シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。
ソルジャーとエロドクターの模擬結婚式での大騒ぎから数日が経った放課後。いつものように「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ出掛けて行った私たちの頭の中はGWの予定で一杯でした。今年は5月の3日から6日まで4連休! とっても期待できそうです。
「シャングリラ号ってGWは必ず地球に戻って来るもんね」
今年はここに決まってる、とジョミー君。会長さんから聞いた話ではGWは纏まって休みが取れるので長老の先生方が揃って乗り込み、各セクションのチェックなどをなさるのが定例だとか。それに合わせて私たちも乗せて貰って宇宙で過ごすのが一昨年以来のお楽しみで…。
「4日間かあ…。絶対、乗せて貰わなくっちゃな」
穴場なんだし、とサム君も私たちも大乗り気。乗らずにどうする、と意気込みながら生徒会室の壁の紋章に触れ、壁をすり抜けて「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へと。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
「やあ。首を長くして待ってたんだよ」
はい、と会長さんがテーブルの上に薄い冊子を置きました。大判で、薄いと言ってもページ数はそこそこありそうです。雑誌ほどではないですけども。何だろう、と覗き込んだ私たちの目に飛び込んできた文字は…。
「「「月刊シャングリラ!?」」」
「うん。仲間たちのための広報誌さ。最新号が出来たんだ。ああ、ジョミーやキースの家のポストにも今日の間に届くと思うよ」
「えぇっ!?」
反応したのはジョミー君でした。顔色がたちまち青ざめ、冊子を指差し震える声で…。
「も、もしかしてスウェナの写真と記事が載ってるヤツ?」
「そうだけど? ほら、ここにドカンと」
いい出来だろう、と会長さんが広げたページには見開きで特集が組まれていました。『未来を拓くお坊さん』というタイトルで、元老寺での春のお彼岸でスウェナちゃんが写した法衣姿のジョミー君にサム君、キース君のカラー写真が何枚か。アドス和尚の写真入りコラムもくっついています。
「や、やばいよ、これ…。ぼくの家にも送ったって?」
ジョミー君が頭を抱え、会長さんが。
「当然だろう、取材に協力してくれたんだし…。この広報誌は一般配布はしないんだよ? 要職についている人とシャングリラ号のクルーたち、それとシャングリラ学園の先生たちが主な読者で」
他は仲間だけで運営される施設に配られるんだ、と会長さん。マザー農場なんかのことですね。じゃあ、取材に同行した私やシロエ君の家には来ないのかな?
「残念ながら、今回はサムとジョミーとキースの家と……記事を書いてくれたスウェナの家だけ。他のみんなは此処で読んでよ」
どうぞ、と会長さんが差し出す冊子。私たちはおやつよりも先に特集記事に飛び付きました。記事のメインは元老寺の副住職を目指すキース君の抱負と経歴。住職の資格を取ったのですから主役になって当然ですけど、会長さんの直弟子になったサム君とジョミー君の扱いも負けてはおらず…。
「へえ…。会長が伝説の高僧だって話、仲間内では全然隠してないんですね」
シロエ君が言う通り、記事には『銀青』という会長さんの法名と略歴も入っています。スウェナちゃんは会長さんに確認してから記事を書いたそうで、「璃慕恩院と恵須出井寺で修行」の件もキッチリと。
「仲間相手には隠すだけ無駄って話もあるしね。ハーレイたちとは出家前から知り合いなわけだし、ソルジャーの裏の顔はお坊さんっていうのも楽しいじゃないか。ただの生徒会長より意外性がある」
そういう問題なんでしょうか? それはともかく、サム君とジョミー君は会長さんの初の直弟子ということで記事の中でもクローズアップ。結びの一文は「三人の将来が大いに期待されるところです」と。
「酷いや、スウェナ!」
記事を読み終えたジョミー君が叫びました。
「これじゃ喜んでお坊さんをやってるみたいじゃないか!」
「あら、そうでしょ? キースはとても頑張ってるし、サムだってやる気満々じゃない」
間違ったことは書いていないわ、とスウェナちゃんは涼しい顔。
「ジョミーも会長さんの直弟子なのよ? そう聞けば誰でも期待しちゃうわ。実はジョミーは嫌がってます、なんて事実を書けると思う? それにね、この冊子はシャングリラ号のライブラリに保存されるのよ。将来、ジョミーが立派なお坊さんになったとするでしょ? その時にみっともない記事が出てきたら…」
とってもカッコ悪いんだから、と逆に注意するスウェナちゃん。
「そこまで見越して記事を書いたの。よく読んだ? 頑張っていますと書いただけよ。喜んでます、なんて表現、何処にも無いわ」
スウェナちゃんの指摘どおり、記事には当たり障りの無い文章が綴られていました。どう読み解くかは読者次第ということです。ジャーナリスト志望だったスウェナちゃんの全力投球の記事は天晴れな出来。会長さんも手放しで喜んでいて…。
「この記事は仲間にウケると思うよ。ソルジャーのぼくが高僧なのに、仲間たちの中にお坊さんはゼロだったんだ。いろんな専門職がいるというのに、お坊さんはどうも不人気で…。アドス和尚も住職だけど、シャングリラ・プロジェクトで仲間に加わったんじゃ重みがイマイチ」
最初からサイオンを持った人間が頑張ってなんぼ、と会長さんは拳を握って。
「その点、キースは完璧だ。サイオニック・ドリームを使って自慢の長髪を死守しているのもポイントが高い。既に住職の資格も取ったし、立派なお坊さんだよね。更にキースに続く形でぼくの直弟子が二人も誕生! これを切っ掛けにお坊さんを目指す仲間が増えるといいな」
大いに崇めて貰えるし…、と会長さんの夢は大きく果てしなく。ソルジャーとしての特別扱いは嫌いなくせに、緋の衣を見せびらかすのは大好きなのが会長さんです。遠い未来にシャングリラ号のクルーとは別に、会長さんを頂点とするお坊さんの団体が出現するかも? シャングリラ念仏青年団とか…。
その翌日、私たちは月刊シャングリラの最新号の威力を思い知ることとなりました。登校してきたジョミー君が思い切り黄昏れていたのです。
「うえ~…。やっぱり早起きは無理…」
「なんだ、どうしたんだ?」
キース君が尋ねると、ジョミー君は机に突っ伏したままで。
「ママに叩き起こされたんだよ、いつもより2時間以上も早く…。ね、眠い…」
「なんでそうなる?」
「ぼくの家からブルーの家までバスで出掛けて朝のお勤めをする気だったら早起きするよう練習しなきゃ、って。それで学校で居眠るようなら夜更かしせずに早めに寝なさいって言われたんだよ~…」
もう限界、という言葉を最後にジョミー君は眠ってしまい、私たちが顔を見合わせていると。
「よう、おはよう!」
片手を挙げて入って来たのはサム君でした。
「あれっ、ジョミーは寝てるのか? なんで?」
「そう言うお前は元気そうだな。今日も朝からお勤めか?」
キース君の問いに、サム君は。
「決まってるだろう、昨日の今日だぜ? こないだまでは父さんも母さんも「また行くのか?」って顔してたけど、今日は全然違ったなぁ…。「早く立派なお坊さんになって、ソルジャーに喜んで頂きなさい」ってさ」
頑張らなくちゃ、と決意を新たにしているサム君。起きた時間はジョミー君と変わらない筈ですけども、なんとも爽やかな笑顔です。そしてキース君は二人よりも更に早起きなのだそうで…。
「副住職をやるとなったら、親父の留守には一人で寺を取り仕切れるようにしておかないとな。とりあえず朝のお勤めの用意をするのは俺の役目ということになった。朝一番に起きて掃除からだ」
元老寺の掃除は宿坊に勤めている人がするそうですが、本堂の内陣……御本尊様がある大切な場所は住職自ら掃除するのがアドス和尚の方針だとか。そこでキース君は朝も早くから掃除を済ませて仏具を磨き、それから法衣に着替えてアドス和尚とお勤めを…。
「今日は親父も特に気合が入っていてな。広報誌で紹介されたからには無様な姿を見せてはならん、と久しぶりに朱扇で叩かれた」
「「「………」」」
朱扇というのはお坊さんが持つ骨の部分が朱塗りの扇。キース君が除夜の鐘撞きに備えてサム君とジョミー君を指導した時、その扇でジョミー君をビシバシ叩いていましたが……なんと今頃キース君自身が?
「坊主の世界は形にうるさい。立ち居振る舞い、経の読み方、鐘や木魚の叩き方…。何から何まで作法があるんだ。一通り覚えたつもりなんだが、何十年も続けてきている親父からすれば甘い部分があるんだろうさ」
当分は厳しくしごかれそうだ、と苦笑しているキース君。月刊シャングリラの影響はキース君にも及んでましたか…。この調子ではジョミー君も御両親に無理やり朝のお勤めへと送り出されてしまうかも?
「そうは言っても、今、爆睡だ。とても務まるとは思えんな」
お勤め中に居眠りするのが目に見えている、とキース君がジョミー君の頭をつつきましたが、起きる気配はありません。ジョミー君、そのまま気持ち良く眠り続けて…。
「諸君、おはよう」
ガラリと教室の扉が開いてグレイブ先生が現れました。流石のジョミー君もやっと目が覚め、出欠を取るグレイブ先生に眠そうな声で「は~い…」と返事し、再びコックリコックリと。朝のホームルームは恐らく何一つ聞いてはいなかったでしょう。そして。
「ジョミー・マーキス・シン!」
「は、はいっ!」
いきなり大声で名前を呼ばれてしまったジョミー君。慌てて立ち上がったはずみに椅子がガターン! と倒れていたり…。
「私は立てとは言っていないが? 随分気持ち良く寝ていたようだな」
「す、すみません……」
「まあいい。それと、サム・ヒューストン」
「はいっ!」
こちらはきちんと座ったままでサム君が返事。グレイブ先生は満足そうに頷いて。
「二人とも、放課後に進路指導室まで来るように。…いや、この時期に進路指導室というのは無いのだったな…。生活指導室でいいだろう。とにかく来なさい」
「「は、はい…?」」
サム君とジョミー君は怪訝そうな顔をしつつも従うより他にありません。何故に今頃、進路指導室? 二人とも私たちと同じく特別生ですから、針路なんてものはとっくの昔に決定している筈ですが? そう、特別生という立ち場そのものが私たちの選んだ道なのですし…。
一日中、眠そうにしていたジョミー君は、終礼が済むとサム君と一緒にグレイブ先生に連れてゆかれてしまいました。行き先は生活指導室。私たちが踏み込める場所ではないので、追跡しても無意味です。こういう時は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋に行くのがベストでしょう。会長さんならきっと色々知っている筈!
「かみお~ん♪ 授業、お疲れさま!」
「おや。いつもの顔が見えないようだね」
遅刻かな? と、会長さん。けれど唇には楽しそうな笑みが…。
「ぶるぅ、おやつを用意して。サムとジョミーは遅くなりそうだ」
「やっぱりそうなの? えとえと、生活指導室って…」
怖いんだよね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。授業とは無関係な子供ですけど、シャングリラ学園のマスコットだけに様々な施設の意味は漠然と分かっているようです。生活指導室が全校生徒に恐れられる場所だというのは間違いではなく…。
「はい、今日のおやつは紅茶のシフォンケーキだよ♪ でも、サムたちって…叱られちゃうの?」
ちょっと心配、と「そつじゃぁ・ぶるぅ」がケーキのお皿を配ってくれます。この様子では「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何も事情を知らないみたい。ジョミー君たち、大丈夫かな?
「さあね。…大丈夫なんだか、そうでないのか、叱られちゃうのか、違うのか…。やっぱり気になっちゃうのかな?」
クスッと笑う会長さんに、キース君が。
「当然だろうが! どうして生活指導室なんだ? なんで今頃、進路指導が…」
「ん? そりゃあ…。昨日からの流れで分からないかな?」
これ、と会長さんが取り出したものは例の月刊シャングリラでした。
「先生たちの家にも届く、と言っただろう? 本当は学校にも置いておきたいとこなんだけど、教職員はともかく生徒は一般人が殆どだしねえ…。どんなはずみで目に触れないとも限らない。だから先生の家には個別に配達。そして楽しく読まれているわけだけど…」
今回はちょっと問題が、と会長さん。月刊シャングリラは広報誌だけにシャングリラ号の航行スケジュールなど重要な情報も載っていますが、連載小説や仲間へのインタビューなども掲載される総合誌。ゼル先生がお料理コーナーを持っているのも分かりました。そういう気楽な読み物を先生方は毎月楽しみにしていて…。
「最初に気付いたのが誰だったのかは分からない。とにかく、キースたちの特集記事が注目を集めたことは確かだ。でもって、本格的にお坊さんの道を目指すんだったら全面的にサポートを、という話になった」
「それで進路指導室と言っていたのか!?」
キース君が素っ頓狂な声を上げ、シロエ君が。
「そ、それじゃ今頃、サム先輩とジョミー先輩は…」
「うん。進路指導の真っ最中ってところかな?」
こんな感じで、と会長さんがパチンと指を鳴らすと、壁の一部がスクリーンに。今日は会長さんが自らサイオンで中継をしてくれるつもりみたいです。画面の中には長老の先生方が勢揃い。そこにグレイブ先生が加わり、生活指導室の机を挟んでサム君とジョミー君が腰掛けていて…。
「で、この先はどうするのかね?」
ヒルマン先生が温厚な眼差しでジョミー君たちを見守っています。
「その昔、ブルーが修行に出掛けた時は学校は休学扱いだった。何年もかかる長い修行だ、それも当然の成り行きと言える。しかし、君たちの同級生のキースがやり遂げたように、大学に行って二足の草鞋という道もあるようだ。…まずは君たちの希望を聞こうか」
「き、希望って…」
ジョミー君は恐れおののき、サム君の方は。
「俺…いえ、ぼくは大体決めてます。ブルーの家で朝のお勤めをしながら作法なんかを教えて貰っているんですけど、お寺の師弟なら子供の頃から自然にやってることらしいので…。ブルーの指導で基本的なことを身につけてから本格的に勉強しようと思っています」
「ほほう…。では、大学に行くのだね」
「それが一番早そうですから。ただ、キースみたいに一般の講義も受けるコースにするのか、仏教だけを専門的に勉強するかは、まだ決めてなくて…」
どちらも一長一短なんです、とサム君は先生たちに逆に説明を始めました。
「一般コースだと卒業までに四年かかってしまうんです。キースみたいに頭が良ければスキップできますけど、そんな自信は無いですし…。専修コースは二年で卒業出来る代わりに全寮制で、休学しなくちゃいけません。それに住職の資格を貰える時には専修コースは格下なんです」
「「「格下…?」」」
よく分からない、といった面持ちの先生方。サム君はそこへ滔々と…。
「ブルーの話では勉強の内容が違うそうです。一般コースの方が広い範囲を学ぶことになるので、知識が多いと認定されます。ですから住職の資格を取りに道場へ行った場合、知識が多い一般コースの出身の方が一段階上の位を貰えることになってます」
「ほう…」
そうだったのか、とヒルマン先生。
「確かにそれは判断に苦しむ所だね。ただ住職の資格を取れればいいというなら専修コース、より上を目指すなら一般コースで四年間か…。よく考えてから決断するのが良さそうだ。具体的なビジョンもあるようだし…。他の先生方はどう思われますかな?」
「私たちの出番は無さそうですわね。いずれ大学に行こうという時に改めて相談してくれれば…」
エラ先生が微笑み、教頭先生が。
「そうだな、それが一番だ。休学するにせよ、二足の草鞋で頑張るにせよ、君の居場所はこの学校だし」
「うむ。特別生はわしらの可愛い生徒じゃしな」
頑張るのじゃぞ、とゼル先生。おおっ、進路指導はこれでサクッと終了ですか? やったねサム君、会長さんの家に通って仏の道に精進した甲斐がありましたよ~!
中継画面に向かってパチパチパチ…と拍手していた私たち。サム君たちは晴れて無罪放免、生活指導室にはオサラバなのかと思ったのですが。
「では、君も同じ方向で考えているというわけかね?」
ヒルマン先生がジョミー君の方に向き直りました。あちゃ~、すっかり忘れてましたよ、ジョミー君の存在を! 会長さんの家での朝のお勤めには出たことも無く、お坊さんにもなりたくないと叫び続ける問題児を…。案の定、ジョミー君は血相を変えて。
「ぼ、ぼくは何にも考えてません!」
「「「………」」」
たちまち先生方の表情が変わり、キース君が「馬鹿め…」と深い溜息。
「ジョミーのヤツ…。嘘も方便と言うだろうが! サムとおんなじ考えです、と答えておけば済んだのに」
「無理、無理! ジョミーはサムの話が全く分かってないからね」
会長さんが可笑しそうに笑っています。
「ああ言っておけば何年間でも長考の構えで逃げられるのに…。普段から関心を持ってないから墓穴を掘る。さて、ヒルマンたちはどう出るかな?」
生活指導室ではヒルマン先生が腕組みをして難しい顔。グレイブ先生はジョミー君の前の机を神経質そうに指でコツコツ叩きながら。
「君はふざけているのかね? 今の発言が皆に知れたらソルジャーの顔に泥を塗ることになるのだぞ? ブルーの顔なら泥を塗っても問題は無いが、ソルジャーとなれば大問題だ」
「…グレイブ。ブルーの顔ならいいと言うのか?」
それも失礼な話だが、と突っ込んだのは教頭先生。けれどグレイブ先生は微塵もひるまず。
「ソルジャーとブルーは別物です! やっていることは根本的に同じだという感はありますが、皆が従うのはソルジャーですから」
「ふむ。確かにグレイブの言うとおりじゃな」
ソルジャーは別格、とゼル先生がグレイブ先生の肩を持ち、他の先生方も続きました。会長さんの日頃の行いの悪さがこういう結果を招くのでしょう。とはいえ、それでジョミー君から矛先が逸れる筈もなく…。
「つまり、だ。…君はまだまだ覚悟が足りないというわけだね」
まるで自覚が出来ていない、とヒルマン先生が呆れたように。
「同じソルジャーの直弟子でもサムとは随分違うようだ。さて、君の指導をどうしたものか…。ソルジャーの直弟子という肩書きがついて回る以上、せめてそういう発言だけでも謹んで貰わねばならないのだが…」
「いっそ大学に進学させては?」
口を開いたのはエラ先生。
「今からきちんと手順を踏めば推薦入学が可能です。そもそも、今日はそういう相談で二人を呼んだわけですし…」
「おお、そうじゃ。大学に行けば周りは坊主の卵じゃからのう、自覚も出来ようというものじゃて」
大賛成じゃ、とゼル先生が自慢の髭を引っ張り、教頭先生が。
「…強引な気がしないでもないが、やはり直弟子の自覚は持って貰わないと…。近い内に御両親も交えて相談しよう。グレイブ、個人懇談の機会を設けてジョミーの御両親を呼び出すように」
「分かりました。早急に手配いたします」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
それは困る、と真っ青な顔のジョミー君。そりゃそうでしょう、このまま行けば坊主街道一直線。来年の春にはキース君が卒業してきたあの大学へ推薦入学させられちゃって、お念仏の日々が始まるのです。まさに大ピンチですが、鬼の進路指導陣から逃げを打つには圧倒的に力不足。
「……終わったな、ジョミー……」
気の毒に、とキース君が呟いた時。
「あれっ、会長!?」
シロエ君がキョロキョロと周囲を見回し、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「後はよろしく、って言われたよ? ぼくの力で中継してるの!」
会長さんは姿が見えなくなっていました。いったい何処へ行っちゃったのかな…って、わわっ!? 生活指導室の扉がカチャリと開いて、顔を覗かせたのは会長さんです。
「やあ。…なんだか揉めてるみたいだけれど、ジョミーの自覚が足りていないのは、ぼくのせいでもあるんだよね」
「「「ソ、ソルジャー!?」」」
「ブルーでいいよ、学校だから。それで、ジョミーのことなんだけど…。何年もかけて指導してきて、この程度っていうのが現実。ジョミーを無理やり大学に行かせるとなると、ぼくの力量不足を大々的に宣伝することになっちゃうわけ。…まずくないかな?」
「……まずいですな……」
非常にマズイ、とヒルマン先生。会長さんは「そうだろう?」と困った顔をしてみせて。
「とりあえずジョミーの個性は非常に強くて反発心も旺盛だ、っていう方向でイメージ作りをするしかないかな。それを立派に仏の道へと導いていけば、ぼくの株だって上がるわけだし」
「なるほど、逆の発想ですか。…ジョミーが見事な仏弟子になれば、ソルジャーの徳の高さを広められるというもので」
我々も気長に行きますか、とヒルマン先生が応じ、他の先生方も賛同しました。こうしてジョミー君は進路指導から解放されて、サム君や会長さんと一緒に「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へと…。
「あーあ、酷い目に遭っちゃった…」
私たちと合流したジョミー君の第一声はこれでした。テーブルの上には月刊シャングリラが乗っかっています。ジョミー君はそれを恨めしそうに眺めながら。
「…スウェナがあんな記事を書くから、進路指導までされちゃったよ。もうちょっとで大学生にされちゃう所だったんだから!」
「それはジョミーが悪いのよ。サムは何にも言われてないわよ? 中継でちゃんと見てたんだから」
ねえ? と同意を求められ、揃って頷く私たち。会長さんがクスクスクス…と笑っています。
「ジョミーも真面目に勉強してれば、サムと同じでいいと答えるのが逃げ道にもなるって分かったのにねえ…。とにかく助けてあげたんだから、今後はもう少し心構えと自覚を持って」
「無理だってば! 今日もママに早起きさせられたんだけど、朝御飯を何処に食べたか覚えてないし!」
多分寝ながら食べたんだ、とジョミー君は膨れっ面。
「朝のお勤めなんて絶対無理! ぼく、お坊さんには向いてないんだ」
きっと体質の問題だよね、と屁理屈をこねるジョミー君。早起きはお坊さんに限ったものではないんじゃないかと思いますけど、恐らく言うだけ無駄でしょう。会長さんも苦笑してますし…。
「ジョミーをお坊さんに仕立て上げるのは大変そうだ。だけどその分、遣り甲斐もあるよね。ヒルマンたちも言ってたみたいに気長に行くさ」
急いては事を仕損じる、と月刊シャングリラの特集ページを開いて見せる会長さん。
「ほらね、『未来を拓くお坊さん』って書いてある。ジョミーの未来を開拓するにはサムとキースも役に立つかも…。まずは結束を高めなくっちゃ」
「「「結束?」」」
なんじゃそりゃ、と首を傾げる私たち。みんなでジョミー君の包囲網とか? いえ、サム君とキース君とか言ってますから二人でせっせと追い込み漁?
「結束と言うか…。団結力と言うべきか。みんな、今年のGWは暇かな? 良ければシャングリラ号に来ないかい? 5月の3日から6日までの予定なんだけど…」
おおっ、渡りに船とはこのことでしょうか? これが言いたくて「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋を目指して出発してから紆余曲折。月刊シャングリラに行く手を阻まれてしまいましたが、回り回って目的地に辿り着けそうですよ~!
翌日の朝、ソルジャーは会長さんの私服を借りて上機嫌で出掛けてゆきました。ガーリックライスの強烈な匂いはどうなったかって? 私たちも同じものを食べているだけにサッパリ分かりませんけれど……多分サイオンで隠していると思います。だって行き先は…。
「あーあ、本気で行っちゃったよ…」
ノルディの家に、と会長さん。ソルジャーはエロドクターの家に瞬間移動し、そこから二人でホテル・アルテメシアへ行くのです。ウェディングドレスをオーダーしに。
「朝御飯は要らないって言うから何かと思えば、ノルディと一緒に食べるだなんて…」
「ぼくの御飯より美味しいのかな? ちょっと自信が無くなっちゃった」
せっかく用意をしてたのに…、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は残念そう。ソルジャーは昨夜ゲストルームに引っ込んだ後でエロドクターと色々打ち合わせをしたらしく、朝食のお誘いもその時に受けたと思われます。もしかしてエロドクターの手料理とか…?
「それは無いね」
誰の思考が零れていたのか、会長さんがアッサリと。
「ノルディも料理は出来るんだけど、専属の料理人がいる。ブルーを朝食に誘ったからには凝ったメニューを作らせてそうだ。…でも、ぶるぅの腕も負けてはいないよ。プロ並みだから」
ね、ぶるぅ? と訊かれた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は「えっと…」と口籠って。
「ぼく、お料理は習ってないよ? ゼルみたいに修行もしてないし」
「だけどホントにプロ顔負けだろ? レシピが無くても食べたら再現できちゃうしね」
「ブルーもでしょ? これってサイオンのお蔭だよね!」
元気一杯な「そるじゃぁ・ぶるぅ」の言葉に私たちはちょっとビックリ。サイオンで様々な知識を伝達できるのは知ってましたが、料理もその中に含まれますか! だったら私たちも努力さえすれば超一流の料理人になれるとか…?
「無理、無理。そんなに甘くは無いよ」
サクッと夢をブチ壊してくれる会長さん。
「ある程度のセンスと手先の器用さが必要なんだ。このメンバーの中で料理人になれそうなのは…キースかな? 基本をキッチリ押さえそうだし、応用も上手く出来そうだしね」
「それってズルイ…」
お坊さんなのに、とジョミー君が口を尖らせました。
「キースばっかりプロになれるって差別だよ! お坊さんも料理人もって!」
「お坊さんは君も努力すればプロだ。…もう忘れた?」
本山に届け出済みなんだよ、と言われたジョミー君は大慌てで前言撤回です。お坊さんのプロにされたのでは悲しいなんてものではなくて…。こんな調子で朝食が終わり、「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお皿を洗って片付けました。さて、この後はどうすれば? ガーリックライスの匂いは私たちにもついてますし…。
「ドリームワールドならガーリックの匂いがしてても平気だよね?」
遊びに行こうよ、と提案したのはジョミー君です。しかし…。
「ダメダメ、今日はブルーを監視しないと」
何をやらかすか分からないから、と会長さんがエロドクターの家の方角を眺めました。
「あっちも食べ終えたみたいだね。ノルディの車で出掛けるようだ」
「「「………」」」
ついに模擬結婚式の準備が本格的に始動ですか! あのソルジャーがドレスのオーダー…。それもエロドクターとの挙式もどきに使うドレスとは、なんと言ったらいいのやら…。
リビングに陣取った私たちは飲み物やお菓子を手にして会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」の解説に聞き入ることになりました。ソルジャーは覗き見をシャットアウトする気は無いようですが、中継は不可らしいのです。
「せっかくドレスを誂えるんだし、見てのお楽しみにしたいんだってさ。ぶるぅとぼくにはバレバレだけど、他のゲストにはサプライズってことで」
「ドレスなんてどれも同じじゃないのか?」
キース君の発言に、会長さんは。
「分かってないねえ…。それじゃ女性にモテないよ。ブルーの場合は女性じゃないけど、この際、心得ておくといい。袖のデザインがちょっと違うとか、襟が違うとか、細かい所にこだわりたいのが女心さ。同じデザインでも色が違えば迷っちゃうのも女性だし!」
ねえ? と同意を求められたスウェナちゃんと私は頷きました。色違いで色々欲しくなるのはよくあることです。流石はシャングリラ・ジゴロ・ブルーと呼ばれる会長さん! 女心をよく御存知で…。
「フィシスの買い物に付き合ってると時間がかかるよ? そこで「迷うなら全部買っちゃえば?」なんて気軽に言うのもまた無粋! どれも似合うっていう時くらいしか「全部買えば?」はNGなんだ」
「なんだか知らんが難しいんだな」
俺にはサッパリ理解できん、とキース君が呻いています。その間にもソルジャーはドレスをあれこれ選び出しているらしく…。
「だいたい候補が決まったのかな? これから試着するようだ」
「試着って? オーダーするんじゃなかったの?」
ジョミー君の疑問は尤もでした。オーダーするのに何故に試着を?
「普段の服とは違うからだよ。自分に似合いそうなデザインとかを把握しないとオーダーはちょっと…。ノルディがあれこれ助言していたみたいだけれど」
エロドクターは自分の好みを優先しつつも何着か選んだみたいです。ソルジャー自身も何着か選び、それから順に試着してみて写真を撮って…。
「うーん…。やっぱり可愛いドレスはイマイチだねえ」
「フリルとリボンは難しそうだね」
覗き見している会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は楽しそう。可愛いドレスとやらはエロドクターが選んだ中にあったのだとか。ソルジャーはそれを却下し、シンプルなドレスを贅沢な生地で仕立てる方向でお次はデザイナーさんと相談を。オーダーってけっこう大変ですねえ…。
「日曜日に間に合うように仕上げるとなると急がないとね。普通はもうちょっと時間に余裕があるものだけど」
「しかし1週間で出来るというのが凄すぎるな」
キース君が感心しています。お坊さんの袈裟には出来上がるまでに数ヶ月かかるものがある、と聞かされて驚きましたけれども、会長さんによればそれが常識。
「最高級の袈裟は注文が入ってから布を織るんだ。もう完全にオーダーメイド! その点、ドレスは生地の在庫さえあれば縫うだけだし」
早いものだよ、とウインクした会長さんは引き続きソルジャーを監視と称して見物中。ようやくデザインが決まって採寸を済ませ、ソルジャーとエロドクターはメインダイニングへ昼食に…。つまり昼過ぎまでドレスにかかっていたわけです。私たちもお腹が空いてきました。
「かみお~ん♪ お昼にしようよ!」
すぐ作るね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお得意のオムライスを手早く仕上げ、スープとサラダも添えてテーブルに。ソルジャーとエロドクターは豪華なコース料理を時間をかけて優雅に楽しみ、それが済んだら…。
「式場と宴会場を下見してからハーレイの家に行くみたいだよ?」
「「「!!!」」」
会長さんに聞くまで教頭先生のことは綺麗サッパリ忘れていました。花嫁の父役を頼みに行くんでしたっけ。ついでに会長さんも同じ依頼をしに行く予定でしたっけ…。教頭先生、引き受けるかな?
式場などのチェックを終えたソルジャーはエロドクターの車で教頭先生の家へ。予期せぬ訪問者に仰天した教頭先生、挙式と聞いて倒れそうになったらしいのですが…。
「やっぱり真面目に引き受けたか…」
そうだろうと思った、と会長さんがブツブツと。今度も中継はして貰えなくて、私たちは話を聞くだけ。教頭先生は結婚式が本物ではないのを確認してから花嫁の父役を引き受けたそうで。
「形だけでも挙式をすればノルディがブルーに目移りするかも、と思ったらしいよ。ブルーはノルディの家でお茶をしてから帰るようだし、ぼくたちはその後でハーレイの家に突入だね」
「俺たちも行くのか…」
ゲンナリしているキース君に、会長さんは。
「そもそも君が言ったんじゃないか。ハーレイがその場にいると心強い…って。ブルーが話をつけただけでは心許ない。第一、ブルーは招待客の話をしなかったし!」
「そうなのか?」
「うん。せっかくだから披露宴もすることにした、と言っただけさ。ハーレイは単純だから招待客は自分一人だと思ってる。披露宴のお客が一人だなんて小規模にも程があるってものなんだけど、身内だけならアリだしねえ…。他にもゲストがいるんだよ、と教えなくっちゃ。…ん?」
そこで会長さんは口を噤んでしまいました。いったい何があったんでしょう? しばらく沈黙が続いた後で…。
「ブルーに監視されてたか…。あっちのハーレイとぶるぅを招待するのは内緒なんだ、と言われちゃった。あっちのハーレイには頼み辛いから、って言って頼んでたねえ、そういえば…。まあいいや、その辺は細かいことだし」
ブルーが帰ったらぼくたちの番、と意気込んでいた会長さんが腰を上げたのは一時間ほど経ってから。ソルジャーは自分の世界にお帰りになったみたいです。私たちは会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」の瞬間移動で教頭先生の家のリビングに飛び込んで…。
「な、なんだ!?」
ソファに座っていた教頭先生が仰け反りました。はずみで吹っ飛んだ冊子を会長さんが拾い上げて。
「ふうん、花嫁の父の心得ねえ…。誰か結婚するのかい?」
「そ、それは…。その……。単なる興味だ。別に父親役をするわけでは…」
教頭先生の額にたちまち噴き出す脂汗。会長さんがクッと笑って。
「語るに落ちるってこのことかな? この冊子には花嫁の父だけでなくて他にも色々載っているけど? で、誰の父親役をするんだって?」
「ご、誤解だ! 私は何も…」
「ぼくそっくりのブルーの父親役。結婚相手はドクター・ノルディで、今度の日曜にホテル・アルテメシアのチャペルで挙式。…どう、間違ってる?」
「…な、何故それを…」
ソファからずり落ちそうな教頭先生に、会長さんは。
「ぼくも招待されてるんだよ。ついでにそこの子たちも…ね。模擬結婚式と言えども披露宴は賑やかにやりたいらしい。花嫁の父役を君に頼むというのも聞いた。それ、ぼくに隠さなきゃいけないことかい?」
「お、お前はノルディが嫌いだし…。お遊びとはいえ、ノルディとの挙式と聞いたら怒り出しそうな気がしてな…」
座り直した教頭先生は冷や汗ダラダラ。会長さんに内緒で引き受けたつもりが即バレどころの騒ぎじゃないのですから、無理ないですけど。
「ぼくが怒ると思ってたんなら、どうして引き受けちゃったのさ?」
「…ノルディがお前から手を引くかも、と思ったのだ。あっちのブルーはノルディを現地妻にしたいと言ったし、そうなれば……そのぅ……」
「それなりの仲になるからノルディが大人しくなりそうだって? …好きだよ、ハーレイ」
ありがとう、と会長さんは綺麗な笑みを浮かべました。
「ぼくもそういう展開を希望。だけどノルディは油断がならない人物だしね…。ぼくを結婚式に招待しておいて両手に花とか、如何にも言い出しそうじゃないか。危険防止にボディーガード! そんな気持ちで臨んでみてよ」
「…お前のボディーガードをしろと?」
「それと花嫁の父役と! 大いに期待しているからね。これは報酬の前払い」
会長さんが教頭先生にギュッと抱き付き、唇と唇が触れんばかりに顔を近づけて…。
「!!?」
フウッとガーリック臭い息を吹きかけられた教頭先生が反射的に顔を反らしてしまった次の瞬間。
「御挨拶だね、キスのプレゼントは要らないって? 二度とあげない!」
「い、いや、今のは……つい…身体が勝手に…」
「身体が勝手に動いちゃうほどイヤだって? だったら頑張ってタダ働きだね、ボディーガードはして貰うから!」
一方的に怒鳴り散らした会長さんは「帰る!」と叫び、たちまち迸る青いサイオン。最初からキスなんてプレゼントする気も無かったくせに、と私たちは溜息です。教頭先生も顔を背けたガーリックの匂い、明日までに抜けてくれないとクラスメイトに「昨日は焼肉?」と訊かれちゃうかも…。
こうしてソルジャーとエロドクターの模擬結婚式の準備は着々と進んでいきました。教頭先生は花嫁の父役という大役を務めるために鏡の前で姿勢チェックに余念が無いとか。その教頭先生に招待状を届けに行ったソルジャーが放課後の「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋にやって来て…。
「こんにちは。はい、君たちにも招待状だよ」
本格的な封筒入りの招待状を貰ってしまって私たちの気分は複雑です。教頭先生には伏せておくようにとソルジャーが会長さんに指示した、残り二人の招待客は? キャプテンと「ぶるぅ」も招待状を貰ったのでしょうか?
「んーと…。それが時間が取れなくて…」
まだ言い出せていないんだ、とソルジャーは舌を出しました。
「どうせ瞬間移動でパパッとこっちに来ちゃうわけだし、当日の朝でもかまわないかな…って」
「えっ? それだと服が間に合わないんじゃ…」
キャプテンの服では出られないよ、と会長さん。模擬結婚式とは言うものの、会場が会場だけに、私たちも制服かお洒落な服を着て行くように、と会長さんから言われています。キャプテンの船長服はシャングリラ号では正装でしょうが、結婚式では浮きそうですし…。けれどソルジャーは平然と。
「大丈夫! それもこっちのハーレイにお願い済みさ。ぼくのハーレイは礼服を持ってないから君のを貸してやってくれ…ってね」
教頭先生に借りた礼服を添えて招待状を渡すのだ、とソルジャーは胸を張りました。
「ぶるぅは前にクリスマス・パーティー用に誂えて貰ったタキシードがあるし、問題はハーレイだけなんだ。きっと似合うと思うんだけど」
「…じゃあ、式の内容の説明とかは? 本物の結婚式だと勘違いしたら大変だよ?」
会長さんが尋ねると。
「サイオンを使えば複雑なことも一瞬で伝達可能じゃないか。当日の朝でも充分さ」
心配無用、とソルジャーは悠然と構えています。青天の霹靂なキャプテンが腰を抜かさなければいいんですけど…。微妙な空気が流れた所へ「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「はい、今日のおやつはミルフィーユ! お代わりもあるよ♪」
「ありがとう。でも…」
お代わりはちょっと無理かも、と言ったソルジャーは本当に一切れしか食べませんでした。いつもだったら二切れは軽いのに、どうしちゃったの? まさかダイエットをしてるとか…?
「君らしくないね」
会長さんがズバッと遠慮なく。
「お代わりすると太るって? 誂えたドレスが入らなくなったらマズイだろうし…。今日も仮縫いに行っていたっけ。ぼくの服を勝手に持ち出して…ね」
「…見ていたんなら分からないかな? ぼくは毎日大変なんだよ!」
ソルジャーは紫のマントを外してバサッと放り投げました。銀をあしらった白い上着も脱ぎ、その下の黒い衣装のジッパーを…って、なんで突然ストリップ? パニックに陥りかけた私たちですが。
「…コレのせいでロクに食べられないんだ」
ほら、と指差すソルジャーの胴に嵌まっていたのはコルセット。純白にレースをあしらったブライダル用らしきデザインです。どうしてソルジャーがコルセットなんか…。
「ノルディが買ってきたんだよ。ドレスには専用のインナーが無いとシルエットが綺麗に出ないとか言って…。でもって強く締め付けるから、当日初めて着けて気分が悪くならないように時々着けて慣れておけってさ」
「それで真面目に着込んだ結果、キツくておやつも食べられないと?」
良かったねえ、と会長さんがクスクス笑っています。
「君の間食の量が減ったら厨房の人が喜ぶだろう? 気ままにくすねているみたいだし」
「ぼくなんか数の内にも入らないよ! つまみ食いと盗み食いはぶるぅが凄いし!」
「でもコルセットを外す気は無い…、と。ご苦労様」
頑張りたまえ、と会長さんに肩を叩かれたソルジャーはコルセットの上から服を再び身につけて。
「これってキツイし、圧迫感も半端じゃないんだけどね。ノルディが「見ているだけで興奮しますよ、早く外したくてたまらなくなる」って言うものだから…。清楚なドレスにセクシーな下着! 最高の取り合わせだと思わないかい?」
目指せ、完璧な花嫁姿! とソルジャーは闘志を燃やしています。どんなドレスを誂えたのか、とっても気になるところですよね。
そんなこんなで金曜日が来て、会長さんの健康診断の結果を聞きに行く日になりました。キース君がドクター人形を風呂敷に包んでしっかりと持ち、私たちも覚悟と会長さんのガードを固めてエロドクターの診療所へと。今日も休診の筈ですが…。あれ?
「なんだか先客が大勢いますよ?」
駐車場が一杯です、とシロエ君。いつもはガランとしている専用駐車場に車や自転車が何台も。そして扉には『診療中』の札が下がっているではありませんか! 入ってみれば受付の人や看護師さんの姿があって、待合室のソファも満杯。
「えっと…。どうすればいいんだろう?」
会長さんも度肝を抜かれたらしく、代わりにキース君が受付に行くと間もなく会長さんの名前が呼ばれて。
「ようこそ」
忙しいので手短に、と告げるドクターの机にはカルテが山を成しています。エロドクターは一番上に乗っかっていた会長さんのカルテを取ると。
「今回も特に異常はありませんでした。ではまた、来年のこの時期にご案内を出させて頂きます」
えっ、これだけで終わりですか? ポカンとしている会長さんと私たちに、ドクターは。
「明後日のブルーとの式には来て頂けますね? やはり乗り気の相手が一番です。私はブルーのことで頭が一杯なのですよ」
花嫁姿が楽しみです、とニヤニヤしているエロドクター。診療所を普通に開けていることといい、興味は完全にソルジャーに向いているみたい。模擬結婚式と披露宴が無事に終わったら会長さんは安全圏かもしれません。
「良かったな、おい」
これの出番は無かったぞ、と外へ出てからキース君が風呂敷包みを会長さんに渡しました。
「うん、ぼくも本当にビックリしたよ。まさかノルディがブルーに夢中になるとはね…。ハーレイとブライダルフェアに行ったのがバレたと知った時には人生終わったと思ったけれど、災い転じて福となす……かな?」
素敵な結婚式になるといいね、と会長さんが言い、「そるじゃぁ・ぶるぅ」が。
「ぶるぅも来るって言ってたもんね。早く明後日になるといいなぁ♪」
御馳走を食べて遊ぶんだ、と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。私たちも踊り出したい気分でした。さらば、危険なエロドクター。ソルジャーと末永くお幸せに!
日曜日は朝から気持ちよく晴れて、絶好の結婚式日和。シャングリラ学園の制服を着た私たちとスーツでキメた会長さん、それに子供用スーツの「そるじゃぁ・ぶるぅ」がホテル・アルテメシアのロビーに集合です。エロドクターは放っておいて、目指すは花嫁控室。ソルジャーは上手に化けたかな?
「やあ。…どうかな、このドレス?」
椅子から立ち上がったソルジャーの姿に誰もが息を飲みました。コルセットまで着けて頑張っただけのことはあります。スラリとした身体を包むドレスは見事にフィットし、流れるようなレースのトレーンが美しく…。会長さん御自慢のウェディングドレスも素敵ですけど、それとは違った魅力です。
「かみお~ん♪ 綺麗! すっごく綺麗!」
小さな子供の「そるじゃぁ・ぶるぅ」に手放しで褒められたソルジャーは大満足で。
「そう? じゃあ、ハーレイも喜んでくれるかな?」
「「「は?」」」
どうして此処でキャプテンの名前が出るのでしょう? 今日のキャプテンは招待客の一人に過ぎません。喜ぶと言うよりトンビに油揚げなポジションなのでは…?
「あ、そうか。泣いちゃう方かもしれないねえ…」
どっちにしても楽しみだ、と微笑むソルジャーは花婿が誰か本当に分かっているのでしょうか? 現地妻がどうこうと言ってますから本命はキャプテンかもしれませんけど、花婿はエロドクターですよ?
「うん、その辺は分かってる。ドレス代も式と披露宴の費用もノルディが払ってくれるんだし…。ティアラも本物を買ってあげますよ、って言われたんだけど、そこまでは…ね。だから生花で」
ソルジャーの髪にはブーケとお揃いの真っ白な薔薇が飾られていました。勿論、レースの縁取りがついた長いベールもお約束。
「ほほう…。綺麗に出来たな」
時間になって入って来たのはモーニングを着た教頭先生。そのまま見惚れるかと思いきや、視線は自然と会長さんの方へ。ウェディングドレスのソルジャーよりもスーツの会長さんに惹かれるんですか、そうですか…。教頭先生はソルジャーをエスコートして部屋を出、私たちも続いてチャペルへ。ところが…。
「おい。キャプテンとぶるぅが来てないぞ」
遅刻なのか、と声を潜めるキース君。二人揃って来ていないなんて、あちらの世界で非常事態? 会長さんも心配そうです。教頭先生と一緒に入って来る筈のソルジャーが現れなければ挙式どころではありません。エロドクターはそれを知ってか知らずか、白いタキシードで祭壇の前。
「ブルー、来るかな?」
もしかして帰っちゃったかも…、とジョミー君が呟いた所でチャペルのドアが開きました。教頭先生にエスコートされたソルジャーが滑るような足取りでバージンロードを進んでゆきます。キャプテンは? それに「ぶるぅ」は…? と、チャペルに転がり込んで来た人影が…。
「ブルー!!!」
ソルジャーの名前を絶叫しつつ乱入したのは礼服を着たキャプテンでした。ドアの外にはタキシード姿の「ぶるぅ」が見えます。瞬間移動でキャプテンを連れて来たのでしょう。赤い絨毯を踏んで突き進むキャプテンにソルジャーがピシャリと鋭い一喝。
「足!」
「…は?」
「バージンロードを踏んでるんだよ、思いっ切りね。此処を歩ける男は花嫁の父の他には花婿しかいない筈なんだけど、お前は何だ?」
どんなつもりでやって来たのだ、とソルジャーの唇に冷たい笑みが。
「その服と招待状に手紙を添えておいただろう? ノルディと結婚するってね。ぼくを一生、満足させる自信があるなら攫って逃げるというのもアリだと」
げげっ。ソルジャーは本物の結婚式だと大嘘をついてきましたか! そりゃキャプテンも焦ります。ソルジャーは冷笑を湛えながら。
「攫いに来たってわけじゃないならお前はただの招待客だ。…ぶるぅと一緒にそっちの席へ。ぼくの結婚を祝福したまえ」
邪魔なんだよ、とソルジャーが促しましたが、キャプテンはバージンロードから足をどける代わりにソルジャーの腕をグッと掴んで。
「い、一生満足させてみせます!」
「…ふうん? とてもそうとは思えないけど?」
ヘタレな上にマンネリだもんねえ…、とソルジャーが言い終えない内に。
「が、頑張らせて頂きます!」
一生努力あるのみです、と叫んだキャプテン、ソルジャーをサッと抱き上げるなり脱兎の如く開け放たれたままのドアの彼方へ…。気付けば「ぶるぅ」も消えていました。
「「「………」」」
どうやら花嫁は拉致されちゃったみたいです。花嫁姿のソルジャーが「ハーレイも喜んでくれるかな?」と言っていたのは、これを見越してのことでしたか! 今頃、キャプテンは向こうの世界でソルジャーのウェディングドレスをいそいそと脱がせ、セクシーなコルセット姿に悩殺されつつ大人の時間に突入中…?
「残念ですよ、花嫁を攫われてしまうとは…」
やられました、とシャンパンを呷るエロドクター。
「またしても脱マンネリというヤツなのでしょうか? 私は本気だったのですがねえ…」
エロドクターが座っているのは一段高くなった高砂席。結婚式は壊れましたが、披露宴の御馳走などは出来ていたので皆で食べようというわけです。私たちはキャプテンと「ぶるぅ」の分が空席になった招待客用のテーブルで美味しい料理を堪能中。
「ブルーのアレって結婚詐欺になるのかな?」
ジョミー君が尋ね、キース君が。
「最初から模擬結婚式だし、結婚詐欺とは言わんだろう。…悪質だとは思うがな…」
絵に描いたような花嫁の略奪騒ぎは宴席の格好の話題でした。教頭先生はキャプテンと「ぶるぅ」が呼ばれていることを知らなかっただけに、とても感動したのだとか。一方、大人なエロドクターは高砂席で悠々と食事し、ウェディングケーキにも一人で入刀! 本物のケーキですから切り分けて皆に配られて…。
「どうですか、ブルー? 食事もケーキも御満足頂けたかと思うのですが」
エロドクターが高砂席を下りて会長さんの側にやって来ました。
「次はあなたが花嫁役など如何です? 最高の贅沢をお約束しますよ」
ニヤついているエロドクターに、会長さんは。
「お断りだね。ハーレイ、君の出番だよ」
「は?」
「ボディーガードをしてくれるんだろ? それに逃げた花嫁の尻拭いをするのは花嫁の父の役目だってば」
行くよ、と教頭先生を引っ張って宴会場を出てゆく会長さん。何をしようと言うのでしょう? しばらく経ってから会長さんの後ろに隠れるようにして戻って来た教頭先生は…。
「「「わはははははは!!!」」」
私たちもエロドクターも笑いが止まりませんでした。教頭先生が纏っていたのは、以前、シャングリラ号でのガーデンウェディングで着せられていたフリルとリボンが満載のドレス。会長さんは可笑しそうに。
「ノルディは可愛いドレスが好みなんだ。君が花嫁役をやってあげれば喜ぶよ」
「う、うむ…」
教頭先生が眉間に皺を寄せ、エロドクターが。
「私にも選ぶ権利はあるのですがね。…とはいえ、ブルーの代わりでは断れませんか…」
止むを得ません、と仏頂面のドクターの隣に座らせられた教頭先生。ソルジャーの代役誕生で高砂席に新郎新婦が揃いました。考えてみれば会長さんを好きな人同士、最高にお似合いのカップルかも…。凄い披露宴になりましたけど、二人の前途を祝して乾杯~!
会長さんと教頭先生のバカップル・デートを目撃していたというエロドクター。正確にはホテル・アルテメシアでのブライダルフェアの一部を目にしただけなんですけど、よりにもよってチャペルに入って行く所とは…。更にソルジャーまでが押し掛けてきて、私たちは戦々恐々です。
「ブルー? 私が見たのは何だったのだと仰るのですか?」
お話合いをしましょうね、とエロドクターは猫なで声。
「あなたはハーレイと結婚する気は無いと信じていたのですが、どうやら間違っていたらしい。実に幸せそうなカップルでしたよ、お似合いとしか言いようの無い」
「………」
黙り込んでいる会長さん。迂闊に返事をすれば墓穴を掘りかねないからでしょう。
「黙っていては分かりませんねえ、あなたはどういうおつもりなのです? まさか結婚なさったとか? それとも極秘に入籍ですか? ソルジャーとキャプテンが結婚となれば我々にも知らせがあるでしょうし…。まあ、隠しておきたいという気持ちも分からないではありませんがね」
あなたは高校生ですし、とエロドクターは唇を笑みの形に吊り上げました。
「シャングリラ学園の校則は存じませんが、不純異性交遊は恐らく禁止事項でしょう。かといって学生の身分のままで結婚というのも他の生徒の目がありますし…。在学中には婚約までが限界なのではないですか? 結婚したとなれば自主退学を余儀なくされるかと」
「……結婚も入籍もしてないってば」
会長さんがやっとのことで口を開いて。
「ぼくは今の所は結婚する気は全く無いし、ましてハーレイなんて願い下げだよ! 結婚するなら絶対、フィシス! もうちょっと遊びたいから保留なだけさ」
「そうなのですか? では、ホテル・アルテメシアで私が見たのは…」
「勘違いだろ?」
「なるほど。確かに写真も撮っていませんし、あなただという証拠は何も無いわけですが…」
おかしいですねえ、とドクターは首を傾げています。そりゃそうでしょう、超絶美形な会長さんと目立つ体躯の教頭先生、どちらも何処にでもいそうなタイプではなく、見間違える方が難しそう。ソルジャーとキャプテンというそっくりさんがいると言っても、別の世界の住人ですし…。
「まあ、勘違いならそれはそれで。…そうそう、あの日はブライダルフェアがありましたっけね」
「「「!!!」」」
ウッと息を飲む私たち。ブライダルフェアの受付デスクはロビーの目立つ所にありましたから、エロドクターが気付いたとしても別に不思議ではありません。ひょっとすると内容の方もバレているとか…? 案の定、エロドクターはニヤニヤと。
「先着限定三組様のスペシャル・コースがあったというのも知っていますよ。個室でのウェディングメニューの試食とチャペルでプロが記念撮影をするのでしたか…。もしや、下見にお出掛けになられたとか? とりあえず今は婚約だけで卒業してから挙式でしたら、ブライダルフェアも納得です」
「誤解だってば!」
勢いよく叫んだ会長さんに、エロドクターはクッと喉を鳴らして。
「おやおや、誤解と来ましたか。それではブライダルフェアにお出掛けになったのは事実ですね? で、どの部分が誤解なのです?」
「…そ、それは……」
しまった、という表情を浮かべる会長さんの横からソルジャーが。
「ふふ、ブルーはハーレイと結婚する気は無いんだよ。ブライダルフェアも言い出したのはブルーじゃないし」
「ほう? 結婚する気も無いというのにブライダルフェアのスペシャル・コース…。ハーレイには手痛い出費ではないかと思うのですが、それをブルーが仕掛けたのではなくてハーレイが?」
信じられませんね、と顎に手をやるエロドクター。
「それにブルーが承知したというのが理解できません。自分から言い出した計画だったら乗り気でしょうが、ハーレイの申し出でブライダルフェア…。二人仲良くチャペルで記念撮影だなどと、有り得ない話だと思いますがね」
「それがそうでもないんだよね」
クスクスクス…と笑うソルジャーに、エロドクターは。
「お話合いは人数が多いほど盛り上がる、と考えたのは正解でした。あなたは色々と御存知のようで…。私が見たのは何だったのです? どうしてブルーがブライダルフェアに?」
「それはねえ…。何から話せばいいのかな?」
どうしよう、とソルジャーは楽しげな笑みを浮かべています。ソルジャー、どこまで知ってるんですか…?
「最初はデートだったんだよ」
お話合いに乱入してきたソルジャーは、いきなり爆弾発言をかましました。
「デートですって?」
エロドクターの声が引っくり返り、それから「ああ…」と両手を打って。
「なるほど、昔の私と同じケースかもしれませんね。ブルーにデートを申し込んだら散々な目に遭わされました。…あの感覚で悪戯というなら理解できます」
勝手に一人で納得しているエロドクターに、私たちも思い出しました。あれは特別生の一年目も終わろうという三学期のこと。その一年前に会長さんを食べようとして果たせなかったエロドクターが「一年間も待ったのだから利子をつけて頂きたい」とデートを申し込んできたのです。
「私はそこのボディーガードたちに邪魔されましたが、ハーレイも酷い目に遭わせたのですか? チャペルでは幸せそうでしたがね」
「んーと…。特に酷い目には遭ってないかな」
ソルジャーはパチンとウインクをして。
「どっちかと言えば幸せ一杯? なにしろデートのテーマがねえ…。バカップルごっこだったっけ?」
ひぃぃっ、そこまでバレてましたか! そしてバカップルという単語はエロドクターの耳にバッチリ入ったようです。
「バカップル…ごっこ? なんですか、それは」
「話せば長くなるんだけれど…。そもそも春休みに行った旅行が発端なんだ」
「…旅行…。ブルーとハーレイが?」
「他にもゾロゾロいたけどね。そこの子たちは勿論参加。ぼくと、ぼくの世界のハーレイも行った。河原を掘ったら露天風呂が作れるんだよ」
面白かった、と語るソルジャーに、エロドクターは怪訝そうに。
「いわゆる団体旅行ですね。ハーレイとブルーの仲が進展するような旅だったとは思えません。それがどうしてバカップルごっこに?」
「ぼくとハーレイの旅のテーマさ、バカップルは。せっかく旅行に行くんだからね、婚前旅行っぽく楽しみたくて…。こっちのハーレイに指南役をお願いしたってわけ。そういう風に使えますよ、とぼくのハーレイに紹介してくれたのは君だろう?」
新婚生活を夢見る師匠として、と続けるソルジャー。
「今回の旅でも大いに役に立ってくれたよ。バカップルな旅のアルバムまで作れたし…。それを師匠にプレゼントした辺りから話が大きくなったんだ。こっちのハーレイが羨ましがっているのをブルーが逆手に取って悪戯を…ね」
「おや。やはり悪戯ではないですか」
「それは最後の部分だけ! 悪戯で締めたってだけで、そこまでは楽しくデートしてたさ。でもって、デートのテーマがバカップルごっこ。だからこっちのハーレイも張り切っちゃって、ブライダルフェアを予約したんだ」
あちゃ~。ソルジャーは全て喋ってしまいました。ブライダルフェアの発案者が教頭先生だったと知ったエロドクターは腕組みをして考え込んでいましたが…。
「あのハーレイがスペシャル・コースを奮発したとなりますと……頑張らないといけませんね。ブルーの花嫁姿を拝める上にチャペルで記念撮影ですか…。私も負けてはいられません」
ズイと乗り出すエロドクター。
「ブルー、私とゴージャスなブライダルフェアは如何です? 個室で試食などと言っていないでゲストも呼んで賑やかに…ね。そこの皆さんをお招きすればグッと会場が華やぎますよ」
「な、なんでぼくが…!」
会長さんの顔が引き攣るのも気にせず、ドクターは。
「次のブライダルフェアを待つほどのこともありません。ああいうものは出すものを出せばいくらでも…。あなたのためなら安いものです。模擬結婚式と洒落込みましょう」
「ちょ、ちょっと…!」
「断るのですか? では、健康診断の結果をメチャクチャにして差し上げましょうか。月に一度は検査のために来院しなくてはならないように書き換えるとか…。ええ、あなたは多分今回も何の問題も無いでしょうから。ですが、それは医者としてどうかという話もございますしね…」
バレたら懲戒免職ですし、とエロドクターは大袈裟な溜息をついて。
「あなたの主治医という美味しい立場は私も失いたくありません。さて、断られないためにはどうするか…。断ったらキスをプレゼントするというのもいいですねえ…」
テクニックには自信があるのです、と会長さんの顎を捉えようとしたエロドクターに、キース君が。
「触るな! 人形に一発お見舞いするぞ」
キース君の手が風呂敷包みの結び目をグッと握っています。何かあったら風呂敷を解いてドクター人形を殴りつけるつもりでしょう。ドクターは「やれやれ…」と苦笑しながら。
「キスをされればブルーもその気になりそうですがね? 私とベッドに行きたくなるようなキスを仕掛ければいいだけのことで…。そういう仲なら模擬結婚式どころか結婚式でも大丈夫ですよ」
「やかましい!」
キース君が怒鳴り付け、サム君がエロドクターを睨み付け…。会長さんは顔色を失くして半ばパニック。これは相当ヤバイんじゃあ…、と私たちが思った時。
「模擬結婚式か…。それって、ぼくだとダメなのかな?」
「「「は?」」」
割り込んで来たのはソルジャーでした。エロドクターも会長さんも、誰もがポカンとしています。何がソルジャーだとダメなんでしょう?
「だからさ、花嫁役はブルーじゃないとダメなのか、ってこと! そっくりさんでもいいんだったら、ぼくが代わりに出たいんだけどな」
「「「………」」」
えっと。ソルジャーって女装の趣味とかありましたっけ? 会長さんのウェディングドレスを貰って行ったりチャイナドレスを誂えたりはしてましたけど、エロドクターの花嫁役って、なんでまた…?
予想もしない提案に呆気に取られた私たちですが、立ち直りが一番早かったのはエロドクター。会長さんのそっくりさんの花嫁姿も悪くはないと思ったらしく…。
「ブルーの代わりにあなたが…ですか? 確かにあなたなら嫌がりもせずに楽しくお付き合い下さるでしょうが、ブライダルフェアに興味を持たれましたか?」
「まあね。見ててけっこう面白かったし…。それに君のは模擬結婚式とか言わなかったっけ? そこの子たちを呼んで披露宴もどきってヤツも出来るんだろう?」
「それは勿論。ご希望でしたらウェディングケーキもお付けしますよ。…ええ、あなたの方がブルーよりいいかもしれませんねえ…。嫌がる相手をその気にさせるのも燃えるものですが、ブルーの場合は物騒なボディーガードがおりますし…」
風呂敷包みの中身も脅威です、と言うエロドクターとキース君の間で火花が一瞬バチッと散って。
「やはりブルーは諦めた方が吉ですね。せっかく乗り気の花嫁役がいらっしゃるのに、お断りをするというのも失礼ですし…。で、本当に模擬結婚式を御希望ですか?」
「うん。ぼくの方もゲストを呼べるんならね」
「ゲスト…? しかし、あなたの世界の皆さんは…」
「こっちの世界があるって話はしていない。でも二人だけ例外がいる。ぶるぅとハーレイ」
ソルジャーはクスッと小さく笑うと。
「ハーレイをぼくの結婚式に招待したらどうなると思う? 前に現地妻の募集もしたのに、ホントに危機感が無くってさ…。結婚するぞ、と脅してやりたい」
「そういえば指輪をプレゼントさせて頂きましたね。今度は挙式をなさりたい、と」
「結婚式まで挙げるとなったら現地妻は君で決定だろう? 現地妻の座を確保したとなればハーレイも手出し出来ないさ。…前は殴られてくれたっけね」
「いえいえ、どういたしまして」
大したことではありませんよ、とエロドクターが返しています。すっかり忘れていましたけれど、教頭先生がキャプテンに新婚生活の心得とやらを伝授していた時にソルジャーがエロドクターに監禁されたふりをしたのでした。キャプテンはソルジャーを取り戻そうと屋敷に乗り込み、ドクターにアッパーをお見舞いしたという…。
「今度は結婚式だからねえ、ハーレイも殴りはしないと思う。泣き崩れるのが関の山かと…。ゲストに呼んでもいいのかな?」
「かまいませんよ。ぜひ盛大にやりましょう」
エロドクターは大乗り気です。
「あなたとでしたら、式の後にはスイートルームで過ごすというのもいいですね。如何ですか、私と一晩」
「それはマズイと思うけど…。あ、ブルーにバレなきゃいいだけのことか」
バレるも何も、此処で話している段階で筒抜けでは…と思うのですが、ソルジャーとエロドクターは意気投合。アッと言う間に挙式の日取りは一週間後の日曜日とまで決まってしまって…。
「部屋もバッチリ押さえましたし、後はあなたのドレスなど…ですね」
仕事の早いエロドクターはホテル・アルテメシアにしっかり予約を入れました。えっ、会長さんは口を挟まなかったのかって? 下手な事を言えば自分が花嫁役にされちゃいますから、忍の一字で必死に耐えたみたいです。スイートルームで一泊の件は、後でソルジャーに厳重注意でもする気でしょう。
「ドレスはオーダーしませんか? せっかくですから」
急げば充分間に合いますよ、と聞かされたソルジャーは大賛成。明日は早速エロドクターと一緒にホテル・アルテメシアの衣装室へと出掛けるそうです。この二人、もう放っておくしか…。
「ああ、そういえば。大切なことを忘れていました」
私としたことが、とエロドクター。
「模擬結婚式をするのでしたら、エスコート役が必要です。いわゆる花嫁の父役ですね。…あなたの世界のハーレイにやらせますか?」
「えっ? それだと何かが違いそうな…。でも…」
他に適当な人材も無いか、とソルジャーが首を捻っています。
「ぶるぅじゃどうにもならないし…。そこの子たちの誰かに頼むというのも手かな?」
「「「!!!」」」
キース君たちは必死になって首を左右に振りました。お遊びとはいえ、ソルジャーとエロドクターの結婚式に手を貸すなんて、誰だって遠慮したいでしょう。ソルジャーは誰を指名すべきか、順々に視線を向けていましたが…。
「そうだ、適役がいるじゃないか! ハーレイだったらこっちにもいる」
忘れていたよ、と嬉しそうに微笑むソルジャー。
「ぼくがノルディと式を挙げたらブルーは晴れて自由の身だ、と言ってあげれば食い付くだろう。…どう思う?」
「そうですねえ…。では、交渉をなさいますか?」
「うん。明日、ドレスをオーダーしに行くついでに寄ってみよう。きっと嫌とは言わない筈さ」
あーあ…。とうとう教頭先生まで巻き込むことになっちゃいましたよ! こんな調子でソルジャーとエロドクターは話を進め、段取りもガッチリ組まれてしまって…。
「今日は良い日になりましたよ。明日は楽しみにお待ちしております」
「こちらこそ、よろしく。どんなドレスが似合いそうかな?」
ワクワクするよ、と言うソルジャーを止められる人はいませんでした。会長さんの健康診断の結果は来週の金曜日に聞きにこなくてはいけないのですけど、エロドクターは最早そっちはどうでもいいようで…。
「ブルー、来週の日曜日ですよ。私とブルーの結婚式と披露宴にご出席頂けますね? そちらの皆さんも」
また招待状をお届けします、と告げるエロドクターはソルジャーの方ばかり見ていました。会長さんから矛先が逸れたのはいいことですけど、おかしな展開になっちゃったような…?
ドッと疲れていた私たちはタクシーを呼んで貰うのも忘れてしまい、瞬間移動で会長さんのマンションへ。今夜は御馳走を食べてお泊まりの予定なのですが…。
「どうして君がついてくるのさ!」
リビングに着くなり声を荒げたのは会長さんです。
「え、だって…」
一度戻るのは面倒じゃないか、とソルジャーが悠然と答えを返して。
「明日はドレスのオーダーに行かなきゃならないし…。こっちのハーレイにエスコート役をお願いしに行くのも明日だしね? 今夜は泊めてもらおうかな、って」
「あれだけ勝手をやらかしておいて、今更泊めて貰えるとでも?」
「ふうん? じゃあ、君がノルディと挙式するかい? ぼくとしては君の窮地を救ったつもりなんだけど…。ぼくが花嫁役を引き受けなかったら君が花嫁にされていた」
「………」
否定できない会長さん。そして会長さんが花嫁役の場合でも、エロドクターはスイートルームに予約を入れていたでしょう。そうなっていたら私たちはドクター人形を武器に乱入するしかないわけですけど、あんまりやりたくないですし…。
「ね? 助かったって自覚があるなら、ぼくの機嫌は取っとくべきだよ。ところで、今日の夕食は?」
「かみお~ん♪ 鉄板焼きだよ! いいお肉が沢山買ってあるんだ」
お魚とかも、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は元気一杯。
「ね、ね、結婚式の御馳走って何が出るのかなぁ? ウェディングケーキもあるんだよね」
とっても楽しみ! と飛び跳ねている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。小さな子供だけに、結婚式はイベントでしかないのでしょう。発端になったブライダルフェアでもビュッフェコーナーに突撃していましたし…。
「ぶるぅはホントにいい子だね。結婚式にはぼくのぶるぅも来るからよろしく」
「うん! ぶるぅと一緒に遊べるといいな♪」
早く来週の日曜日になあれ! と叫ぶと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は手際よく夕食の支度を整えました。ダイニングのテーブルにホットプレートを幾つも据えて、お肉や海老やホタテなんかをジュウジュウと…。何種類ものタレは勿論手作り。とりあえず今は削られた体力の回復のために食べまくらなきゃ!
「ぶるぅ、ガーリックは多めにね」
会長さんが指示を出したのは締めのガーリックライスです。スライスされたガーリックが食欲をそそる匂いをさせてますけど、もっと増やせってことなのかな?
「えと、えと…。追加?」
「ドカンとね。明日は休みだから匂いがしたって平気だし!」
あ。その瞬間に私たちにも分かりました。ガーリックを増やすのは明日お出掛けのソルジャーに対する嫌がらせです。ホテルの衣装室でドレスのオーダー。サイズを測る人やデザイナーさんたちの前でガーリックの匂いがプンプンするのは最悪ですよね。
「そう来たか…。でも、ぼくだってダテにソルジャーやってないし?」
フフンと鼻で笑うソルジャー。
「匂いをシャットアウトすることくらい、君だって朝飯前だろう? 君よりも遙かに場数を踏んでるぼくに出来ない筈が無い。ガーリックの追加、大いに結構。ガーリックライスは美味しいしね」
「「「………」」」
こりゃ駄目だ、とガックリ肩を落とす私たち。その間に「そるじゃぁ・ぶるぅ」がガーリックをたっぷり追加してくれ、美味しいけれども丸一日は人前に出られそうもないガーリックライスの出来上がりです。ソルジャーは全く気にせず胃袋に収め、デザートのケーキとアイスクリームも平らげて…。
「それじゃ、お先に寝させてもらうね。明日は忙しくなりそうだから、ゆっくり休んでおかないと」
まずはシャワーだ、と出てゆくソルジャーは会長さんの私服でした。押し掛けて来た時にサッサと着替えてしまったヤツなのです。パジャマも適当に借りるのでしょう。当然、明日のお出掛けにも…。ソルジャーにとって会長さんの家は勝手知ったる他人の家。何を言っても無駄なんですから、好きにさせるしかありませんよね。
ソルジャーがゲストルームに引っ込んだ後、私たちは飲み物を持ってリビングに移動。本当だったら健康診断の付き添い第一弾の終了祝いで盛り上がっていた筈なんですけど、状況は完全に真逆でした。
「どうしよう…。ブルー、やる気になっちゃってるよ…。よりにもよって挙式だなんて…」
溜息をつく会長さんにキース君が。
「落ち着け、挙式と言っても遊びみたいなモノなんだろう? 誓いの言葉は言わないそうだし」
「まあね…。模擬結婚式だし、籍が入るってわけでもないけど…」
それでも色々と問題が…、と会長さんは項垂れています。
「だって相手はブルーだよ? ノルディに対して嫌悪感が無いし、現地妻だなんて言ってたし…。スイートルームにも泊まる気満々、これからどうなっちゃうんだろう、って…」
「考えようによってはチャンスじゃないか? エロドクターがあいつに夢中になったら、あんたは一気に安全圏だ」
「うん…。ハーレイにもそう持ち掛けてエスコート役をさせるつもりだと思う。だけどノルディはブルーを手に入れて満足するようなタイプじゃない」
ぼくとブルーは別人だから、と会長さんは再び深い溜息。
「二人いるなら二人とも、と考えそうなのがノルディなんだよ。ブルーの方で味を占めたら次はこっちに向かってくるね。…だけど結婚式を止めようとしたら確実にぼくが花嫁役にされちゃうし…」
「最初からそのつもりだったようだしなあ…。エロドクターは」
「ブルーが来たから助かったのか、更に危なくなっただけかが今一つぼくにも分からない。どっちにしてもブライダルフェアに行っていたのを目撃されたのが敗因だよね」
失敗した…、と会長さんは額を押さえています。けれど、あの会場付近にエロドクターが来ていたことには誰も気付いていなかったわけで。同じ時間帯にホテルの中をウロウロしていた私たちだって医師会の集まりを全く知らなかったのですから、バカップルごっこに興じていた会長さんが気付かないのも無理はなく…。
「…不幸な事故だと思うしかないな」
キース君がキッパリ言い切りました。
「これ以上の事故を重ねないためにも用心するしかないだろう。エロドクターの方は注意してればなんとかなる。教頭先生という強い味方もいらっしゃるんだし、今回の件はもう諦めて失敗は次の機会に生かせ」
「次の機会って…?」
「エロドクターが改めて言い寄って来た時だな。あんたにはブルーがいるだろう、とか、妻がいるヤツの浮気の相手をする気は無いとか…。とにかく物は言いようだ」
「そうか、ノルディが結婚式を挙げるってことは、それから後はブルー以外だと浮気になるのか…」
いいことを聞いた、と会長さんが喜び、私たちも万歳をしかけましたが。
「ただし本物の挙式じゃないのが問題と言えば問題だがな」
あちゃ~…。キース君の冷静な突っ込みは真実でした。模擬結婚式だとお芝居みたいなものですもんねえ、ソルジャーがはしゃいでいるだけで。まあ、現地妻には充分すぎるイベントですけど…。
「ブルー、この先はあんた次第だ。エロドクターに隙を見せないように努力するだけでも違うだろう。いいか、結婚式を挙げるブルーとあんたは違う」
流されるな、とキース君が会長さんの肩を叩きました。
「あんたは俺たちと同じ招待客だし、当日はドンと構えておけ。いざとなったら教頭先生もいらっしゃる。多分……だがな」
「ハーレイか…。ぼくからも頼んでおこうかな?」
会場に来てくれていれば安心だよね、と会長さん。教頭先生、エスコート役をちゃんと引き受けて下さるでしょうか? そうなってくれるようにと今は祈るしかありませんです~!
会長さんが教頭先生とバカップル・デートを繰り広げてから順調に日は過ぎ、新入生のためのエッグハントや親睦ダンスパーティーも終わって普通の日々が始まりました。1年生の授業内容はすっかり覚えた私たちですが、それでも毎日きちんと登校。出席義務の無い特別生も4年目で…。
「かみお~ん♪ 今日もお疲れさま!」
放課後に「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ行くのは今年も同じ。これが楽しみで登校しているという話もあります。ジョミー君たちとは休み時間にも話せますけど、やっぱり此処が一番ですよね。
「やあ。グレイブは今日も絶好調だったみたいだね」
ソファで寛いでいた会長さんに微笑みかけられ、キース君が。
「あんたが来るかと思ったんだが…。今年も抜き打ちテストのフォローは無しか?」
「ぼくが出るのは定期試験と年度初めの実力テスト! 抜き打ちテストまで付き合っていたらキリが無い。グレイブだけがやるわけでなし」
「…まあな…」
苦笑いしているキース君。今日はグレイブ先生が抜き打ちテストをやったのでした。点数が悪かった生徒は補習を受けねばなりません。クラスメイトたちは会長さんが来てくれないかと期待していたようですけども、残念ながら救いの神は現れず…。内容からしてクラスの半分は補習を受ける羽目になりそうな予感。
「補習もたまには必要だよ。全面的にぼくに頼るというのは良くないし…。知識のフォローは必要最低限にしておかないと自分で学ぶ力が無くなる」
会長さんの言葉には説得力がありました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の不思議パワーを売りにして1年A組に入り込む会長さんは定期テストで全員に満点を取らせる力を持っています。問題の答えを意識の下に送るわけですけど、同時に実力で解けるようにと知識のフォローもしているわけで。
「そうだな。あんたの力に頼りっぱなしだと来年以降に困るだろうしな…」
キース君が頷き、シロエ君が。
「勉強するにも自分に合った方法とかがありますからねえ…。今の間にコツを掴んでおかなかったら将来色々と苦労しますよ」
「そうだよなあ…」
相槌を打ったのはサム君です。
「俺、この学校に入った時にはブルーと別のクラスだったし、けっこう必死に勉強したぜ。それでも追試の射程圏内に入っちまって、途中からブルーに助けて貰って…。でも勉強をしてた経験は生きてるかな」
「何に? 今じゃ抜き打ちテストも楽勝なのにさ。…サムが勉強って似合わないけど?」
遠慮の無い質問をしたジョミー君に、サム君は。
「いわゆる学校の勉強じゃないぜ? 学校によっては勉強だろうし、キースは勉強したんだろうけど…。ほら、お経って長いし難しいだろ? あれを覚えるのに役に立つんだ」
わわっ、お経の勉強でしたか! サム君は正式に会長さんの弟子になりましたし、将来に向けてお経は必須。そういえばジョミー君だって…。案の定、ジョミー君は真っ青な顔をしています。
「ジョミー、お前も人ごとじゃねえぞ? お盆の棚経にお供するなら覚えないと…」
「パス! ぼくは全面的にパス!!!」
両手で×印を作って騒ぐジョミー君に私たちはお腹を抱えて大笑い。サム君とジョミー君が出家したことはスウェナちゃんが作った記事が広報誌に載った時点でサイオンを持った仲間たちにバレるのですけど、そうなっても果たして逃げ切れるかな?
「ジョミーの往生際の悪さもピカイチだねえ…」
クスクスと笑う会長さん。
「誰かさんを思い出させるよ。もっとも、あっちは逃げるんじゃなくて追いかけてくる方だけど」
「「「???」」」
「ハーレイだってば。何度痛い目に遭っても懲りやしないし、ひたすら前進あるのみ…ってね。バカップル・デートで失敗した後、めり込んでたのはほんの数日! ぼくを追い掛けて三百年以上だし、ジョミーの場合は仏の道から三百年以上逃げ続けたって不思議はないね」
「「「三百年?」」」
何処まで逃げて行くんでしょうか、ジョミー君は? 教頭先生ほどのタフさは無さそうですから、三百年後にはお坊さんになっていそうですけど…。そして本人にもそういう自覚はあるらしく。
「三百年も逃げられるかなぁ? パパもママも怒ると怖いしね…」
広報誌に載ったら「頑張りなさい」と言われそうだ、とガックリ肩を落としています。
「あーあ、お経の勉強かぁ…。やりたくないけど、やっぱりやるしかないのかな?」
「さあね。ハーレイを見習って諦めの悪さを貫いてもいいよ」
ぼくは止めない、と会長さん。ジョミー君の未来は流されるままにお坊さんなのか、逆らい続けて肩書きだけがお坊さんという意味不明な結果に落ち着くのか。三百年後が楽しみなような…?
私たちがワイワイ盛り上がっていると、会長さんが「ところで…」と口調を変えました。
「今週の金曜日は空いてるかな? 授業中じゃなくて放課後だけど」
「「「えっ?」」」
「この時期と言えばアレだよ、アレ。…健康診断の通知が来たんだ」
げげっ。健康診断と言えば毎年恒例のヤツですか? ソルジャーとしての義務だとかいう、エロドクターの診療所に行って受けるヤツ…。
「そう、それ」
会長さんが溜息をついて。
「あれだけは逃げるわけにはいかないからねえ、ジョミーみたいにイヤだと言って済ませられないし。正直、行きたくないんだけれど…通知が来た以上、どうしようもない」
「で、俺たちがボディーガードか?」
キース君が尋ねると会長さんは。
「察しが良くて助かるよ。来てくれるんなら、とっておきのネタを披露してもいい」
「ネタ? なんだ、それは?」
怪訝そうなキース君。私たちにもまるで見当がつきません。エロドクター絡みのネタなんでしょうか?
「違うよ、ノルディのネタじゃない。…それで、付き添いはお願いできるのかな? 来られる人だけでいいんだけれど」
「俺は行くぜ!」
サム君がグッと拳を握り締めています。
「ブルーを一人で行かせるなんて出来ねえよ! 元々用事は入ってないけど、あってもそっちをキャンセルするし!」
「…見捨てるわけにはいかんだろうな…」
危険なことは分かっているし、とキース君が続き、シロエ君たちも賛同しました。男子全員が出掛けるとなれば、スウェナちゃんと私も同行するのが筋でしょう。あまり役には立ちませんけど、監視人が増えればエロドクターも自重するかもしれませんしね。
「悪いね、毎年お願いしちゃって…。金曜日はお礼に御馳走するから泊まりに来てよ」
「かみお~ん♪ ブルーをよろしくね!」
そういうわけで金曜日の放課後は会長さんのお供でエロドクターの診療所に行くことに決定です。ところで、ネタって何だったのかな?
「ああ、ネタね。…これなんだけど」
会長さんが宙に取り出したのは立派な封筒。これって何…?
「ブライダルフェアで写してもらった写真だよ。ハーレイが大事に持っているのをちょっと拝借」
はい、と封筒から引っ張り出された台紙つきの写真は本格的な仕様。表紙の次に薄紙が入り、それをめくると…。
「……すげえ……」
「フォトウェディング並みに凝ってますよね…」
感嘆の声を上げるサム君とシロエ君。去年の春休みに会長さんがホテル・アルテメシアでフォトウェディングを申し込んで遊んでいた後、写真が沢山届きましたが、その時のヤツに負けていません。ウェディングドレスの会長さんはとても綺麗で、この姿を生で見た教頭先生が指輪を贈ったのも無理はなく…。
「その写真よりも、こっちかな。ぼくとハーレイのツーショット」
「「「………」」」
チャペルで写したという二人の姿はどう見ても新婚カップルでした。しかもドレスとタキシードを着替えたものが他に二種類。幸せ一杯な顔の教頭先生、さぞかし結婚への夢が膨らんでいたことでしょう。
「ね、いいだろう、この写真。バカップル・デートで失敗したって写真が残れば幸せらしいね、ハーレイは。毎日眺めてニヤニヤしてるよ。さてと、バレない内に返しておくかな」
写真を封筒に戻した会長さんは瞬間移動で教頭先生の家に送り返して。
「ネタとして形になっているのは現時点ではアレだけだけど、近い将来、もう一つ増える」
「他にも写真を撮ったのか?」
キース君の問いに、会長さんは。
「写真じゃなくって、もっとしっかり形になって残るモノ。ぼくの嫁入り道具だよ」
「「「嫁入り道具!?」」」
会長さんったら今度は何をやらかす気ですか? エロドクターの健康診断を控えて困っているというのに、ストレス発散で悪戯ですか?
「嫁入り道具で思い出さない? ハーレイが夫婦茶碗に憧れてたのが発端じゃないか。片方を叩き割って置いてきたけど、ハーレイは本当に諦めが悪かった。…アレを金継ぎに出したのさ」
「きんつぎ…?」
それって何さ、とジョミー君。私も初めて聞く言葉です。けれどキース君とマツカ君は知っていたようで。
「金継ぎか…。確かにそれなら直せるな」
「ちょっと味わいもありますしね…」
意味が分からない私たちに会長さんが金継ぎについて教えてくれました。割れたお茶碗やお皿の破片を漆でくっつけ、金を塗って仕上げる修復方法のことだとか。
「漆が乾くのに時間がかかるから、出来上がるのは今月末かな? 修理できたら並べて棚に飾る気らしいね、ぼくの分の湯呑みとセットにして」
そう来たか、と教頭先生のタフさに感動を覚える私たち。この様子では会長さんが残していった黒白縞のトランクスも凄いことになっていそうです。見せパンツとは知らない教頭先生、会長さんの生パンツだと固く信じているわけで…。
「うん、それが究極のネタだとも言える」
誰の考えが零れていたのか、会長さんがパチンとウインクをして。
「ぼくが残した黒白縞は大切に箱に仕舞われてるよ。普通の防虫剤だと無粋だと思ったらしくて、ラベンダーのサシェが添えてある。まったく、どんな顔して買いに出掛けたのやら…」
通販にすればいいのにねえ、と会長さんは笑っています。教頭先生はわざわざ専門店でサシェをお買い上げ。黒白縞を保管するのに使う品物は自分の目で確かめて最高の物を、という心意気は天晴れとしか言えません。なのにネタ扱いにされている上、黒白縞も生パンツではなく…。
「いいんだってば、ハーレイだから! それよりも週末のノルディが問題」
セクハラされなきゃいいんだけれど…、と顔を曇らせる会長さん。いっそ教頭先生をボディーガードに…って、それは無理なんでしたっけ。うっかり二人で結託されたら会長さんの危機ですもんねえ…。
そしてやって来た金曜日。お泊まり用の荷物は出掛ける前に会長さんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」が瞬間移動で運んでくれたので、私たちは通学用の鞄だけ持って登校です。キース君も大学を卒業しましたから以前のような辞書やノートパソコンの詰まった大きな鞄はお役御免で…。
「去年までだと、この時期は忙しかったんだがな…」
放課後に「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ向かう途中でキース君が呟きました。
「えっと…。大学の講義が始まる頃だっけ?」
そう訊いたのはジョミー君です。
「ああ。俺は登録できる講義は端から登録していた上に、聴講もやっていたから大変だった。あっちの教室からこっちの教室、と駆け回っていたのが懐かしいぜ」
「でもさ、最初の頃しか出てなかった講義も沢山あった筈だよね? ウチの学校で授業を受けてる時間がどんどん長くなっていたもの」
「必要最低限に絞っていたんだ。出席は取らない、内容は自分の著書を読んでいるだけ…、なんて講義も多かったしな。そういう講義はレポートさえ出せば問題ない」
押さえる所さえ押さえておけば…、とキース君は笑っていますが、それでも首席で卒業するには相当努力した筈です。第一、本を読んでいるだけの授業と言っても、自分で読んで理解不能なら出席しないとマズイわけで…。
「そうとも言うな。たかがレポートだが、これが案外難しいんだぞ。教授の持論に反対の立場で書くと容赦なく落とすってケースもあったぜ。要は傾向と対策だ」
「へえ…。やっぱり高校とは違うんだね」
面白いや、とジョミー君が返すと、シロエ君が。
「ジョミー先輩もどうですか? 聴講だけなら登録できると思いますよ」
「イヤだってば! お坊さんに近くなっちゃうだろ!」
お坊さんの大学なんか…、とジョミー君は膨れっ面。会長さんの弟子になっても努力する気は皆無ですから、諦めの悪さで教頭先生と張り合いながら逃げ回るのでしょうか。そんなこんなで漫才のような会話を繰り広げつつ生徒会室に行き、壁の紋章に触れて壁を通り抜けて…。
「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
「ごめんね。今日はよろしく頼むよ」
会長さんがペコリと私たちに頭を下げると「そるじゃぁ・ぶるぅ」が早速おやつを運んできます。ボリュームたっぷりのミートパイは明らかにこの後の修羅場を乗り切るための栄養剤というヤツでしょう。夕食は健康診断が終わってからになりますしね。
「お代わりもあるから沢山食べてね! ブルーが栄養つけときなさい、って」
ああ、やっぱり…。でも栄養剤だと分かっていても美味しいものは美味しいです。みんなでパクついていると、会長さんが風呂敷包みを取り出しました。
「これの中身は分かるかな? ぼくも忘れていたんだけれど」
「「「え?」」」
「健康診断の通知が届いたら思い出したんだ。…ほら、ブルーが作ったノルディの人形」
私たちの顔がサーッと青ざめ、キース君が。
「わ、分かったから出さなくていい! 俺も思い出した。確かジルナイトとか言っていたな?」
「うん。ノルディの身体とシンクロさせられる人形だよ」
それはサイオンを伝達しやすいジルナイトという鉱石で作られた人形。元々は会長さんが悪戯で教頭先生の人魚姿の人形を作って遊んでいたのが発端です。エロドクターを封じるのに使えるかも…、と思い付いたまではいいのですけど、本人そっくりに出来ていないと効果が無いため、会長さんは作りたくなくて…。
「あいつが普通の人形を作ってくれていたらマシだったんだが…」
溜息をつくキース君。「あいつ」というのは会長さんのそっくりさんのソルジャーのことで、エロドクターの人形はフルヌードでポージングしているのでした。
「ブルーには言うだけ無駄ってヤツさ。だから普段は存在自体を忘れるように自分に暗示をかけているわけ。…でも、健康診断の時には役に立つから」
「今回も痛覚とシンクロさせたのか?」
「それが一番効果的だろ? で、君にお願いしたいんだけど」
「また俺か…」
いいけどな、とキース君が包みを預かっています。エロドクターが何もしなければ人形の出番は無いのですけど、果たして今日はどうなることやら…。
年に一度の会長さんの健康診断が行われるのはエロドクターの豪邸の隣に建っている診療所。予約の時間に合わせてタクシーに分乗して着くと、扉には『本日休診』の札が。会長さんが行く時はいつもこうです。受付の人もスタッフもおらず、いるのはドクターただ一人。
「…今、ふと思い付いたんだが…」
キース君が扉の前で会長さんを振り返りました。
「なんでドクターは野放しなんだ? 教頭先生の家に一人で行くのは禁止されてると言っていたな? だったらドクターも同じだろう? ゼル先生とかに付き添いを頼めばいいんじゃないか?」
あ。それはそうかもしれません。エロドクターはお医者さんですけど、危険度は教頭先生の比ではない筈。そんな所へ会長さんを一人で健康診断に行かせるだなんて、長老の先生方は何を考えているんだか…。
「ノルディは後発部隊だからだよ。危険視されていなかったんだ」
最初からね、と会長さん。
「だって、ゼルたちから見れば百歳も下の若造だし…。つまり、ぼくから見ても百歳下だとブラウたちも端から思い込んでる。ぼくが相手にするわけもないし、ノルディが熱を上げても無駄だ、って」
「しかし…。現に危険があるわけだろう? 事情が変わったと説明すれば…」
「ぼくが挑発したって事実を告白しないとダメなんだよ? キスマークをつけることが出来たら抱かせてやる、と言ったってことをゼルたちの前で白状しろと? …しかもドジを踏んでその条件を飲む羽目になっただなんて言いたくないね」
ぼくのプライドが許さない、と会長さんは唇を尖らせています。エロドクターの毒牙と自分のプライドを秤にかけたらプライドが勝つというのが凄いですけど、いい加減、白状すればいいのに…。
「それにノルディがブラックリストに入ったりしたら、ぼくだけの問題じゃ済まなくなるんだ」
「「「え?」」」
「サイオンを持つ仲間を専門に診られる医者はノルディしかいない。その医者がセクハラでマークされちゃうと大変なんだよ。今は単なる同性愛者で済んでいるけど、ソルジャーにセクハラしたとか強姦しようとしているとかが表沙汰になったら懲戒免職」
それは絶対に避けないと…、と会長さんは大真面目でした。
「代わりになれる医者が育ってくるまで我慢するしかないわけさ。ぼくが悪戯心を出さなかったら、ノルディも指を咥えて見ているだけで終わっただろうし、ゼルたちは今もそうだと信じてる。…仮に君たちが訴え出たとしても、ぼくは全力で否定するからね」
ノルディを失うわけにはいかない、と言い切った会長さんに、キース君は「分かった」と頷いて。
「あんたが覚悟を決めてるんなら俺たちの出る幕じゃない。セクハラの危機を回避できるよう、地道に努力するまでだ。しかし、あんたも大変なんだな…。自業自得と言えなくもないが、ソルジャーの肩書きは思った以上に重たいらしい」
行くか、とキース君が扉を開いて診療所に足を踏み入れました。サム君が会長さんをガードして続き、その後ろに私たちと「そるじゃぁ・ぶるぅ」がズラズラと。煌々と明かりが灯った待合室に人影は無く、受付もやはり無人です。その奥の診察室から白衣のエロドクターが満面の笑みで現れて…。
「ようこそ。お待ちしておりましたよ。…今年もお供を大勢お連れのようですね」
「ボディーガードと言ってほしいな。健康診断は欠かせないから仕方ないんだ」
「ソルジャーの健康チェックを怠るわけにはまいりませんよ。それでは早速始めましょうか」
あちらで着替えを、と促すドクター。更衣室に向かう会長さんにはサム君がピッタリくっついて行き、その一方でキース君が風呂敷包みを取り出すと。
「…こいつの中身は分かっているな? ブルーにおかしな真似をしてみろ、力一杯ぶん殴る!」
「おやおや、例の人形ですか? 私は暴力には反対ですよ」
「人形を殴っても傷害罪にはならないそうだぞ。法律は呪術の存在を認めていない」
「そうきましたか。お互い平和にいきたいものです」
ブルーに会うのも久しぶりですし…、とエロドクターはニヤニヤしています。去年は会長さんにプロポーズしようと指輪を用意してましたからセクハラは全く無かったのですが、今年は何が起こるのでしょうか…?
検査服に着替えた会長さんが更衣室から出てくると、私たちは揃って診察室へ。まずは問診で、この辺はセクハラの危険はありません。聴診器や血圧計が出てくる辺りからドクターの手つきがアヤシイ感じになる筈ですけど…。あれ…?
「…今年も普通って感じじゃない?」
スウェナちゃんがそう言ったのは私と一緒に待合室へ戻った後。心電図から後は女子は放り出されてしまうのです。そりゃあ…検査服をキッチリ着込んだままでは心電図は取れませんものね。
「んーと…。やっぱり普通に見えた?」
「どう見ても普通のお医者さんだったわよ? 前はもっとベタベタ触って、採血なんかサドじゃないかって思うくらいに痛そうな針の刺し方してたけど…」
去年はそうじゃなかったわよね、とスウェナちゃん。
「また下心があるのかしら? 懲りずにプロポーズしてくるとか?」
「さあ…」
エロドクターの発想が分かるようになったら終わりじゃないか、という言葉が口まで出かかったのをゴクリと飲み込み、待合室で大人しく待っていると。
「お疲れ様でした。一週間後に結果を聞きにいらして下さいね」
「分かってるよ。…着替えてくるから、タクシーを呼んでおいてくれるかな?」
会長さんと男の子たちが診察室から出てきました。キース君が握り締めている風呂敷包みが解かれた形跡はありません。もしかしてエロドクターが改心したとか、そういう素敵なオチだったりして…?
「…さっきブルーがタクシーを呼べと言ってなかったか?」
更衣室へ行った会長さんとサム君が扉を閉めた後で口を開いたのはキース君です。着替えはすぐに済むんですから、タクシーを早く呼ばないと…。けれどドクターは動こうとせずに。
「確かめたいことがありましてね。…ああ、ブルーが戻ってきたようです」
制服に着替えた会長さんが「タクシーは来た?」と尋ねると、エロドクターは。
「まだですよ。それよりも…。先日、不思議なものを見かけました」
「…不思議なもの?」
「ええ。狐に化かされたか、はたまたこの世の終わりが来たかと大いに驚きましたとも。あなたとハーレイが仲良く腕を組んでチャペルに入って行きましたよ。…ホテル・アルテメシアでね」
「「「!!!」」」
エロドクターが何を見たのか、誰もが瞬時に理解しました。会長さんが教頭先生とバカップル・デートをした時のブライダルフェアのスペシャル・コース。チャペルで記念写真を撮りに出掛けていった所を目撃されていたのです。
「はて、私は幻を見たのでしょうか? 医師会の集まりで多少飲んではいましたが…。もしも事情を御存知でしたら、ぜひ説明して頂きたい。平和にお話合いをしたくて今日は控えていたのですよ」
触ったり色々としたい気持ちを抑えてね…、とエロドクター。えっと、平和にお話合いって、何を話そうというんでしょうか? セクハラを我慢してまでお話合い…。ヤバイんじゃあ、と私たちの背中に冷たいものが流れた時。
「…いいねえ、平和にお話合い。ぼくも一緒に説明とやらを聞きたいな」
フワリと紫のマントが揺れて、現れたのはソルジャーでした。
「ブルーの健康診断は面白いから、ちょっと覗き見してたんだけどね。今年のノルディも紳士的だったし、素敵なことがあるんじゃないかと思っていたら…。ブルーとハーレイが腕を組んでチャペルに入って行ったって? それが幻覚ならノルディの頭も末期かな」
クスクスクス…と笑いを漏らすソルジャー。果たしてソルジャーは何処まで知っているのでしょう? バカップル・デートもコッソリ覗き見してそうですけど、このタイミングで来なくても…。でも、エロドクターは嬉しそうに。
「これはこれは…。ようこそいらっしゃいました。お話合いは人数が多いと盛り上がりますしね」
こちらへどうぞ、と待合室のソファを勧めるエロドクター。この二人が組むとロクな結果になりません。そうなる前にお話合いを済ませてサッサと帰ってしまわなきゃ…。
「さて、ブルー。…御説明して頂けますね? 手帳にメモもしておりますし、幻覚ではなかったと思うのですが」
この日でしたね、とエロドクターが読み上げたのはバカップル・デートの日付とブライダルフェアの会場にいた頃の時刻。会長さんはウッと息を飲み、視線を宙に彷徨わせています。エロドクターがお話合いを持ち掛けて来た目的は? 私たち、無事に帰れるのかな…?
ドキドキ、ワクワク、ドッキンドッキン。
胸の鼓動と共に気分も高まる。ミュウたちの船、シャングリラに住む悪戯小僧の「そるじゃぁ・ぶるぅ」、只今5歳と6ヶ月。期待に輝く瞳の先にはモニターがあった。
「6月15日、そるじゃぁ・ぶるぅ、生後1999日…っと」
もうすぐだもんね、とモニターに並んだ数字を眺める。それは「そるじゃぁ・ぶるぅ」が生まれて間もなく、大好きなブルーが取り付けてくれたモニターだった。
生まれたと言うか、ブルーの部屋にヒョコッと出現したと言うべきか。5年6ヶ月前のクリスマスの朝、ブルーのベッドの傍らで目覚めた時より前の記憶は無いから、その日が誕生日ということになった。それ以来「そるじゃぁ・ぶるぅ」が生きて来た日数を示しているのがモニターの数字だ。
「明日には2000になるんだもん! プレゼント、何が貰えるかなぁ?」
すっごく楽しみ、とゼロが三つ並ぶであろう明日を夢見る。ブルーはきっとお祝いをしてくれるだろう。誕生日よりも特別な何かを貰えることは確実で…。
「1000日目の時は乾杯して食事したもんね。もうすぐ2000日だよ、って言いに行ったら、ブルー、とっても喜んでたし! 何かくれる? って聞いたら、考えておくって言ってくれたし!」
ブルーは約束守るもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」はモニターを見詰め、プレゼントに胸を高鳴らせる。特大のケーキか、土鍋グッズか。それともブルーが用意してくれた思いがけないサプライズか。
「2000日記念のリサイタルもいいよね、劇場を貸し切って思いっ切り!」
歌って踊ってお祝いだぁ! と飛び跳ねてゆく「そるじゃぁ・ぶるぅ」は自分の歌がシャングリラの住人たちにとって迷惑以外の何物でもないことを未だに悟っていなかった。ついでに悪戯の方も一向に止む気配は無い。
2000日近くも歌と悪戯に悩まされて来たミュウたちにしてみれば、お祝いどころではないのだが…。そこに思いが及ぶようなら「そるじゃぁ・ぶるぅ」はとっくの昔に良い子になっているだろう。
生後1999日目の悪戯小僧は相変わらずで、その日もシャングリラのあちこちで悲鳴と怒号が響き渡った。静かだったのは「そるじゃぁ・ぶるぅ」がショップ調査とグルメ三昧のためにアタラクシアの街へ降りていた間だけのこと。
船内の様子を常に把握しているソルジャー・ブルーは青の間から全てを見通し、深い溜息を吐き出した。
「…明日で2000日なのは確かだけどね…。ぶるぅ、ぼくは考えておくって言ったんだよ? お前がいてくれるのは嬉しいけれど、褒められることが無いんじゃねえ…」
プレゼントどころじゃないんだけどな、と呟くブルーの嘆きは、悪戯小僧の耳には届いていなかった。ブルーの心にはお構いなしに悪戯しまくり、噛みまくり。それでプレゼントを貰う気なのだから厚かましいとしか言いようがないが、そこが「そるじゃぁ・ぶるぅ」ならでは。
「お前は永遠に子供なんだ、ってフィシスの占いに出ていたからには仕方ないけど…。少しは成長して欲しいとも思ってしまうのは我儘かな?」
2000日になろうというのにこれではねえ…、と零すブルーの思念の先では「そるじゃぁ・ぶるぅ」がキャプテンの腕に噛み付いていた。厨房で試食と称して鍋からガツガツ食べていたのを止められたのが原因らしい。鍋の中身は殆ど食べ尽くされてしまった後で、シャングリラの食堂の夕食メニューは今日も一品減りそうである…。
悪戯小僧が待ち焦がれていた2000日目の6月16日。
早起きをしてモニターを見に行った「そるじゃぁ・ぶるぅ」は歓声を上げた。
『そるじゃぁ・ぶるぅ、生後:2000日』の文字がモニターに燦然と輝いている。ついに来たのだ、待っていた日が。
1000日の二倍、2000日。1000日目でもブルーは乾杯してくれた。その倍となればお祝いも二倍、それとも二乗とやらで四倍だろうか?
ドキドキ、ワクワク、ドッキン、ドッキン。
早くブルーが起きないかな、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は胸を躍らせる。流石に身体の弱いブルーを叩き起こしてまで祝ってくれとは言えないし…。
「んーと、んーと…。まだ寝てるよね? ブルー、朝御飯だって遅いんだもんね」
まだかなぁ? と思念で青の間を探り、部屋の主が眠っていることを知ってガッカリしたが、待っている間に食事を兼ねて朝の悪戯をしてくればいいのだと思い直す。
「うん、ぼくだってお腹減ってるもん! 育ち盛りで食べ盛りだもん!」
沢山食べなきゃいけないもんね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は食堂に突撃して行った。まずは目についた料理から。スープにオムレツ、ソーセージ。それにサラダにベーコンエッグに…。
「うわぁ、盗られた!」
「そっちに行ったぞ、早く捕まえろ!」
「いや、キャプテンだ、誰かキャプテンを呼んでこいーっ!」
上を下への大騒ぎになった食堂の中を縦横無尽に駆け抜けた後は厨房だ。朝からガッツリ食べたいクルーのために大鍋で煮ているシチューの匂いが食欲をそそる。
「かみお~ん♪ 一番に味見してあげるね!」
「うわぁぁっ、来るなぁーっ!」
おたまを振り上げて鍋を守ろうとする調理員の頭にヒョイと飛び乗り、ピョンとジャンプして熱々の鍋を抱え込み…。火傷なんてものはタイプ・ブルーのサイオンがあれば大丈夫。鍋つかみが無くてもバッチリだ。
「いっただっきまぁ~す!」
ガツガツ、ゴックン、ズルズルズル。
食事マナーなんか知らないとばかりに音をたてまくってシチューを啜る「そるじゃぁ・ぶるぅ」を止められる猛者はいなかった。
ミュウたちの船、シャングリラ。朝も早くから今日のメニューが一品減ったのは間違いない…。
食堂を急襲し、胃袋を満たした「そるじゃぁ・ぶるぅ」は自室に戻ると土鍋に入って一休み。お気に入りの土鍋は寝心地も良く、極楽気分でぐっすり眠って目が覚めてみると時計の針は午前十時を指していた。
「ブルー、起きたかな? もう起きてるよね、行ってこようっと!」
プレゼントが待っているんだもん、とワクワクしながら青の間にテレポートした「そるじゃぁ・ぶるぅ」を出迎えたのは…。
「おはよう、ぶるぅ。2000日目の記念日、おめでとう」
横になっている日も多いブルーがベッドの脇に姿勢よく立ち、柔らかな笑みを浮かべている。体調がいいという証拠だ。ブルーが大好きな「そるじゃぁ・ぶるぅ」にとって、それはとっても嬉しいことだが、でも、しかし…。
「…えっと……。なぁに、その服?」
ブルーが纏うのは見慣れたソルジャーの衣装ではなかった。似たようなモノを挙げるとすれば、初詣の季節にたまに見かける着物とかいうヤツだろうか? それとシャングリラの夏の名物、阿波踊りの時に出て来る浴衣だ。
「ん? これはね、ぼくの大事な物なんだけど…。前にヒルマンが色違いのを着ていた筈だよ、お前のお葬式をやった時だ」
「…お葬式?」
なんだったっけ、と記憶を遡ってみれば確かにそういう事件があった。お餅を喉に詰まらせてしまい、仮死状態になっている間に仮通夜をされ、危うく土鍋に納棺されそうになった葬式騒ぎ。数珠を握って念仏を唱え続けていたヒルマンの服は緑色をした着物もどきで、大きな四角い布も着けていたような…。
「思い出したかい? これは法衣という名前で、お坊さんの服。四角いのが袈裟。…ヒルマンの服は緑だけれど、ぼくは最高の位を持っているから緋色の服を着られるんだよ。今日はお前の特別な日だし、久しぶりに引っ張り出してみたんだ」
「…んーと、んーと…。ぼく、2000日目になったんだよ? なんでお葬式?」
祝って貰えると思っていたのに、お葬式とは何事だろう? 日頃の行いを微塵も悪いと思っていない「そるじゃぁ・ぶるぅ」は困惑したが、ブルーはニッコリ微笑むと。
「お葬式なんかやらないよ。2000日目のお目出度い日だし、大事な節目だ。お前を弟子にしてあげようと思ってね」
「弟子?」
「そう、ぼくの大切な直弟子だよ。出家と言っても、ぶるぅは子供だから分からないかな? 今日からお坊さんにしてあげる。ちゃんと名前も考えたんだ」
ほらね、とブルーが広げた紙には達筆な毛筆で『小青』の文字が書かれていた。
「ぼくのお坊さんとしての名前は、ぎんしょう。銀に青って書くんだよ。そこから一字と、ぶるぅは小さいから小という字だ。読み方は『しょうしょう』なんだけど…。素敵な名前だと思わないかい?」
ぼくからの特別なプレゼント、とブルーは誇らしげに紙を掲げて見せる。
「緋色の衣のお坊さんはね、滅多な事では弟子を取らない。これ以上のプレゼントは何処を探しても見つからないと思うんだけどな」
「…2000日目のプレゼントって、それ?」
「勿論さ。そして、お坊さんの名前を貰うためには出家が必要」
心構えをきちんとね、と語るブルーは優しい笑みを湛えていたが、何がどうしてこうなったのか「そるじゃぁ・ぶるぅ」には分からない。大好きなブルーから名前を貰えるのは嬉しいけれど、お坊さんだの出家だのって、いったい何をするのだろう…?
「出家というのは、お坊さんになること。出家するには、剃度式をしないとね」
いつの間にやらブルーの手には錦の袋が握られていた。中に剃刀が入っているのだ、と丁寧に説明してくれる。
「髪の毛を剃って丸坊主にするのが正式だけど、そんな頭は嫌だろう? だから形だけ。ぼくがこれを頭に当てたら、南無阿弥陀仏と唱えるんだよ」
「…なむあみだぶつ…?」
「うん、南無阿弥陀仏が一番大切。でも、まずは誓いを立ててから。…でないと剃度式は出来ないんだ」
ブルーの赤い瞳が「そるじゃぁ・ぶるぅ」の瞳を真っ直ぐ覗き込んだ。
「日課念仏、2000回。一日にお念仏を必ず2000回は唱えます、ってね」
「えぇっ!?」
「とても簡単なことだと思うよ、お念仏を唱えるだけだから。『かみほー♪』の節で歌ってもいいし、悪戯しながら唱えてもいい。…これを約束してくれないと、名前のプレゼントは無理なんだ」
せっかくの2000日目のお祝いだけど、と聞かされて「そるじゃぁ・ぶるぅ」は涙目になった。そんなこと、無理に決まってる。大好きなブルーの名前とセットの名前は欲しいけれども、お念仏なんて…。
よりにもよって2000回。来る日も来る日も2000回では、悪戯だって消し飛びそうだ。
それなのにブルーは剃刀が入った袋を手にして微笑みかける。
「ぶるぅ、約束は簡単だよ? 誓いますか、とぼくが訊いたら「誓います」って答えるだけさ」
「無理! 2000回なんて絶対、無理!」
出来ないもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は泣き出した。『小青』はちょっとカッコイイかな、と思ったけれど、もう名前なんか貰えなくてもかまわない。ブルーが好きなのとお念仏とはキッパリすっぱり別次元。
2000日目の記念プレゼントは無しでいいや、と半ばヤケクソで泣きじゃくっていると…。
「だろうね、無理だろうとは思っていたんだ」
お灸をすえてみただけさ、とブルーが袂からハンカチを取り出し、溢れる涙を拭ってくれた。
「毎日々々悪戯三昧、食堂のメニューも食べ散らかして…。2000日目になるというのに少しもマシにならないのでは、ぼくだって脅してみたくなる。ぼくとセットの名前の話は冗談だよ」
「…え?」
「どうしても欲しいと言うならあげてもいいけど、お念仏も出家も要らないさ。その代わり、たまに托鉢するんだね」
「たくはつ?」
聞いたこともない単語に目を丸くした「そるじゃぁ・ぶるぅ」の前にブルーがテレポートさせてきたのは新品の土鍋。寝床サイズの特大鍋だ。
「はい、これが2000日目の記念のプレゼントだよ。前から特注してあったんだ」
「わぁい、土鍋だぁ! ありがとう、ブルー!」
「ただの土鍋じゃないのさ、それは。蓋を取ってごらん」
「………???」
蓋を開けてみた「そるじゃぁ・ぶるぅ」は躍り上がって喜んだ。
土鍋の中には一回り小さな二つ目の土鍋。ひょっとして、と二つ目の蓋を開ければ三つ目の土鍋。一番小さな一人鍋サイズの土鍋になるまで、合計五個もの土鍋が入れ子になったスペシャルな土鍋のセットではないか。
「凄い、凄いや! 一度にお鍋が五つも出来るよ、醤油味とか味噌味とか!」
キムチ鍋も美味しいしトマト鍋も…、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」の頭の中で鍋料理への夢が膨らんでゆく。五種類の鍋をズラリと並べて食べ放題なんて、最高だ。ブルーのプレゼントはやっぱり凄い。名前なんかよりずっと素敵で、心ときめくモノなのだから。
大感激で五つの土鍋を眺め続ける「そるじゃぁ・ぶるぅ」。その耳にブルーの声が届いた。
「ぶるぅ、名前はどうするんだい?」
「えっ、土鍋もらったから名前はいいよ?」
要らないもん、と御機嫌で五つ分の鍋のスープと具材をあれこれ考えていると…。
「その土鍋。時々は食堂に持って行くといい。お願いします、とね」
それが托鉢というものなんだ、とブルーは穏やかに微笑みながら教えてくれた。
「お前の胃袋の空き具合に見合った土鍋を選んで、厨房で頭を下げるんだ。托鉢に来ました、お願いします…って。土鍋一杯に入れてくれるか、おたま一杯かは分からないけど、気持ちよく食べ物をくれる筈だよ」
そうすれば騒ぎも起こらないよね、とブルーの瞳が笑っている。
「托鉢なんて嘘だろう、と言われた時には「小青の名前を貰っています」と答えるのさ。ぼくが銀青だっていうのは有名だから、お弟子さんとして扱ってくれる」
「…えっと…。大きな土鍋を持って行ったら沢山もらえる?」
「そこは運だね。お前の好物を貰えるかどうかも分からない。…托鉢というのはそういうものだし、貰ってしまったものは断れない。だけど、たまには頑張ってごらん。お前も我慢することを覚えないと」
2000日目になったんだろう、と大好きなブルーに頭を撫でられ、少しやる気が出て来た気がする。
ブルーから一文字貰った名前と、スペシャルな土鍋。両方揃えば托鉢だってチャレンジする価値があるのかも…。まずは一番大きな土鍋で挑戦だ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は新品の土鍋を抱え上げた。
「じゃあ、行ってきまぁーす!」
お昼御飯のメニューは何かなぁ? とワクワクしながら飛び出して行った悪戯小僧。
食堂の入口に着いた時には「托鉢でーす!」と元気一杯、胸を張って厨房に向かったのだが…。
「こらぁっ、何をする!」
「だって、足りないもん! お鍋、こんなに大きいんだもん!」
2000日目のお祝いの日だし、小青って名前も貰ったもん、と大鍋の中でグツグツ煮えていたブイヤベースをドボドボドボ…と超特大の土鍋に空ける「そるじゃぁ・ぶるぅ」は何も変わっていなかった。
いや、托鉢という大義名分を手に入れた分、パワーアップしたと言うべきか。ブルーが纏ってみせた緋色の衣と『小青』の命名は、「そるじゃぁ・ぶるぅ」の盗み食いを封じるどころか裏目に出た。
ガツガツ、ズルズル、ゴックン、ゴックン。
シャングリラの食堂の今日のメニューはまたまた一品減りそうだ。落胆したブルーが小青の名前を没収したという噂の真偽は定かではないが、五つセットのスペシャル土鍋は記念プレゼントとして贈呈されたままらしい。
小さなブルーな「そるじゃぁ・ぶるぅ」、本日で生後2000日。
悪戯小僧がブルーを連れて青く輝く地球に着くのは、遙か未来の物語である。
二千日目の悪戯小僧・了
※「そるじゃぁ・ぶるぅ」生後2000日お祝い企画にお越し下さって有難うございます。
生後2000日目になるのは6月17日になる直前ですので、16日の朝一番だと
『ぶるぅのお部屋』での表示は「生後1999日」なんですが…。
6月16日の間に生後2000日を迎えますから、6月16日が記念日です。
2007年クリスマス企画の終盤に1歳になった「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
クリスマス企画に出現した時、既に生後330日くらいだったと思います。
ですから「生後2000日」は330日ほどサバを読んでいる勘定。
5歳児だけに大目に見てあげて下さいv
「そるじゃぁ・ぶるぅ」、生後2000日、おめでとう!
ちなみに作中に出て来るお葬式ネタは『ぶるぅの一番長い日』。
ブルーと一緒に青い地球に行くお話は『赤い瞳 青い星』。
生後1000日の記念に書いたのは『幻の夜』ですv
2012年6月16日(アニテラ11話『ナスカの子』放映より5周年)
←作者を一発殴りたい方はこちらからどうぞ。
『シャングリラ学園生徒会室』直通です。
殴る、蹴る、苦情などなど、どの日の記事からでも受け付けまっすv