちにも行き渡りますし。
「では、お歳暮の入手方法を説明します。まず、協力者の紹介ですが…我がシャングリラ学園のマスコットである、そるじゃぁ・ぶるぅに盛大な拍手を!」
リオさんが右手を高く差し上げ、壇上に「そるじゃぁ・ぶるぅ」がトコトコと姿を現しました。紫色のマントを靡かせ、全校生徒の拍手を浴びる姿はいつにも増して得意そうです。
「かみお~ん♪みんな、よろしくね!」
ニコニコ笑って手を振っている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。協力って何をするのかな?
「ご存じの方は少ないでしょうが、そるじゃぁ・ぶるぅは卵に化けることができるのです」
リオさんが言うと「そるじゃぁ・ぶるぅ」がクルンと空中で一回転して消えました。後に残ったのは青い卵。それをリオさんが壇上で掲げ、「見えますか?」と声を張り上げます。
「これがぶるぅの卵です。皆さんにはこれを探して頂くことになります」
ボワンと青い卵が消え失せ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に戻りました。
「ぶるぅは今から校内の何処かに隠れるのですが、もちろん卵の形です。それを探しに行って下さい。首尾よく卵を見つけられた人は、本館前においでのブラウ先生とゼル先生に提出すればいいんです。お歳暮を貰う権利はぶるぅの卵を見つけた人に与えられます」
新入生歓迎会のエッグハントを思い出しました。あの時はあちこちにいろんな卵がありましたけど、ひょっとして今度もそうなのでしょうか。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の卵そっくりの偽物が隠されていたりして…。
「それでは今から、そるじゃぁ・ぶるぅに隠れに行って貰います。皆さんは百、数えて下さい」
「みんな、頑張って捜しに来てね!隠れたらヒントを教えるよ♪」
言うなり「そるじゃぁ・ぶるぅ」は会場を飛び出して行き、私たちは声を揃えてカウントダウン。百を数え終わったところでリオさんが大きな声で…。
「もういいか~い?」
『ま~だだよ~』
頭の中に響いた声は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のものでした。私やジョミー君たちは馴れていますが、他の生徒は驚いてキョロキョロしています。リオさんがすかさず解説しました。
「そるじゃぁ・ぶるぅの力です。離れた場所から皆さんの心に直接、呼びかけています。テレパシーという言葉はご存じですよね?シャングリラ学園では思念波と呼ばれているものです」
ザワザワという声が広がり、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議な力にみんなは興味津々ですが…リオさんはそれ以上のことは語らず、再度マイクで呼びかけます。
「もういいか~い?」
『もういいよ~♪』
子供らしい声がして、その後、すぐに。
『ヒントを言うからよく聞いてね。1回だけしか言わないよ。…いい?…白とクリスマス。愛情こめて捜して欲しいな。ぼく、楽しみに待ってるからね~』
それっきり声は聞こえなくなり、リオさんが壇上で微笑みました。
「聞こえましたか?もう1度、ぼくがヒントを言います。白とクリスマス、これだけです。頑張って探して下さいね。制限時間は正午まで。今から2時間以上ありますし、皆さんの健闘を祈ります」
さあ大変。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の卵は1個限りです。急がなくっちゃ!

終業式会場を出た全校生徒が学校中に散らばりました。先生方からのお歳暮とくれば内容も期待できそうです。ヒントは白とクリスマス。えっと…確か温室の噴水が白で、横にクリスマスツリーがあったような。大急ぎで行くと既に先客が何人かいて、噴水の中を覗いていました。
「ありそうか?」
「…いや、水盤の中には無さそうだ」
チームを組んでいるらしい男子生徒が話しています。クリスマスツリーの方もチームを組んだ女子や男子が飾りをチェックしていました。オーナメントに紛れていないか、枝の間に隠れてないか…と梯子まで持ち出す騒ぎです。単独行で卵探しは難しいかもしれません。私も誰かと組むべきかも…。スウェナちゃんのケータイにメールしてみると、すぐに「一緒に探そう」と返事が来ました。本館前で待ち合わせです。そこには机と椅子が置かれて、ブラウ先生とゼル先生が…。
「おや、もう見つけてきたのかい?」
ブラウ先生が声をかけたのは私ではなくて二人連れの男子。片方の子の手に青い卵が乗っかっています。そんなぁ…。お歳暮、アッサリ持ってかれちゃった…。ちょうど歩いてきたスウェナちゃんも青い卵に気付いてガッカリ。男の子たちが差し出す卵をブラウ先生が受け取りました。
「うん、上出来だ。…あんたたち、名前と学年は?」
二人は三年生でした。ゼル先生が紙に名前を記入し、ブラウ先生は卵を持って。
「いいねぇ、これは新鮮だ。殻がザラザラしてるじゃないか。ああ、でも…割ってみなけりゃ分からないかねぇ?」
「ふむ。器を持ってくるとしよう」
えっ。ゼル先生が本館に入り、ガラスの器を取ってきました。ブラウ先生が卵を机の角にコンコンぶつけています。だ、ダメぇっ!そ、その卵の中には「そるじゃぁ・ぶるぅ」が…!!
「やめてーっ!!」
叫んだ瞬間、クシャッと音がして卵にヒビが入りました。悲鳴を上げた私の前で卵が割れて、器の中にポテッと落下したものは…。
「ほら、ゼル…。黄身がこんなに盛り上がってる。ザラザラは絵の具のせいじゃなかったようだ」
「そのようじゃな。目玉焼きにしたら美味かろうて」
青い卵に入っていたのはニワトリが産んだ卵でした。男の子たちは真っ青になり、脱兎のごとく逃げてゆきます。ブラウ先生は私にウインクをしてみせました。
「ぶるぅを心配してくれたんだ?…大丈夫、ぶるぅの卵なら割りやしないさ。もっとも、割ろうったって机の角じゃ傷もつかないだろうけどね」
「…そういえば…」
呟いたのはスウェナちゃん。
「エッグハントで拾った時には石の卵だと思ってたわ。ズシリと重かったんだもの」
「なるほど、あんたが拾ったんだね」
ブラウ先生が「今度も頑張って探してごらん」とスウェナちゃんを励まし、私たちは二人で校内巡り開始です。途中でジョミー君やキース君が次々に合流してきて、いつの間にか7人グループに。
「結局、いつものメンバーだよな」
サム君が言い、マツカ君が。
「でも、見つかりませんよね…ぶるぅの卵。どこに隠れているんでしょう?」
「白とクリスマスが揃ってる場所は全部探した筈なんだがな」
キース君が溜息をつき、ジョミー君は疲れた声で。
「偽物を作るヤツらの気持ちが分かってきたよ。石みたいに重いって噂が広がる前はけっこういたよね…」
「今もやってる人がいますよ?」
シロエ君が声を潜めました。
「卵の中身を抜き取ってから、色々詰めて細工してます。…すぐにバレると思うんですけど」
赤くなったりしませんしね、と言われてエッグハントのことを思い出し、吹き出してしまう私たち。催涙スプレーとスタンガンで「そるじゃぁ・ぶるぅ」が化けた卵を攻撃しちゃったんでしたっけ。
「あの時の恨みを晴らそうとして、意地でも出てこないつもりなのかな?」
ジョミー君はそう言いますけれど、今頃になって復讐するとは思えません。私たちの目が節穴なのか、よほど上手に隠れたのか。…残り時間は三十分。お歳暮ゲットは無理でしょうか?

「ずいぶん苦労しているようだね」
いきなり声がして会長さんが私たちの後ろに立ちました。瞬間移動してきたのかも。
「ぶるぅの卵、どこにあるのか知りたいかい?」
「知ってるのか!?」
キース君が叫ぶと会長さんは涼しい顔で。
「ぶるぅの居場所も分からないんじゃ、保護者失格だと思うんだけど。…で、知りたい?」
「知りたい!!」
ジョミー君が即答しました。会長さんはニッコリ笑って「ついておいで」と促します。私たちが散々探した場所を次々に無視して横を通り過ぎ、辿り着いたのは本館の前。まさか今回も教頭先生を脅すのでは…。
「やらないよ。教頭室には用が無いんだ」
会長さんは先に立って本館に入り、1階中央の広いスペースで立ち止まりました。中央にクリスマスツリーがありますけれど、そこはとっくに大勢の生徒が探した後で今は閑散としています。私たちだって探しました。けれど卵は何処にも無くて…。
「ヒントは白とクリスマス。…愛情をこめて探さなければ、見つかるものも見つからないさ」
会長さんが指差したのはクリスマスツリーが植わっている大きな鉢の中でした。ツリーが映えるようにと敷き詰められた白い石が沢山入っています。それの何処に青い卵が…?
「ぶるぅの卵が青いだなんて、いったい誰が決め付けたんだい?確かに本当の色は青だけど、赤やピンクに色を変えるのを君たちも知っているだろう。…だからヒントは白だったんだよ」
「あっ、そうか!!」
ジョミー君が鉢に駆け寄り、白い石を選り分け始めました。出遅れたキース君や私たちが駆けつける前に歓声が上がり、ジョミー君の手に白から青へと変わりつつある卵形の石が…。
「やったぁ、お歳暮!…みんなにも分けてあげるね、せっかくだから」
意気揚々と本館を出て、ブラウ先生に卵を渡したジョミー君がゼル先生から貰ったものは。
「……お手伝い券……?」
「そうじゃ。この学園の教師を1人指名し、手伝いをさせるためのチケットじゃぞ。ただし間違いがあってはいかんから同性に限る。君の場合は男性教師というわけじゃ」
ゼル先生は咳払いをして言いました。
「冬休み中、仕事納めから正月三が日を除く全ての期間が対象でな…。指名された教師が丸々一日、勉学の手伝いをしてくれる。友達を呼んで勉強会をするのも大いに良かろう。専門外の科目であっても、他の教師と連絡を取ってとことんフォローするのが売りじゃ!」
ここに名前を、とブラウ先生がペンと書類を差し出します。ジョミー君の顔から血の気が失せて、お手伝い券が手から落ちました。宿題も無い冬休み中に何が悲しくて丸々一日、先生に付き添われて勉強しなくちゃならないんですか!ジョミー君が受けたショックは半端なものではないでしょう
「…い、いやだ…。こ、こんなチケット…」
欲しくないよ、と泣きそうな声のジョミー君。ゼル先生とブラウ先生が「やれやれ」と顔を見合わせています。そこへスッと会長さんが割り込んで…。
「ジョミーが要らないのなら、ぼくが貰うよ。…かまわないかい?」
そうだねぇ、とブラウ先生。
「無駄になるよりはいいかもね。でも、あんたじゃ意味がなさそうじゃないか。今更勉強しなくたって…」
「たまには真面目に勉強するのもいいか、と思ったんだ」
会長さんは書類にサインし、ジョミー君が落とした『お手伝い券』を拾ってポケットに入れました。そして机の上に置かれた青い卵を優しく撫でて。
「ぶるぅ、お疲れさま。もういいよ」
「わーい!!」
疲れちゃったぁ、と叫んで元に戻った「そるじゃぁ・ぶるぅ」が大きく伸びをしています。それに気付いて集まってきた生徒のみんなは、お歳暮の正体を知って仰天したり呆れたり。無駄な労力を使ってしまった、と嘆いていますが、自分がゲットせずに済んだ幸運を噛み締めているのは明らかでした。そんな代物をあえて貰おうという会長さんには恐れ入るしかありません。三百年以上も生きている人の考えることって、理解不能かも…。




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修学旅行で問題を起こした同級生の処分は無事に撤回されました。まりぃ先生のおかげです。会長さんが暗躍していたことは誰も知りませんし、「理事長の温情判決」ということになっているみたい。1年生のクラス全部に活気が戻ってしばらく経ったある朝のこと。A組の教室に机が増えて会長さんの登場です。そうか、期末試験が近いんだ…。グレイブ先生が出欠を取り、5日間に渡る試験日程が発表されて。
「諸君、今回も我がクラスは学年1位をキープするように。ブルーがいる以上、必ず1位を取ってくれたまえ」
言われなくても楽勝です。会長さんは試験前日まで保健室を活用しながらA組の教室に通ってきました。試験開始後はキース君を除くA組全員と、今回も泣きついてきたサム君に百点満点の回答をコッソリ意識下に流し込んでくれ、期末試験は無事終了です。あとは恒例の打ち上げで…。

「今度も焼肉パーティーかな?」
影の生徒会室でジョミー君が言いました。寒くなったので鍋物もいいね、という声も…。
「ちゃんこ鍋はどうだろう」
提案したのはキース君。するとすかさず「そるじゃぁ・ぶるぅ」が割り込みます。
「美味しいお店、知ってるよ!ちゃんこ鍋会席コースがあって、ちゃんこも種類が色々あるんだ♪」
味噌に醤油に水炊き風に…、と説明されて私たちはすっかり乗り気。ちゃんこ鍋会席コースは2人いれば鍋の種類を選ぶことができると聞けば、これは行くしかないでしょう。いろんな種類のちゃんこを頼んで味見し合うのも楽しそうです。全種類を制覇したらしい「そるじゃぁ・ぶるぅ」のオススメは秘伝の味噌味ちゃんこだとか。
「ねぇ、ブルー。味噌味ちゃんこ、美味しいよね」
「そうだね。ぼくはしばらく行っていないし、今日の打ち上げはちゃんこにしようか」
会長さんが頷いたことで、行き先はちゃんこ鍋のお店に決定です。「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋を出た私たちは校門ではなく本館の方へ向かいました。本館といえば教頭室。パーティーとくれば教頭室で資金調達してから出かけるもの、と当然のように思っているのは少し厚かましすぎるでしょうか?
「かまわないさ。ハーレイは今度もちゃんとおごってくれるよ」
自信たっぷりの会長さんが教頭室の扉を叩くと、聞きなれた渋い声が返ってきました。
「どうぞ」
「こんにちは、ハーレイ」
会長さんに続いてゾロゾロ入った私たちと「そるじゃぁ・ぶるぅ」に教頭先生は苦笑い。
「さっそく来たな。試験の打ち上げに行くんだろう。今日も焼肉パーティーか?」
「ううん、今度はちゃんこ鍋。ぶるぅとぼくのお気に入りの店なんだけど、ちゃんこ鍋も会席コースになると高いんだよね」
「ははは、それはそうだろう。ちゃんこ鍋だけにしておこうとは思わないのがお前らしいな」
そう言いながら教頭先生は引き出しを開け、熨斗袋を取り出して会長さんに手渡します。
「取っておきなさい。いつものことだから用意しておいた」
「ありがとう」
遠慮もせずに受け取った会長さんでしたが、表情がスッと険しくなって。熨斗袋の紅白の水引を外し、包みを開けてお金を数え始めました。1回、2回と数え直す間に顔はますます厳しくなります。なにか不都合でもあるのでしょうか?ちゃんこ鍋を食べに行くには充分な額に見えるのですが…。
「…少ない…」
会長さんの赤い瞳が教頭先生を睨み付けました。
「…中間試験の時より少ないように思うんだけど?今回は期末試験だよ。試験は2日も多かったんだ。その分、増やしてくれたというならともかく、減額って納得できないな」
「…そ…それは…」
お札を突きつけて問い質す会長さんに、教頭先生はしどろもどろです。
「…年末年始は何かと物入りなシーズンなんだ。お歳暮も贈らなければならんし、付き合いの方も色々と…」
「忘年会に新年会、ね。自分が飲みに行くお金はあっても、ぼくの為に使うお金は無いんだ?」
ボーナスも貰っているだろう、と会長さんは怒り出しました。
「前に婚約指輪を買ってくれるって言わなかったっけ。ぼくを手に入れるための出費は惜しまないくせに、手に入らないと分かったら財布の紐を締めにかかるだなんて最低だよ。惚れた相手にはとことん貢ぐのが男の甲斐性ってヤツじゃないのかい?」
「…ち、違う!そんなつもりでは…。本当に今は金が無いんだ。麻雀でかなり負けが込んだし…」
「分かった。じゃあ、ちょっとゼルの所に行ってくる」
「ゼル?」
「うん。…覚えてるよね、修学旅行最後の夜に何があったか」
会長さんが浮べた冷たい笑みは、私たちでさえ背筋が寒くなるものでした。
「ゼルが謝りに来ただろう?ぼくに騙されて誤解してた、って。…キースたちに責められたからゼルに話をしに行ったけど、あの場にいたのはハーレイとぼくと…寝ていたぶるぅ。真相は藪の中だよねぇ?…これからゼルに話してくるよ。ぼくが騙したことにしておけ、とハーレイに脅迫されたんだ、ってね」
踵を返そうとした会長さんを教頭先生が慌てて呼び止めます。
「そ、それだけはやめてくれ!…あの時でさえ胃痛になるほどネチネチと責め立てられたんだ。口封じをしていたなんて告げ口されたら、今度は何をされるか分からん」
そう言いながら財布を出して。
「…仕方ない…。これを渡したら、向こう1週間は買い置きのカップ麺しか食えないんだが、お前にやろう」
「悪いね、ハーレイ」
なけなしのお金を巻き上げた会長さんは満足そうに微笑みました。
「自分の食事はカップ麺でも、ぼくには美味しいものを沢山食べてほしいだろ?…このお金は有効に使ってあげるから安心して。…そうそう、シーフードヌードルは温めたミルクで作ると美味しいらしいよ。カレーヌードルはスプーン1杯のインスタントコーヒーでグッと旨みが増すんだってさ」
「…そうか…」
力なく頷く教頭先生。カップ麺しか無いというのは嘘じゃなかったみたいです。

それから会長さんはお金を纏めて熨斗袋に入れ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に持たせました。そして教頭先生の机に頬杖をつき、顔を見上げるようにして。
「ねぇ、ハーレイ。机と椅子と、どっちが好き?」
「…?」
首を傾げる教頭先生。私たちにも意味はサッパリ不明でした。
「机と椅子とじゃ、どっちが好きか…って聞いてるんだよ。この机と、今座っている椅子のこと」
「………。机…だろうか」
「どうして?」
「三百年以上使っているからな。たかが机だが愛着がある。椅子は何度も買い換えているし、机に比べれば馴染みが薄い」
重厚な机だと思ってましたが、アンティーク家具なら当然です。磨き込まれた木の机には思い出が詰まっているのでしょう。会長さんは頬杖をついたまま、更に重ねて。
「じゃあ、机とぼくならどっちが好き?」
「…………!」
「机?」
「…い、いや……」
お前に決まっているだろう、という簡単なセリフがなかなか言えず、やっとのことで口にした教頭先生はビッシリと汗をかいていました。
「机と椅子なら机が好きで、ぼくと机なら…ぼくなんだね?」
念押しをする会長さんに、頬を赤らめて頷く教頭先生。会長さんは「分かった」と言って身体を起こし、一歩後ろに退きます。
「大事なお金も貰ったことだし、お礼をしてから出かけるよ。…見てて」
青い光がパァッと会長さんの身体を包み、制服がフッと消え失せて…。
「「「!!!!」」」
教頭先生ばかりか私たちまで目が点です。会長さんが纏っていたのは、まりぃ先生が特注してきた白ぴちアンダーそのものでした。身体の線を惜しみなく晒し、足先も裸足。
「ふふ。どう?ハーレイ。…似合ってる?」
会長さんは教頭先生愛用の大きな机にスッと手をかけ、よじ登り…。声も出せない教頭先生の前で手を後ろにつき、足を崩して横座りに。白ぴちアンダーでやって見せるには艶かしすぎるポーズです。
「この格好が御礼だよ。ハーレイが好きな机とぼくの取り合わせ。…でも、ちょっと刺激が強すぎたかな?椅子って答えてたら、膝の上に座ってあげようと思ったんだけど」
ティッシュで鼻を押さえる教頭先生を眺めて会長さんが笑っています。
「そうだ、我慢大会しようか?…十五分間、そのまま椅子に座ってられたら…財布から出してくれたお金を全部返してあげてもいいよ。熨斗袋に入れてくれてた分は貰っておくけど。…いいかい、今から十五分だ。ぼくから視線をそらしたりしちゃダメだからね」
机に置かれた時計を指差し、会長さんは横座りから片膝を立てて見せました。あのぅ…横座りよりヤバイのでは?教頭先生をからかうように会長さんは机の上で身体を反らせたり、よじったり…と、まるで気まぐれな猫のよう。まりぃ先生の妄想イラストのモデルをした時に取らされていた妖しいポーズを次から次へと繰り出します。
「…どうしたのさ、ハーレイ?…そんな所を必死に押さえて?」
え。そんな所って…そういう所!?教頭先生の両手は机の陰で見えませんけど、多分、大事な所がとんでもないことになっているのでしょう。えっと、えっと…。あ、スウェナちゃんも真っ赤な顔。
「あと十分」
笑いを含んだ声で軽やかに告げ、また新しいポーズを決める会長さん。今度は後姿を強調ですか…。途端にガタン!と教頭先生が椅子から立って、物凄い勢いで奥の部屋へ駆け込んで行きました。
「あーあ…。たった6分でギブアップか」
呆れたように溜息をついた会長さんが机から降り、瞬時に制服に戻ります。しばらく待ってみましたけれど、教頭先生はそれっきり戻ってきませんでした。

期末試験の打ち上げパーティーは「そるじゃぁ・ぶるぅ」御推薦のちゃんこ鍋のお店です。個室でちゃんこ鍋会席コースを頼み、ちゃんこの種類はもちろん色々。ワイワイと盛り上がりながらも、教頭先生や白ぴちアンダーの話は誰もが避けていたのですが…。
「ねぇねぇ、ブルー」
とことん子供な「そるじゃぁ・ぶるぅ」が会長さんをつつきました。
「ハーレイ、いったいどうしちゃったの?…急に走って行っちゃうなんて」
「我慢大会って言っただろう?我慢できなくなったんだよ」
「…ふぅん…。何を?」
「ぼくと結婚したいって気持ち」
そうなんだ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は素直に納得しています。会長さんの今の言い回しといい、教頭室での出来事といい…やはり教頭先生は限界を突破しそうになって仮眠室へと飛び込んだ模様。その後、何がどうなったのかは考える気にもなれません。まったく、会長さんのやることときたら…。
「…あんた、あの服、どこから調達してきた?」
キース君が話題をそらすべく質問すると、会長さんはしごく真面目な顔で。
「まりぃ先生の家から借りた」
「借りた!?」
「ちょっとね、無断借用ってヤツ。ハーレイにも見せてあげたいじゃないか、ぼくに御執心なんだからさ」
ああぁ、また話題が教頭先生の方向へ…。
「いけないかい?…今日のスポンサーはハーレイだよ。スポンサーの話題は必須だろう」
本当か!?と私たちは心で叫びましたが、会長さんに口で勝てるわけありません。ダテに三百年以上も生きているわけじゃないんですから。
「本当はね、まりぃ先生が言ったんだ。あの服でぜひ教頭先生を誘惑してね、って」
「「「えぇぇっ!?」」」
まりぃ先生、とうとう妄想を現実のものにしたくなったようです。それって流石にマズイんじゃあ…。
「うん、まずいんじゃないかと思うよ。だってさ…ぼくとハーレイがそういう仲になってしまったら、まりぃ先生の立場が無いじゃないか」
「まりぃ先生の…立場?」
オウム返しに言うキース君。
「そう。まりぃ先生は特別室でぼくと遊ぶのが大好きだけど、ぼくの身体は1つだし…。ハーレイの仮眠室に誘われちゃったら、まりぃ先生の所に行くのはどう考えても無理だよねぇ?」
だからそう言ってあげたんだ、と会長さんは笑いました。
「まりぃ先生、青ざめちゃってさ。今の話は忘れなさいとか、あの服は処分しちゃおうかしら…とか、パニックに陥ってたけども…。でも、未練がましくクローゼットの奥にしまっているんだよ」
まりぃ先生、会長さんと過ごす甘い時間の方が趣味の世界より大切だったみたいです。教頭先生が会長さんを取ってしまったら、まりぃ先生の特別室は用済みになってしまうんですし。
「ぼくがあの服をハーレイの前で着たと知ったら、まりぃ先生、どうするだろうね?…まぁ、分からないように元の袋に戻しておいたし、絶対、気付かないだろうけれど」
でも念のために、と会長さん。
「ぶるぅ、夜中になったらさっきの服をもう一度コッソリ借りてくるから、洗って乾かしてくれるかな?…ぼくの痕跡は綺麗に消した方がいい」
「うん!任せといて。…その代わり、ブルーの分のデザートちょうだい♪」
「いいよ。…いや、それよりデザート追加で注文しちゃおう。ハーレイから沢山巻き上げたしね」
会長さんはメニューを眺め、私たちの分もデザートを追加注文しました。お腹いっぱいになるまで食べて楽しく騒いで、お支払いは教頭先生のお金。余った分は「そるじゃぁ・ぶるぅ」が食材を買う足しにするそうです。
「教頭先生に返してあげないの?…カップ麺だって言ってたのに」
「返さないよ」
ジョミー君の意見は会長さんにサクッと却下されました。
「ハーレイが金欠になった理由は麻雀で負けたからなんだ。なのに年末年始は物入りだ、なんて下手な言い訳しちゃってさ。…本当にぼくが大事だったら、もっと誠意を見せないと。ぼくを怒らせた以上、カップ麺でも仕方ないね」
プライドを傷つけられたんだ、と主張している会長さん。教頭先生の片想いを踏み躙りながら何処まで行くのか、私たちにも分かりません。…教頭先生、こんなにされても会長さんが好きなんですか…?




再び連れて行かれた、まりぃ先生のお絵描き部屋。昼食の前に会長さんが身に着けた夜着はセクシー系が大半でした。目のやり場に困るデザインのも色々あったんですけど「メインディッシュはこれから」ってことは、更にとんでもない夜着が登場するに違いありません。
「…あんた、本気で着るつもりなのか?」
キース君が声を潜めました。まりぃ先生は服を取りに出かけています。
「あんたの力なら、着たと思い込ませて逃げることくらい簡単だろう?…頼む、逃げると言ってくれ」
「そうだよ。その手が使えるんなら逃げちゃおうよ」
ぼくたちだって見ていたくないし、とジョミー君。会長さんの艶姿そのものは耐えられないわけでもなさそうですが、前に見せられた凄まじい絵を思い出してしまうみたいです。ごめんなさい…スウェナちゃんと私が書類袋を持ち込まなければ…。サム君とマツカ君も逃げる意見に賛成でした。シロエ君は会長さんの腕を掴んで直訴です。
「絶対、とんでもないことになりますよ。逃げましょう!」
「…うーん…。ぼくとしては着てみたいんだけど」
「「「なんで!?」」」
「だって。ちょっと面白そうだから」
会長さんが悪戯っ子のような顔で微笑んだのと、まりぃ先生が入ってきたのは同時でした。
「あらあら、ずいぶん楽しそうね。何かいいことあったのかしら?」
「みんな逃げたくなったんだってさ。それを説得してる最中」
「んまぁ…。いけない子たちだわね。ブルー君を見捨てて逃げ帰るつもり?」
万事休す。私たちはスゴスゴと部屋の隅っこに行き、諦め切って座りました。何も分かっていない「そるじゃぁ・ぶるぅ」だけが会長さんの隣ではしゃいでいます。
「ねぇねぇ、今度はどんな服かな?まりぃ先生、いっぱい服を持ってるんだね♪」
「ぶるぅも貸してもらうかい?」
「んーと…。サイズが合わないと思う」
1歳児の目には着せ替えごっこにしか見えないのでしょう。私たちもそれくらい広い心で受け入れられたら、何の問題もないんですけど。まりぃ先生はおかしそうに笑い、会長さんに青い袋を手渡しました。
「着てほしいのはこれなのよ。ウチのお店の商品じゃなくて、1点ものの特注品なの。着替え終わったら戻ってきてね、窓から逃げて行ったりせずに」
お願いを聞いてあげたでしょ、と言われた会長さんは着替えのために出てゆきました。待っている間、まりぃ先生は私たちに腐女子談義を熱く語って聞かせます。
「だから、教頭先生は攻めに決まっているというわけよ。…ブルー君にはシド先生なんかもお似合いかもね。もちろん、受けはブルー君。分かるかしら、めくるめく禁断の世界」
分かりたくなんかありません!という心の叫びを声にすることはできませんでした。まりぃ先生のご機嫌を損ねたら、せっかくの苦労が水の泡です。私たちのせいで停学や退学の危機に陥った同級生を救うためには、グッと堪えていなくては…。幸か不幸か、会長さんはモデル稼業を楽しんでいるようですし。
「着替え、できたよ」
扉が開いて会長さんが顔を覗かせました。
「驚いたな、サイズぴったりだ」
「「「!!???」」」
会長さんが纏っていたのは鼻血ものの夜着ではなくて、細い身体をピッタリと包み込む白い服。手足は殆ど覆われていて、手首から先と足の先しか見えません。これって、もしかしてレオタードですか!?

「うふ、学園祭の時の仮装を見ていて閃いたのよ。白ぴちアンダーってところかしら。サイズは健康診断の時に測ってるからピッタリフィットで当然でしょ?」
まりぃ先生は、会長さんと対の仮装をしていたキース君が後夜祭でドレスに着替えるところを目撃していたらしいのです。
「アンダーウェアがとても素敵だったの。身体の線が綺麗に出てて、ブルー君のアンダー姿もぜひ見たい!って思ったのに…機会がないまま終わっちゃって。あれこれ妄想している内に、この服を思いついたってわけ♪」
肌が白いから黒よりも白がエロくていいでしょ、と力説されても困ります。キース君は「セクハラ教師に身体の線をバッチリ見られた」ことと「妄想ウェアを生み出す引き金を引いてしまった」ことのダブルショックで打ちのめされている模様。白ぴちアンダーには上着の飾りとよく似た模様が付いていましたが、パッと見には「何も着ていない」ように見える色合いでした。目の毒というのはこのことかも。
「このこだわりが分かるかしら?…ブルー君の肌の色に合わせてあるのよ」
色の扱いなら任せてちょうだい、と、まりぃ先生は大得意。会長さんもノリノリです。
「どんなポーズがいいのかな?…いくらでもリクエストに応じるよ」
「嬉しいわぁ!センセ、感激して涙が出ちゃう。じゃあ、早速…」
白ぴちアンダーは下手な夜着より刺激的なシロモノでした。まりぃ先生がメインディッシュと呼んでいたのも納得です。会長さんは求められるままに様々なポーズを取っていますが、まりぃ先生の頭の中には会長さんと密着している教頭先生の姿がしっかり浮かんでいるのでしょう。腐女子談義を聞いてしまった今となっては、言われなくても容易に想像できてしまったり…。
「はい、お疲れ様」
まりぃ先生が鉛筆を置き、やっと終わったかと思ったら。
「最後の1枚を描きたいんだけど、少しハードになるのよね。…休憩を挟んだ方がいいかしら?」
「休憩無しで構わないよ。家に帰って休んだ方がリラックスできるし、早く終わりにしてほしいな」
なんと、まだもう1枚描くようです。しかもハードって、いったい何が?
「ブルー君がOKだったら問題ないわね。それじゃ一気に済ませちゃいましょ」
まりぃ先生は「小道具を取ってくるから」と部屋を出て行き、戻ってきた時には赤い紐を持っていました。赤い…紐…。まさか…まさか、あの紐は…。
「今度は誰かにお手伝いをして貰わなきゃ。そうねぇ…誰にしましょうか」
端から順に私たちを見つめる視線が何往復かして、ピタリと止まり。
「…キース君。あなたが一番いい感じだわ」
「えっ?」
「だ・か・ら。…ブルー君と絡んだら絵になりそうっていう意味よ。さっきの話、もう忘れちゃった?絵になる二人ってポイント高いの♪」
ひぇぇぇ!キース君は禁断の世界を夢見る腐女子好みのルックスだったみたいです。
「そんな隅っこに隠れてないで、こっちに出てきて紐を持って。さあ、早く」
グズグズしてると理事長の家に電話をかけてしまうわよ、と脅しをかけられ、前に進み出たキース君。深紅の紐を受け取らされたその後は…。
「えっと。…ブルー君を後ろ手に縛ってくれるかしら?」
「えぇっ!?」
「いいから、いいから。…ね?構わないでしょ、ブルー君」
「うん。別にキースを恨んだりしないし、縛っていいよ。手だけじゃなくて、もっと…だよね、まりぃ先生?」
「もっちろんよ♪」
まりぃ先生と会長さんは顔を見合わせてクスクス笑っていますけれども、白ぴちアンダーの会長さんを縛り上げるなんて悪い冗談としか思えません。キース君は目を白黒させて、震える声で。
「…無理です!お、俺には…そんな恐ろしいこと…」
「恐ろしいだなんて、酷いわ、酷いわ!まりぃ、傷ついちゃう。理事長に泣きついちゃおうかな~っと」
「キース、やるだけやってごらんよ。感情をコントロールするのは得意だろう?…任務だと思って縛ればいい」
会長さんに激励されて紐を握り直したキース君。やっとのことで会長さんを後ろ手に縛ったのですが、まりぃ先生は更に要求をエスカレートさせてゆきます。
「ああっ、ダメダメ、そうじゃなくて!…そっちから紐を後ろに回して…。ああぁ、全然ダメじゃない!」
会長さんの身体を縛り上げるよう指図されても、天才肌のキース君は紐に関しては不器用でした。ちっとも先に進まない状況の中、繰り出された次のコマンドは…。
「マツカ君、お手伝いしてあげて。あなた、手先が器用そうだし」
「ぼくですか!?」
「そうよ。…あなたとキース君の共同作業っていうのも、絵心をくすぐられるのよね」
マツカ君はズーンと落ち込み、キース君が呻きます。この二人も腐女子フィルターを通して見るとセットものとして成り立つのかも。
「ほらほら、急がないと理事長の家に電話するわよ」
非情な脅しにマツカ君がキース君を手伝い、まりぃ先生の好みどおりに会長さんを縛ろうと悪戦苦闘。よっぽど難しいのでしょうか、全然進展しないようです。
「まだかい?…だいぶ疲れてきたんだけれど」
後ろ手に縛られた会長さんが溜息をつき、キース君とマツカ君が平謝りに謝りながら紅紐と格闘しています。まりぃ先生は妥協を許さず、初志貫徹に燃えていました。もっと助っ人を出すように言われたらどうしましょう?…私たちが青ざめていると…。
「ぶるぅ」
会長さんが「そるじゃぁ・ぶるぅ」を呼び、何かコソコソと耳打ちを。
「かみお~ん!!!」
次の瞬間、雄叫びと共に紅紐が宙をクルクルと舞い、会長さんはアッという間に見事に縛り上げられたのでした。
「…どうかな?…まりぃ先生、イメージどおり…?」
白ぴちアンダーの上から紅紐で縛られ、床に横たわった会長さんの赤い瞳が揺れています。
「最高よぉ!ぶるぅちゃん、なんていい子なの!」
まりぃ先生は「そるじゃぁ・ぶるぅ」の頬にチュッとキスをし、大喜びでスケッチブックを広げました。会長さんの妖艶な姿を描き留めながら完璧に腐女子モードです。私たちの存在なんて、きっと石ころ以下だったでしょう。だって、西日が差し込む頃にハッと気付いて言ったんですもの。「あら、あなたたち、まだいたの」って。

紅紐から解放された会長さんは意外に元気そうでした。まりぃ先生の家を出た後、私たち全員を瞬間移動で自分の家へ連れて行ってくれ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の手作りお菓子を食べながら。
「うーん…。流石に肩が凝ったかな。ぶるぅ、ちょっとマッサージしてくれるかい?」
「うん!ぼく、きつく縛りすぎちゃったのかなぁ…」
「いいんだよ。まりぃ先生のイメージどおりにやってくれたんだから」
会長さんの説明によると「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、まりぃ先生の心を読んで紐の結び方を知ったのだとか。
「他にも色々な結び方が頭の中に入っていたよ。まりぃ先生、物知りなんだね」
マッサージしながらニコニコ笑う1歳児。無駄な知識を仕入れてしまって可哀相な気もしますけど…まりぃ先生の無理な注文をさっさと片付けるためには仕方なかったのかもしれません。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は、ふとマッサージの手を止めて…。
「ねぇ、ブルー。…まりぃ先生って強盗もするの?」
「「「強盗!?」」」
ぶっ飛んだ問いに私たちはビックリ仰天。あの家に凶器ってありましたっけ?
「えっと、えっとね…そうじゃなくて。人を縛る方法が役に立つ時ってあるのかな、って考えたけど…強盗の他にもあったっけ?…あ、泥棒も縛るかなぁ…」
まりぃ先生が強盗に泥棒。私たちの頭の中を駆け巡ったのは「目出し帽に出刃包丁」とか「頬かむりに唐草模様の風呂敷」という珍妙な格好で高笑いする姿でした。鮮明な映像をみんなで共有してしまったのは会長さんの力のせいでしょうか?床を叩いて笑い転げて、紅紐の記憶も消し飛びそう。
「まりぃ先生は強盗じゃないよ。泥棒でもないと思うけど…ちょっと特殊な人かもね」
会長さんはクスクスと笑い、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の頭を撫でました。
「でも、ちゃんと理事長に話をつけてくれたし、いい人なのは間違いないさ」
「…交換条件を出されたじゃないか」
不満そうな声のキース君。
「あんなことになるんだったら、ぶるぅの手形に頼った方が良かったような気がするぞ。なんで俺まで…」
「ご愁傷様。予想通りの人選だったし、その辺はちょっと残念かな」
「「「予想通り!?」」」
私たちは血相を変えて会長さんに詰め寄ります。予想通りってことは、ああなるってことを知っていて…?
「うん。まりぃ先生が白いアンダーを発注したのも、受け取ったのも知っていたんだ。ぼくに着せるチャンスが無いって嘆いてたのもね。…だから飛び込んでみたんだよ」
非日常な体験が出来て楽しかった、と会長さんは微笑みました。
「ぶるぅの手形は便利だけども、ぼくたちの出る幕がない。救出劇をやろうというなら、他人に頼らず自分たちの力でなんとかしたいと思わないかい?」
停学中や退学の危機の同級生を、身体を張って助けた会長さん。けれど本当にそうでしょうか。正攻法だとか言ってましたけど、まりぃ先生の家へ出かけて白ぴちアンダーを着てみたかっただけなのかも…。紅紐事件も予測していたみたいですから、実に迷惑な話です。人を巻き込むのが大好きな会長さんにまたやられた…、と溜息をつく私たち。今日の記憶はきっと消してはもらえないでしょうね。




修学旅行から帰った次の日はお休みでした。家でゴロゴロして過ごし、翌日登校してみると…。欠席の人が目立ちます。グレイブ先生は淡々と出欠を取り、ギロリと教室を見渡しました。
「…飲酒が6名、喫煙2名。不純異性交遊の疑いで調査中が1名。…実に立派な成績だよ、諸君。今日、正当な理由で欠席している者はない。全員、停学処分中だ」
えぇっ!?慌ててアルトちゃんとrちゃんの無事を確かめ、会長さんの机が無いことにホッとして。欠席者には女の子も1人含まれています。大人しそうな子でしたけれど、飲酒でしょうか、喫煙でしょうか?それともまさかの不純異性交遊とか…。
「停学期間は1週間だが、調査の結果次第で退学者が1人出ることになる。だらけきっている諸君にはいい見せしめだと思わないかね?…学生の本分を思い返して、勉学に打ち込んでくれたまえ」
グレイブ先生が出て行った後、クラス中は大騒ぎです。昼休みになる頃には他のクラスの情報も入り、かなりの数の生徒が停学中だと分かりました。退学かどうかを検討中という子も全部で8人。みんなで楽しく旅をしたのに、その結末がこんなだなんて…。

放課後、「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ行った私たちですが、顔色は冴えませんでした。柔道部の三人はまだ来てませんけど、お昼休みにシロエ君がこう言ったんです。
「停学になっている人の数、前代未聞だそうですよ。ぼくたちにも少し責任あるかも…」
なんで私たちに責任が…と思いましたが、シロエ君の答えは明快でした。
「ぼくたちが1年で卒業するから修学旅行に行ったんですよね?…普通は2年生で行くらしいんです。もう1年先の旅行だったら、みんな1年分の経験を余計に積んでいる訳ですし、それなりに落ち着いた行動をしたんじゃないかと思うんですけど」
ドジを踏まないよう上手く立ち回るとか、危険な橋を渡らないだけの思慮分別を身につけるとか…。要するに経験が絶対的に足りなかったのだ、というのがシロエ君の主張。シロエ君はキース君と張り合うために入学してきた1学年下の生徒なだけに、この意見には説得力がありすぎます。私たちは責任を感じてしまい、今に至るというわけで…。
「どうしたんだい、お通夜みたいな顔をして」
会長さんに声をかけられ、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に「どうしたの?」と顔を覗きこまれて、私たちはようやくポツリポツリと事情を話し始めました。
「…なるほどね…。それは確かに経験値ってヤツが足りないな」
クスッと笑った会長さん。
「飲酒するならホテルのバーが最高なんだよ。まさか行くとは思ってないからノーチェックだし、ホテルの方もお客は歓迎してくれるからね。飲み放題とはいかないけれど、けっこう飲める場所なんだ」
タバコを吸っても平気だし、と言われて軽い頭痛を覚えます。会長さんってどこまで悪に染まってるんだか…。
「ぼくはタバコはやらないよ?…お酒だって未成年とかそういうレベルじゃないだろう。三百歳を超えているのに、未成年扱いだなんて心外だな」
そうでした。会長さんは教頭先生に三百年以上も想いを寄せられているんでしたっけ。未成年だったのが何年前かは見当すらもつきません。…ん?教頭先生といえば、ゼル先生が『個人的にみっちり』焼きを入れると宣言してましたけど、大丈夫かな…。思い切って聞いてみよう、としていた所へキース君たちがやって来ました。今日の部活はずいぶん早く終わったんですね。
「…教頭先生が稽古の途中で倒れたんだ」
キース君が憮然とした顔で言い、会長さんを睨み付けます。
「ただの眩暈だって言ってたけども、あれは嘘だな。顔色も良くなかったし、心労からきた寝不足だろう。先輩たちが教頭室へ送って行ったら、倒れるように寝てしまったと言っていたぞ」
「…それで?どうしてぼくを睨むんだい?」
「あんたがやった悪戯のせいでゼル先生に焼きを入れられた結果じゃないかと思っている。柔道部の部活も中止になったし、この落とし前はつけて貰おうか」
キース君が凄み、シロエ君とマツカ君が頷いています。会長さんは溜息をつき、フッと姿を消したと思うと…。
「ただいま。…ゼルにはちゃんと本当のことを話してきたよ」
叱られたけどね、と苦笑しながら帰ってくるまでほんの十五分。ゼル先生は教頭先生に徹夜で嫌味とお説教をして派手に痛めつけていたらしいです。
「ハーレイにも謝っておけ、って言われたけれど、放っておこう。半分は自業自得だし…。停学中の子たちと同じで自己責任ってヤツだよね」
あ。論点がズレて忘れていましたけれど、停学とか退学寸前の人が大勢いるのは私たちのせいかもしれないのでした。なんとか処分を軽くしてあげる方法はないのでしょうか?このままでは気が咎めます。
「…羽目を外した連中を助けようっていうのかい?…確かに、修学旅行までにあと1年あったら、検挙される人数はグッと減っただろうけど…」
「やっぱり…」
シロエ君が項垂れました。
「なんとか助けてあげたいです。停学くらいならまだいいですけど、退学となると…」
「退学って、なぁに?」
無邪気な声がして「そるじゃぁ・ぶるぅ」が怪訝そうに首を傾げています。学校を辞めさせられることだ、と説明すると、飛び上がらんばかりに驚いて。
「ダメだよ、そんなの!…みんなで楽しく旅行したのに、学校を辞めさせられるなんてあんまりだよ。ぼく、行って手形を押してくる。ブルー、何に手形を押せばいいのか教えて!」
赤い手形はパーフェクト。確かに「そるじゃぁ・ぶるぅ」の手形さえあれば、どんな無理でも通るのです。処分の根拠になっている文書に赤い手形が押されるだけで、停学処分も退学の危機も無かったことになりそうでした。文書の在り処は会長さんならいとも簡単に分かるはず。頼もしいです、「そるじゃぁ・ぶるぅ」!
「ぶるぅの手形か…」
会長さんはやる気満々の「そるじゃぁ・ぶるぅ」を見つめ、それから少し考えて。
「…ぶるぅの手形も使えそうだけど、正攻法で行ってみようか。学校という組織を相手に渡り合うのも面白い」
「「「えっ?」」」
今度は私たちが驚く番でした。正攻法ってなんでしょう?
「圧力をかけてやるんだよ。生徒の運命を最終的に左右するのは校長先生のサインだけれど、サインができないようにするのさ。校長先生よりも偉い人って、誰だと思う?」
えーっと…もしかして理事長とか?入学式の来賓で一度見かけただけですけれど。
「そのとおり。理事長の意向は全てにおいて優先される。…まりぃ先生はその理事長の親戚なんだ」
「「「えぇぇっ!?」」」
「まりぃ先生に頼みに行こう。幸い、明日は土曜日で学校は休みだし…個人的にお邪魔してお願いするのがいいと思うよ。みんな時間は空いているかい?」
そういうわけで、明日はまりぃ先生を訪ねることになりました。まりぃ先生、凄いコネを持っているみたいですね。

翌日の十時に私たちが集合したのはアルテメシア公園に近いコンビニでした。「そるじゃぁ・ぶるぅ」も来ています。緑の多い住宅街を少し歩いて、会長さんが立ち止まったのは白い瀟洒な家の前。薔薇の生垣が素敵で見とれていると、『アトリエまりぃ』の小さなプレートと扉が薔薇に隠れてひっそりと…。
「あ、そっちはお店の入り口なんだ。先生の家の玄関はこっち」
会長さんが指差した先には別の扉があり、チャイムを押すと、まりぃ先生が…。
「いらっしゃぁ~い♪さあ、どうぞ中へ入って頂戴」
まりぃ先生は白衣を着ていないせいか、ドキドキしちゃう色っぽさ。お茶を御馳走になっている間、サム君がボーッと見とれています。私たちがケーキを食べ終えるのを待って、まりぃ先生が切り出しました。
「私にお願いって、何かしら?…わざわざ家まで来てくれるなんて、センセ、とっても嬉しいけれど♪」
「理事長に口利きをして欲しいんだ」
ズバリ言ったのは会長さん。
「修学旅行で羽目を外しすぎて停学中の子と、退学の危機に追い込まれてる子。…処分を撤回してくれるよう、理事長に頼んでくれないかな?…まりぃ先生しか頼れる人がいなくって…」
「あら、どんなことかと思ったら…。それくらいお安い御用だけれど、私にメリットはあるのかしら?」
無さそうだね、と答えた会長さんを、まりぃ先生はじっと眺めて。
「いいわよ、理事長に電話してあげる。…その代わり、絵のモデルになって欲しいのよね」
まりぃ先生の…絵…。スウェナちゃんと私は真っ青になり、ジョミー君たちも不安そうな顔。まりぃ先生の怪しい趣味の記憶が完全に消えたわけではないようでした。ですが、会長さんは「いいよ」とあっさり頷いてしまい、まりぃ先生はその場で理事長宅に電話をかけておねだりです。
「オッケーよん♪月曜日の朝一番で一切無かったことになるわ。処分中の子には日曜日の内に連絡が行くし、みんな月曜日からちゃんと登校できるわよ。よかったわね」
「「「ありがとうございます!!」」」
私たちが頭を下げると、まりぃ先生はウフンと笑って。
「お礼はブルー君に言うべきよ。…さ、約束どおりモデルをお願いね♪」
会長さんと私たちが案内されたのは奥まった部屋。スケッチブックや絵の具があちこちに広げられ、描きかけの絵が散らばっています。会長さんを描いたものや、会長さんと教頭先生の怪しげな絵が…。ジョミー君たちの顔が引き攣り、記憶が戻ってきたみたい。
「これ、なぁに?」
不思議そうに絵を眺め回す「そるじゃぁ・ぶるぅ」は1歳児だけあって、やっぱり分かっていませんでした。まぁ、その方がいいんですけど。「ブルーの裸がいっぱい…」と呟いているのを私たちは隅っこへ引っ張って行き、「邪魔にならないように見学しなきゃ」と納得させて一緒に床に座りました。距離を取った、と言うべきかも。
「うーん、警戒されちゃったわね」
まりぃ先生はクスッと笑い、会長さんを窓辺に座らせて鉛筆でスケッチを始めます。流石に本物の会長さんを目の前にして怪しい作業はできないのでしょう、まっとうな絵が描き上がりました。
「さあ、これからが本番よ。調子も出てきたし、ちょっと着替えてもらおうかしら」
扉の向こうに消えるまりぃ先生。どんな衣装を持ってくるのかドキドキですが、怪しくないならドンと来い、です。

「はぁ~い、お待たせ♪」
まりぃ先生が運んできたのは色とりどりの布の山でした。
「どお?うちのお店の人気商品に、入ったばかりの新作に…。どれも素敵だと思うんだけど」
ひえええ!次々に広げられてゆく様々な色とデザインの夜着。ベビードールにネグリジェに…。まりぃ先生は夜着のお店のオーナーだ、って会長さんが言っていたのを今の今まで忘れていました。生垣の陰にあった『アトリエまりぃ』というプレートはお店の案内だったんですね。…まともな服が出てくる筈がありません。気付かなかったとはなんて迂闊な…。会長さんは艶めかしい夜着を平気で手に取り、「どれにしようか」と微笑んでいます。
「そうねぇ…。これなんかどうかしら」
まりぃ先生が差し出すセクシーな夜着を服の上から当ててみたりして、会長さんは楽しそう。どんな神経をしてるんだか、と私たちは頭を抱えるばかりでしたが「そるじゃぁ・ぶるぅ」も平気みたい。
「ぼくが作った服に似てるね。まりぃ先生のお店のだよ、ってブルーが言ったのホントだったんだ♪」
私たちの頭の中に恐ろしい思い出が蘇りました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が縫った特大サイズのベビードールを着た教頭先生の姿です。青い清楚なベビードールと紅白縞のトランクス。深紅のセクシー・ベビードールと紅白縞のトランクス。…ついでに共布のセクシーショーツ。視覚の暴力としか思えなかったアレに比べたら、会長さんが怪しげな夜着を纏うくらいは問題ないかもしれません。
「じゃあ、最初はこれでいいのかな?」
会長さんはまりぃ先生に渡された水色のベビードールを持って別室に行き、すぐに着替えて戻ってきました。透ける布地の下は青月印の白黒縞…ではなく、どう見ても紐で結んだ申し訳程度の…。
「いいわぁ、イメージにピッタリよん♪」
まりぃ先生は大喜び。会長さんにポーズを取らせて鉛筆を走らせ、凄い速さで描き上げて…「お次はこれね」とレースがついたペパーミント・グリーンのゴージャスなネグリジェを渡しています。こんな調子でお召し替えが続き、ふと気がつくとお昼をとうに過ぎていました。
「あらら…。ごめんなさい!ついつい夢中になっちゃって」
まりぃ先生が宅配ピザを頼みに行っている間に、会長さんは元の服へと着替え完了。私たちは絵に占領された部屋を後にしてリビングでピザを御馳走になり、デザートも出てきたのですが。
「…あのね…」
食事が済んで少し休んだらモデルを再開して欲しい…と、まりぃ先生が言いました。
「どうしても着てほしい服があるのよ。ポーズも色々注文したいの。…構わないかしら?」
「…それって、断れないんだろうね?」
会長さんがクスッと笑うと、まりぃ先生は「物分りのいい子は大好きよ」とウインクして。
「実は、これからがメインディッシュなの。理事長に電話してあげたお礼、忘れちゃったとは言わないわよね」
まずはゆっくり休憩してね、とフレッシュジュースをグラスにたっぷりと注ぐ先生の目が妖しい光を帯びています。どうしても会長さんに着せたい服って、いったいどんな服なのでしょうか?…できれば見たくないんですけど、強制的に連行でしょうね…。




会長さんに見せられた夢の記憶が鮮やかに残る修学旅行2日目の朝。朝食を終えてホテルを出るなり、私たちは会長さんを責めたてようとしましたが…。
「ブルーが夜中にお風呂に行っちゃいけないの?」
無邪気に尋ねたのは「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
「露天風呂に入ってくるって言ってたよ。ハーレイが先に入っていたらしいけど」
そうだよね、と言われて会長さんは頷きました。
「ぶるぅは寝てると言ったじゃないか!嘘だったのか!?」
キース君の叫びに「そるじゃぁ・ぶるぅ」は「半分寝てた」と答えます。会長さんが露天風呂で教頭先生をからかったことは理解できていないようでした。
「ぼく、ハーレイってよく分からないや。ブルーと結婚したがってるくせに、なんでブルーから逃げるのかな?」
「…子供は分からなくてもいいと思うぞ…」
キース君が溜息をついて小さな頭をポンポンと叩き、露天風呂事件の苦情は言い出しにくい状況に。その間に会長さんが今日の予定を決めてしまって、トロッコ列車に乗ることになりました。景色のいい峡谷に沿って列車は川の上流へ。終点の街で名物のお蕎麦を食べ、小さなお城を見学してから帰りは船で川下りです。二十人も乗れば一杯になる小さな船で下っていくと、たまに急流があったりもして「そるじゃぁ・ぶるぅ」は大喜び。トロッコ列車も気に入ったみたいでしたし、今日のコースは「そるじゃぁ・ぶるぅ」に合わせたのかな?
「ねぇねぇ、また船に乗りたいな。今度はもっと大きなのがいい!」
ホテルに帰る途中で「そるじゃぁ・ぶるぅ」が言い出しました。もっと大きな船…ですか?私たちが悩んでいると、会長さんがいとも簡単に。
「じゃあ、明日は足を伸ばして湖の方に行ってみようか。隣の町に大きな湖があるんだよ。遊覧船に乗れば一日遊べる」
遊覧船のお昼はビュッフェ形式で食べ放題だよ、と聞けば反対する理由はありません。そういうわけで翌日の予定も決まり、ホテルに帰ってお風呂に夕食。夜はまたまたジョミー君たちの部屋に集まって騒ぎ、消灯時間になりました。

「…今夜は何もないといいわね」
「まさか二日続けて教頭先生をからかったりは…」
スウェナちゃんとベッドの中で話していると、突然ドアのチャイムが鳴って。わ、私たち、何かやったでしょうか?こんな時間にチャイムを押すのは先生以外にありません。呼び出されて廊下で1時間正座の刑が待っているとか?
「電気つけてないわよね」
「テレビもつけてないよねぇ…」
コソコソと話していると、またピンポーン、とチャイムの音。待たせると心象が悪くなるかも、と急いでドアを開けたのですが…。
「「アルトちゃん!?」」
「ごめん。中に入れて」
立っていたのはパジャマ姿のアルトちゃん。先生が来たら大変です。私たちは慌ててアルトちゃんを呼び込み、ドアをしっかり閉めました。
「どうしたの?こんな時間に。先生に見つかったら廊下で正座よ」
スウェナちゃんが言うとアルトちゃんは。
「絶対に見つからないから大丈夫、って…ぶるぅが…。ぶるぅに送ってもらったの」
「「ぶるぅ!?」」
「うん。…今、お部屋には生徒会長さんが…」
フットライトしか点けてないのでアルトちゃんの顔色は分かりませんが、もじもじしている様子と『生徒会長』という単語から大まかなことは理解できます。アルトちゃんはrちゃんと同室でした。
「まさか、お守り使ったの!?」
スウェナちゃんが叫ぶと、アルトちゃんは「ううん」と首を左右に振ります。
「晩御飯の前に会長さんが部屋に来て…今夜遊びに行っていいかな、って。もちろんです、ってrちゃんと返事をしたら、遊びに来るのは消灯時間の後だけど…って」
「じゃ、じゃあ…rちゃんは…」
アルトちゃんはコクンと頷き、お守りを初めて使ったのはrちゃんの方だったから、今日もrちゃんを優先したのだと言いました。優先ってことは、もしかして…次があったりするんですか!?
「生徒会長さん、明日の晩もお部屋に来るって言ったから…」
続きは聞き取れませんでしたけど、明日はアルトちゃんの番なのでしょう。スウェナちゃんと私は心の中で「会長さんの大嘘つき!」と叫んでいました。「ぶるぅがいるから今年は自粛」と言ってたくせに、「そるじゃぁ・ぶるぅ」に片棒担がせてしまってますよ…。でも、起こってしまったことは仕方ありません。アルトちゃんは私たちの部屋に泊まって、翌朝、迎えに来た「そるじゃぁ・ぶるぅ」に連れられて帰っていきました。
「みゆ、どう思う?」
「…うーん…。みんなには言えないよね」
こうして会長さんとrちゃんの逢瀬は闇から闇へ。私たちは涼しい顔の会長さんや「そるじゃぁ・ぶるぅ」と湖に行って大きな遊覧船に乗り、豪華なビュッフェと雄大な景色を楽しんで…3日目の夜も更けてゆきます。そして再び鳴らされるチャイム。今度はrちゃんでした。会長さん、全然自粛していませんし!…でも、まぁ…アルトちゃんとrちゃんなら元々お守りを貰っている仲なんだから、部屋番号を渡した人の所を渡り歩いているよりマシかも…。

rちゃんを泊めた夜が明けるとナスカ滞在最後の日です。明日には電車に乗って帰るわけですし、丸々一日遊んでいられるのも今日でおしまい。修学旅行のエキスパートの会長さんにナスカ名所を案内してもらって、お土産も色々買い込んで…。名物のトマト羊羹とかトマトゼリーは重すぎるので宅配便にしてしまいました。
「トマトパンも美味しかったよね」
「なら、山ほど背負って帰ってみるか?」
ジョミー君とキース君が話している横で、スウェナちゃんと私が眺めていたのは綺麗な青い色をしたスプーンとカップ。ナスカ特産の石を削って作るらしいのですが、ちょっと高すぎて手が出ません。でも…欲しいなぁ…。トマト羊羹とかを沢山買わなかったらスプーンくらいは買えたのに…。
「スプーンだったら買ってあげるよ」
会長さんの声で振り向くと、優しく微笑みかけられて。
「ぼくはお土産はフィシスの分しか買っていないし、お小遣いには余裕があるんだ。気に入ったデザインのを1本ずつ買ってあげるから、選ぶといい」
えぇっ!?本当にいいんですか?…「本当だよ」と言った会長さんは石と細工の目利きもしてくれ、スウェナちゃんと私はとても素敵な青いスプーンを手に入れました。その後で会長さんが青い石のペンダントを2つ、レジに持って行ってプレゼント用の包装を頼んでいたのは、見なかったことにしておきましょう。乙女はプレゼントというものに弱いんですし、私たちだって乙女ですもの。
「えへへ、いいもの貰っちゃった♪」
スウェナちゃんと私がスプーンの包みを自慢していると、男の子たちは不満そう。
「畜生、ホントにツボを心得てやがる」
サム君が言えば、マツカ君が。
「…みゆさんとスウェナさんまで毒牙にかけるつもりでしょうか…」
「あいつらも一応、女だからな」
そう言ったキース君の脇腹にスウェナちゃんの肘鉄が決まりました。
「ちょ、スウェナ…。やりすぎだって!」
「なによ、ジョミーだって似たようなこと考えたでしょ!!」
そりゃ、私たちなんて会長さんからもジョミー君たちからも女扱いされてませんが、プライドってヤツはあるんです。スウェナちゃんみたいにガツンと一発やればよかったかな…キース君を。こんな馬鹿騒ぎをしたりしながら、修学旅行4日目は和やかに暮れ、ホテルに帰ってお風呂に入り、夕食前にスウェナちゃんとロビーにいた時でした。
「あ、アルトちゃんとrちゃんだ」
今朝まで交代で私たちの部屋に泊まっていった二人が自販機のジュースを買いに来ています。声をかけようかな、と思っていたら現れたのは会長さん。手にはしっかり昼間に買ったペンダントの包みを持っていました。やっぱりアルトちゃんたちへのプレゼントだったみたいです。頬を染めている二人を眺めて私たちは額を押さえ、どちらからともなく「あと一晩」「あと一晩」と呪文のように唱えたのでした。

修学旅行最後の夜もジョミー君たちの部屋で騒いで、この4日間で遊び疲れた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は早々に丸まって沈没です。つついてみて爆睡中なのを確かめたキース君が会長さんをジロッと睨み、ドスの効いた声で言いました。
「初日の夜は派手にやってくれたが、正式な謝罪を聞いていないぞ。あんな夢まで見せやがって!」
「別にいいじゃないか。ハーレイから苦情は来てないよ?」
会長さんは悪びれもせず、「君たちも退屈してたじゃないか」と切り返します。確かに退屈してましたけど、あんなサプライズは誰も望んでいなかったわけで…。
「分かったよ。…じゃあ、この次は手加減するから大目に見といてくれないかな?」
「次なんぞ要らん!」
キース君が叫び、私たちは揃って頷きました。次が来るくらいなら謝罪なんかは要りません。
「そう?それじゃ、お言葉に甘えて謝罪は無しで」
旗色も悪いようだし退散するよ、と会長さんは「そるじゃぁ・ぶるぅ」を抱え上げて帰ってしまいました。男の子たちより2晩多く会長さんの被害を蒙っていた私たちですが、スプーンのプレゼントを貰ったおかげで今はすっかり許せる気持ち。消灯時間まで楽しく遊んで「おやすみなさい」と解散です。
「…さすがに今夜は誰も来ないわよね…」
「ぶるぅも寝てたし、大丈夫。どっちにしたって、あと一晩!」
「そうよね、今夜で終わりだものね」
できれば何事もありませんように、とお祈りしながらいつの間にか眠ってしまいました。どのくらい経った頃でしょうか。
『起きて。面白いものを見せるから』
頭の中に声が響いて、スウェナちゃんと私が目を覚ますと。
『みゆとスウェナはまたパジャマかな?…だったら浴衣を上に着て』
会長さんの声であることを認識するまで少し時間がかかりました。ぐっすり眠っていたんですから。…そのせいで私たちは警戒もせず言われるままに浴衣を着込み、青い光に包まれて…。
「ようこそ、ぼくとぶるぅの部屋へ」
えぇっ!?会長さんが浴衣姿で立っています。そして周りには寝ぼけ眼のジョミー君たちが同じように連れて来られていました。部屋はフットライトしか点いていなくて暗いのですが、目が馴れた頃にキース君が。
「こんな所に呼び出すなんて…今度は何を企んでいる?」
「ふふ。もうすぐハーレイが来るはずなんだ」
げげっ!教頭先生を部屋に呼んだだなんて、これはとんでもないことに…。
「大丈夫。心配しなくても、ぼくもみんなと一緒にシールドの中」
「なんだと!?」
かくれんぼでもする気なのか、とキース君が詰め寄った所でドアがカチャリと開きました。
「シッ!…来たよ」
慌てて息を潜める私たち。部屋の隅っこに固まっていると、開いたドアから人影がスルリと部屋に入って、扉が閉じて。よく見えませんが、本当に教頭先生でしょうか?
「うん。…そのまま静かにしてて」
会長さんの囁き声に重なるように聞こえてきたのは教頭先生の声でした。
「…ブルー…。私だ。寝たふりか?」

「「「!!!!!」」」
出た!と叫びそうになるのをグッと堪えた私たち。教頭先生は部屋を横切り、窓に近い方のベッドに歩み寄ります。
「手紙をくれたから来てみたが…。またからかわれているのだろうか。…それでも来ずにはいられなかった」
えっと。あのベッドに会長さんが眠っていると思い込んでいるのかな?
「ぶるぅを寝かせてあるんだよ。枕の上に髪だけ見えている筈だ」
「…悪辣だな…」
呆れた声のキース君。「そるじゃぁ・ぶるぅ」と会長さんの髪は見た目には同じ銀髪です。と、いうことは…教頭先生が忍んで来た今、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が危ないのでは!?
「心配いらない。ハーレイに渡した手紙にはこう書いておいたんだ。ぼくを口説き落とせたら、一晩一緒に過ごしてもいい…と。ぶるぅは君たちの部屋に泊らせるから二人きりだよ、って」
なんとも用意周到です。教頭先生はそうとも知らず、会長さんを口説き始めました。部屋が暗いせいで気恥ずかしさが減るのでしょうか、ヘタレだなんて思えません。熱っぽく三百年以上に渡る想いの丈をぶつけていますが、相手は爆睡モードの「そるじゃぁ・ぶるぅ」。馬の耳に念仏というヤツですけれど、いいか、本人が幸せならば。
「ブルー、これでもまだ足りないか?…どう言えばお前の心に私の気持ちが届くのだろうか…」
教頭先生が切々と訴えながら銀色の髪に手を伸ばします。私たちがアッと息を飲み、緊張が走った次の瞬間。
「ぐおーーーっっっ!!」
物凄いイビキと共に「そるじゃぁ・ぶるぅ」が寝返りを打ち、毛布をバサッと蹴飛ばしました。
「…うっ…」
教頭先生が替え玉と知ってのけぞったのと、部屋の明かりがパッと灯ったのは殆ど同時。
「残念でした。…でも、熱い想いはしっかり聞かせてもらったよ」
シールドから出たらしい会長さんが教頭先生に歩み寄ります。照明が点いたのは間違いなく会長さんの仕業でしょう。教頭先生は会長さんしか見てませんから、私たちはまだシールドの中で、見えていないということですね。
「せっかくだから、少しだけ…ぼくに触れさせてあげようか?ぶるぅの意識は落としてあるし、二人きりなのと変わらないよ」
会長さんは空いた方のベッドに腰掛け、浴衣の襟元をはだけました。
「…勇気があるなら触ってみる?…ぼくをその気にさせられたなら、寝てあげたっていいんだけども」
ひゃああ!私たちは真っ赤になってしまいましたが、教頭先生はそれ以上。ヘタレ度ゲージが一気に上がって十割増しくらいになっていそうです。誘うように胸元に手を差し入れる会長さんから目を離せないくせに、距離は少しも縮まらなくて…。
「ねぇ、ハーレイ…。さっき話してくれたのは嘘?…ぼくの家で抱き上げてくれたのも冗談だった?」
「……それは……」
「行動で示してくれなきゃ分からないよ?言葉だけでは伝わらない」
会長さんが浴衣を肩から少し滑らせ、真っ白な肌が覗きます。教頭先生の喉がゴクリと鳴って、ヘタレの虫をねじ伏せたのが分かりました。柔道十段の逞しい教頭先生の腕で押し倒されたら、いくら会長さんでも危ないかも…。でも、シールドの中の私たちでは会長さんを助けられません。誰か…誰か、助けに来てーっ!!

心の叫びが天に届いたか、扉がバンッ!と開きました。
「誰じゃ、電気を点けとるヤツは!!」
C組の担任のゼル先生が青筋を浮べて立っています。が、すかさず駆け出した会長さんがゼル先生にしがみつき、泣きそうな声で…。
「助けて!…ハーレイが…、ハーレイが無理矢理…」
「なんじゃと!?」
ゼル先生は扉を閉めて部屋に入ると、浴衣がはだけた会長さんを眺め、それから教頭先生をじっと眺めて。
「ハーレイ…いや、教頭!これはいったいどういうことじゃ!!」
「…い、いや……それは……」
「ブルーの寝込みを襲ったのか!?…修学旅行には何度も同行したが、教師が生徒を襲うなどという不祥事はこれが初めてじゃ!校長に報告しなくてはならん。…教頭といえども場合によっては…」
クビになるってことでしょうか?私たちはサーッと青ざめましたが、会長さんがゼル先生に訴えます。
「…待って…。校長先生には報告しないで。被害者は誰か、ってことになったら、ぼくも学校に居づらくなるし、誰にも言わずに黙っていて」
「…むむぅ……」
ゼル先生は腕組みをして難しい顔をしていましたが、やがて結論が出たらしく。
「分かった。…ブルーの言うとおり、表沙汰にしない方が良さそうじゃ。しかし、こやつは許し難い。日を改めて個人的にみっちり焼きを入れておいてやる。ブルー、怖かったろうが、ハーレイはお前の担任じゃ。変えるとなると先生方に事情を話さねばならん。…我慢してもらうしか無いが、困った時はわしが相談に乗ってやるから遠慮しないで来るんじゃぞ」
そしてゼル先生は教頭先生の言い訳も聞かず、腕を引っ張って廊下へと消えて行ったのでした。後に残された私たちは再び灯りが消された部屋でシールドを解かれ、会長さんの極悪ぶりをなじったものの。
「いいじゃないか。表沙汰にはならないんだから懲戒免職になることもないし、減棒にだってならないし。…知っているのはゼルだけっていうのが最高だよ。ゼルは頑固で口うるさいから、ハーレイ、さぞかし大変だろうねぇ」
それじゃおやすみ、と言われて青い光が閃くと…私たちは自分の部屋に戻っていました。日付はとっくに変わっています。うーん、今夜は目が冴えちゃって眠れないかも…。

心配したわりに最後の夜は熟睡できたようでした。朝食の後、ホテル近辺を散策してからバスに乗り込み、駅では練習しまくった整列乗車で電車に乗って…修学旅行もそろそろ終わり。また駅弁が配られてきて「そるじゃぁ・ぶるぅ」がはしゃいでいます。昨夜聞かされた教頭先生の熱い告白は全く知らずに寝てたんでしょうね。教頭先生の方はいつもどおりの落ち着きぶりで、ゼル先生も普段と変わりませんが…修学旅行が無事に終ったら何が起こるのか想像するのも怖いです。個人的にみっちりと…焼き。教頭先生、どうか御無事で…。




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