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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

カテゴリー「シャングリラのし上がり日記」の記事一覧

マザー、救助班補佐の最後の仕事は「梯子持ち」でした。いえ、庭師に逆戻りしたわけではありません。現場は確かに公園でしたが…梯子も庭師の梯子でしたが、ちゃんと救助班の仕事です。任務は半端に終わりましたが…。

「公園で「そるじゃぁ・ぶるぅ」遭難!…救助班、直ちに出動せよ!」
ブリッジからの緊急連絡に私たちは顔を見合わせました。公園で遭難?…それもあの「そるじゃぁ・ぶるぅ」が?半信半疑で駆けつけてみると、公園は人で一杯です。そして一番高い木の下で長老方が遥か頭上を見ておいででした。
「お~ん!お~ん!」
木のてっぺんで「そるじゃぁ・ぶるぅ」が叫んでいます。いつもの「かみお~ん♪」とは全く違う悲痛な声で。いったいどうなっているのでしょう?
「…だいたい、あんたが悪いんだよ」
ブラウ様がゼル様を吊るし上げておいででした。
「またたびアイスなんて作るから!…見なよ、救助班まで呼ぶ羽目になってしまったじゃないか!!」
「…わしは…わしは寝るかと思うたんじゃ。ほれ、ヨダレを垂らして寝るというから…。猫みたいじゃし…」
「ゼル殿。それは個体差がありますな。…興奮することもあると聞きます」
溜息まじりにヒルマン教授がおっしゃいました。どうやら騒ぎの原因は「またたびアイス」らしいです。ゼル様が「そるじゃぁ・ぶるぅ」に食べさせたら興奮して木に駆け登り、さんざん歌いまくった挙句に…降りられなくなってしまったとか。

「分かりました、救出しましょう。…いいか、サイオンを集中するんだ。集中が切れると落としてしまうぞ」
サイオンで「そるじゃぁ・ぶるぅ」を地面におろす。救助班の腕の見せ所です。ところが…。
「いかん!ぶるぅにサイオンはいかん!」
ゼル様の「待った」がかかりました。
「今のぶるぅに善意は通じん。うかつにサイオンを使ったら最後、凄まじいサイオン攻撃が来るわい」
「………。仕方ありません、登ってみましょう。梯子の用意だ!」
リーダーの指示で素早く梯子がかけられました。そして流石はリーダー、誰もが恐れる「そるじゃぁ・ぶるぅ」を救助するべく迷わず梯子を登っていきます。確かにミュウの救出作戦に比べたら大したことではないでしょう。…でも。
「…駄目です、とても怖がっています!…シールドを張ってて、近寄れません!」
上から声が降ってきました。「お~ん、お~ん」という泣き声も激しさを増しています。
「…私が行こう」
名乗りを上げたのはキャプテンでした。

マザー、やはりキャプテンは凄い方です。パニックに陥った「そるじゃぁ・ぶるぅ」のシールドを破り、ガブリガブリと噛まれながらも抱えて梯子を下りてこられました。一件落着した後、傷の手当を受けておられたキャプテンにシールドをどうやって破ったのか、と皆の質問が集中しましたが、答えてもらえませんでした。
「『女性向のお話』をクリックだ」
そう聞こえたのは多分、空耳だったと思います、マザー…。




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マザー、今日の任務は救助活動でした。ブリッジから緊急連絡があったのは昼過ぎのことです。
「調理器具保管庫で崩落!…負傷者が出た模様。救助班ならびに医療班、出動!」
負傷者が出るとは深刻な事態に違いありません。補佐といえども頑張らなければ、と先輩について走りました。保管庫に着くと、調理師の時にお世話になった皆さんが扉の前で呆然としています。
「ケガ人はどこだ!」
「あ、あの…まだ、中に取り残されてます」
「分かった。すぐに助け出す!」
救助班の皆さんは保管庫に飛び込んで行きました。私も続いて飛び込みましたが、いったいこれは…。床一面に飛び散っていたのは無数の食器の破片でした。それもかなり厚手のもので…土鍋が砕けたらこんな感じ?
「いたぞ、腰を抜かしているようだ」
「ケガは切り傷だけのようだな、背負うから手を貸してくれ」
先輩方がケガ人を助け出し、医療班に引き継ぎました。無事に任務完了です。…え?終わりじゃない?
「現場の復旧は災害救助の基本だ。別の任務が来ない限り、保管庫の片付けを優先する!」

そういうわけで、保管庫の片付けを手伝うことになりました。砕け散ったのはやはり土鍋で、私が『ぶるぅ鍋』やりたさに布教した「ちゃんこ鍋」用、そこから派生した「一人鍋用」などなど…知らない間に土鍋コレクションが出来ていたようです。それが全部壊れたのだ、と調理部の人たちは涙目でした。
「…何をしたかったのか分からない。が、棚の土鍋を片っ端からサイオンで引っ張り出していったんだ」
「そうなの。しかも出したら出しっぱなしで宙に浮かべておくんだもの…」
「最後は保管庫いっぱいに土鍋が浮いてて、それを放って出て行ったのよ!…全部落っこちて割れちゃった…」
「なるほど、状況はよく分かりました。…そんなことをするのはやっぱり…」
「「「「そるじゃぁ・ぶるぅ」です!!!」」」
事情聴取をしていた先輩の問いに、調理部の皆さんが声を揃えて叫びました。

その夜、キャプテンが救助班の部屋においでになりました。
「諸君、迷惑をかけてすまなかった。事故の責任は私にある。さっき調理部にも謝ってきた」
え?土鍋崩落事件の責任が何故キャプテンに…?
「ぶるぅに土鍋の寝心地の良さを教えてしまった。…『ぶるぅ鍋』に使った鍋はぶるぅに与えたが、もっと大きな土鍋が欲しくて保管庫中を漁ったらしい。昼間のことを叱りに行ったら特大の鍋があったのだ」
「はぁ…」
「覗き込んだら、ぶるぅが友達と一緒に眠っていたので叱りそびれた。…まるで寄せ鍋だ」
お友達と寄せ鍋…ですか。『女神ちゃん』のことですね。それはちょっと…いえ、かなり見てみたいかも。
「可愛かったので写真は撮った。しかし許せる事件ではないし、目を覚ましたら叱っておく」

キャプテンは何度も謝って帰っていかれました。胃を悪くなさらなければいいのですが。それにしても保管庫の土鍋を宙に浮かせられるなんて、「そるじゃぁ・ぶるぅ」のサイオンは並みのミュウより強いのでは…。少なくとも私にはできません。
マザー、もしかして彼はタイプ・ブルーに限りなく近い「たいぷ・ぶるぅ」ですか?




マザー、今度は救助班補佐になりました。私ごときがお役に立てる職場なのかが心配です。救助されてまだ日も浅い見習いなのに…。なんとかうまくやっていますが、救助班の仕事は多いのですね。

ゼル様が「そるじゃぁ・ぶるぅ」に新しいマイクを与えて以来、シャングリラにパワーアップした「かみお~ん♪」が響かない日はありませんでした。救助班が呼ばれて耳栓を配ったことも度々です。それなのに今日は奇妙に静か。
「静かだ…」
夕食も終わり、当直以外は自室に引き上げようかという頃、先輩がボソリと呟きました。
「歌いすぎて喉を痛めたという噂を聞いたが、静かすぎる。俺の経験からして、こんな日はろくなことがない」
「そうだな…。このまま無事に済むわけがない…」
先輩方は百物語でも始めそうな顔でテーブルを囲んで座っています。過去に何があったというのでしょうか?あのぅ、と質問しようとした時、ブリッジから緊急連絡が入りました。
「ヒルマン教授の実験農園で遭難事故発生。被害者1名、救助班、急げ!」

「うわぁ…。ビンゴ」
「よりにもよって農園かよ…」
露骨に嫌な顔をしつつも先輩方は機敏に準備を整え、飛び出します。置き去りにされないように必死で艦内を走り、実験農園へ駆けつけてみると…既に野次馬が一杯でした。私は実験農園に来たのは初めてですが。
「どけ、どけ!…これは見世物じゃないぞ!」
「そんなことを言われても…。なぁ?」
面白いじゃん、という思念が飛び交っています。そして、そこはかとなく漂う変な匂いは…?救助班補佐の立場も忘れて、私は思いきり背伸びしました。でも人の頭しか見えません。
「そうか、そうか…。そんなに救助したいか、新人?」
リーダー格の先輩に背中をバン、と叩かれました。
「では、英雄の地位を譲ろう。ほら、ロープだ。しっかり救助してやってくれ」
わっ、と笑いが巻き起こりました。状況が全く掴めないまま、私は前へ押し出され、野次馬たちが道を開け…。

ああ、マザー!…思い出したくもありません。いかに実験農園とはいえ、シャングリラに『肥溜め』があるとは知りませんでした。まして「そるじゃぁ・ぶるぅ」に「人を化かす」特技があったとは…。被害者さんの名誉のために名は伏せますが、肥溜めはとてもいい湯加減だったらしいです。「そるじゃぁ・ぶるぅ」が早くカラオケに復帰できますように…。

 

 

 

 

マザー、看護師最後の仕事はゼル様のお相手でした。怒りで血圧が上がってらっしゃったので「落ち着かせて差し上げるように」とのドクターの指示です。先輩と一緒に噛み傷の手当てもしましたが、頭を噛まれてしまわれたなんて、よほど怒らせたのでしょうか…「そるじゃぁ・ぶるぅ」を。

「あんたに言っても分からんじゃろうが、わしはちょっとよろけただけじゃぞ!」
「…ゼル様、お茶が入ってます」
「いらん!…確かに、よろけた拍子に『女神ちゃん』に軽くぶつかりはしたが、ほんのちょっとじゃ。『女神ちゃん』もニコニコしておったのに、ガブリとやられたんじゃぞ、後ろから!」
「…災難でしたね…」
「あやつ、なりきってしまっておるわ。なにが『キャロル~!!』じゃ。金髪というだけではないか!」
「あのぅ…『ナイルの姫』…ですか?」
「おお、分かるのか!ならば話は早いわい。…ハーレイめ、とんでもない本を与えおって!…当分、ごっこ遊びに振り回されるぞ。わしは噛まれた後、『おのれ、カプター大神官!』と言われたんじゃ!」
ぶっ。…『王家の紋章』を借りて読んだことを後悔しそうな瞬間でした。ゼル様がカプター大神官!ナイス・キャスティングです、「そるじゃぁ・ぶるぅ」。…っていうか、ゼル様も読んでらしたのですね、『王家の紋章』。

「わしは…わし耐えられん。わしはカプター大神官なのに、ハーレイがイズミル王子と呼ばれたりしたら!!」
「は?!」
思いきり間抜けな声が出ました。いくらなんでもミスキャストでしょう…それは。
「いいや、十分あり得るぞ!…考えてみい、イズミル王子は…イズミル王子はメンフィスの天敵なんじゃぁああ!!」
…あ。ルックスばかり考えていて、肝心なことを忘れていました。『敵』というポジションならキャプテンがイズミル王子でもよさそうです。いえ、全然問題ありません。さすがゼル様…長老だけあって妙なところで冷静です。
「いやじゃ、わしは絶対にいやじゃ!…そうなる前に、ごっこ遊びを止めさせねば。…何か、何か妙案は…」
「…歌しかないんじゃないでしょうか」
あまり言いたくない考えでしたが、シャングリラ中が巻き込まれる前に「そるじゃぁ・ぶるぅ」を止めなければ。
「カラオケか!」
「はい。…もう、四六時中、歌わせておけば忘れるかと。うるさくても構わないのでしたら…」
「構わん!ハーレイがイズミル王子と呼ばれる前に、なんとしてでも止めてみせるわ!!」
ゼル様は凄い勢いで飛び出してゆかれました。シャングリラ中に「かみお~ん♪」が響き渡る日も近そうです。

マザー、懺悔します。実はわたくし、キャプテンがイズミル王子でも別に構わなかったのですが。ソルジャー・ブルー様に妙なポジションが振られたら困る、とただそれだけを考えてました。ネバメンとか、ネバメンとか、ネバメンとか…。




マザー、今日はキャプテンが胃薬が欲しいと言ってこられました。皆様のお部屋に『置き薬』を配るのも看護師の仕事で、キャプテンのお部屋の分は今朝、補充した筈ですが…。胃痛が酷くなられたのでしょうか?

「…ドクター、本当に困っているのだ。胃薬はどれも同じだと思ったのだが…」
「口に合わないということもあります。子供に多いケースです」
「なるほど、ならば納得がいく」
あらら?…キャプテン用ではないようです。
「アヒルから離れないので、下痢止めを飲ませようとしたら噛まれた」
「はぁ…これは痛そうですね」
ドクターがキャプテンの腕を診て、傷薬と包帯を持ってくるようおっしゃいました。手際よく手当てなさいます。
「で、下痢は止まっているのでしょうか?」
「そもそも下していなかったようだ。ひきこもりたい気分だったらしい。…それとも浪漫に浸っていたのか?」
「なるほど…。意外にデリケートですな」
「アヒルで読書中でもあった。デリケートならそんな所で本は読まない」

胃薬は「そるじゃぁ・ぶるぅ」用みたいです。今日も読書をしているんですか…。
「しかも私の本なのだ。気に入ったとは分かっていたが、2巻以降は複製が出来てから渡せばよかった。…アヒルから離れさせようとアイスで釣ったら、食べすぎたらしい。ムカムカすると訴えたので私の薬を飲ませたのだが…」
「吐き出してしまったんですね」
「ああ。…胃が痛むのか、本も読まずに丸まっている。子供用なら飲めるだろうか?」
「放っておいても治りそうですが、その前にキャプテンが胃薬のお世話になりそうですし…」
ドクターはサラサラと処方箋を書き、先輩の看護師に手渡しました。
「この薬をキャプテンに。…棒つきキャンデーも一緒に頼む。一番大きいソーダ味のだ」

マザー、看護チームに来ても「そるじゃぁ・ぶるぅ」から逃れられません。どうせなら「お体が丈夫でない」というソルジャー・ブルー様のために看護師の仕事をしたいのですが…。あ、『王家の紋章』は貸出し中になっていました。出版部が複製を作るためだそうです。さきほど聞いた話からして、キャプテンが「そるじゃぁ・ぶるぅ」用に発注されたのでしょう。ジャンルは少女マンガでした。内容とキャプテンの蔵書リストが気になります、マザー…。




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