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シャングリラ学園シリーズのアーカイブです。 ハレブル別館も併設しております。

健康診断は1年生から順に保健室へ行くことになりました。まりぃ先生が一人でなさるので、まずはA組女子からだそうです。体操服に着替えて保健室前の廊下にズラッと並んでいると…。
「かみお~ん♪ぼくも一緒に並んでもいい?」
現れたのは体操服を着た「そるじゃぁ・ぶるぅ」。健康診断に興味を持っているのでしょう。でも今は女子の時間です。スウェナちゃんと私の間に並ぼうとした「そるじゃぁ・ぶるぅ」にスウェナちゃんが注意しました。
「あのね、今は女の子の時間なの。A組の教室でジョミーたちが順番を待っているから、そっちに混ざった方がいいわ」
「そう?…でも、球技大会は1位を取らなくていいの?取りたいんなら…ぼくが混ざってた方がいいと思うな」
「「「え?」」」
A組女子の視線が「そるじゃぁ・ぶるぅ」に集中します。グレイブ先生は1位がお好き。球技大会でも1位を望んでらっしゃいますが、取れなかった場合どうなるかを聞いていなかったので特に気に留めていませんでした。
「1位を取れなかったら、グレイブ、絶対怒ると思うよ。シャングリラ学園じゃ球技大会は男女別。種目はドッジボールに決まってて…どっちかのチームの内野が0人になるまで延々と試合が続くんだけど」
ひえええ!…それは根性が要りそうです。ついでに逃げ足も。
「ぼく、最後の一人になるまで逃げ回るくらい簡単だよ?みんなと一緒に健康診断を受けたら、ぼくの所属はA組女子になると思うな」
「「「ぜひ!!」」」
どうやって女子になるつもりかは分かりませんが、球技大会1位のためなら細かいことは言っていられません。私たちは大喜びで「そるじゃぁ・ぶるぅ」を順番待ちの列に加えたのでした。健康診断は順調に進み、スウェナちゃんと私も「そるじゃぁ・ぶるぅ」を連れて保健室の扉をくぐりましたが。
「あらぁ?…センセ、ちょっと疲れてきたのかしら。男の子が混じって見えるんだけど?」
まりぃ先生の指摘に「そるじゃぁ・ぶるぅ」はエヘンと胸を張りました。
「ぼく、A組女子に混ぜてもらいたいんだ。いいでしょ?まだ1歳にしかなってないもん」
「そうねぇ…。6歳未満の男の子は女湯に入れるんだっけ。許しちゃおうかな?どうしよっかな~?…えっと…まずはスウェナちゃんからね。身長を測るからここに立って」

計測と問診が終わると、次に呼ばれたのは私でした。「そるじゃぁ・ぶるぅ」は…ダメなんでしょうか?健康診断をして貰えなかったらA組女子にはなれません。球技大会1位のために助っ人はどうしても欲しいんですけど。
「はい、みゆちゃんも異常なし!…で、ぶるぅちゃんは…健康診断、受けたいのかな?」
「うん!…えっと、ぼく、男の子なんだけど…『せくはら』するの?」
まりぃ先生がゲホッ、と咳き込みましたが、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は無邪気にニコニコ笑っています。セクハラという言葉の意味を知らないに違いありません。
「ゲホゲホ…。んまぁ、可愛いわねぇ。じゃ、センセが健康診断をして…あ・げ・る。はい、こっちで身長を測るわよ。次は体重ね♪」
身長、体重までは私たちと同じでした。ところが…。
「今度は胸囲を測るんだけど、男の子は上半身裸で測ることになってるの。脱いでくれるかしら♪」
あひゃあ!もしかして、これがセクハラもどき?息を飲んだ私たちでしたが、次の瞬間。
「かみお~ん!!」
パパパパパパッ!なんと「そるじゃぁ・ぶるぅ」は体操服の上下ばかりか下着まですっかり脱いでしまいました。まりぃ先生の指示を勘違いしてしまったようです。スッポンポンの「そるじゃぁ・ぶるぅ」は幼児体型で可愛いですけど、えっと、えっと…どうなってしまうのでしょう?
「きゃぁぁあっ、なんて素直な子なの!センセ、嬉しくなっちゃうわ」
まりぃ先生は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のスリーサイズを素早く測り、ついでに小さな身体をあちこちペタペタ触りまくって。
「いやぁん、ぷにぷにのぽやぽや~!うんうん、A組女子でオッケーよん♪あぁぁ、なんて幸先がいいのかしら!」
もしかしてショタの気もありますか、まりぃ先生?…でも「そるじゃぁ・ぶるぅ」は全く気にせず、服を着ていいと言われるまで裸のまま問診に答えていました。とりあえずA組女子は「そるじゃぁ・ぶるぅ」という心強いクラスメイトを見事にゲット。教室で待機している男子と入れ替わるためにクラスに戻ると…。

「やぁ、ぶるぅ。…無事にA組女子になれたようだね」
教室の一番後ろに机が増えていて、水色の検査服を着た生徒会長さんが座っていました。
「ぶるぅは机は要らないだろう?…ぼくも球技大会までA組にいることにしたんだ。1位を目指すクラスに貢献するのも悪くない。じゃ、ぼくは健康診断に行ってくるから」
会長さんはゾロゾロと出て行く男の子たちの列の最後尾に並び、まりぃ先生の待つ保健室へ。セクハラ疑惑を知っているのはスウェナちゃんと私だけですし、不安でも相談する人が…。
「大丈夫かしら、ジョミーたち」
「…そるじゃぁ・ぶるぅ相手でもアレだったもんね…」
その「そるじゃぁ・ぶるぅ」はとっくに部屋に帰ってしまって姿が見えませんでした。やがて男の子たちが教室に戻り始めましたけれど、女子の時より時間がかかっているのは確かです。中には明らかに気分が高揚していると分かる生徒や、落ち込み気味の生徒の姿も。ジョミー君は頬を赤らめて帰ってきましたし、マツカ君は暗い顔でした。キース君が不機嫌そうに戻ってきて、深い溜息をつきながら。
「まりぃ先生、やっぱり今日も燃えているぞ。会長がノコノコやって来てたが、今日ばかりはマジでヤバイんじゃないか?」
「…ですよね…。ぼく、いつも以上に触られまくった気がします」
そう言ったマツカ君の横でジョミー君が頷きました。
「ぼくなんか「全部脱いじゃったらどうかしら?」って言われたよ。脱いでくれるかしら、と言ったら素っ裸になったヤツがいるんだってさ。…誰だろうね?」
あちゃ~。「そるじゃぁ・ぶるぅ」のことに違いありません。まりぃ先生、そういえば「幸先がいい」とか言ってましたっけ。あぁぁ、会長さん、大丈夫かな…。まさか無理やり脱がされたりは…。

「脱がされたりはしてないよ?」
笑いを含んだ声が聞こえて会長さんが帰ってきました。ストン、と椅子に座ると検査服のまま足をゆったりと組んで。
「せっかくだから脱いでみようと思ったんだけど…ちょっと困ったことになってね。ほら」
見てごらん、と会長さんが指差したのは鎖骨のそばの白い肌にくっきりと浮かんだ赤い痕でした。こ、こ、これって…もしかしなくてもキスマーク!?
「まりぃ先生、仕事をすっかり忘れちゃってさ。ぼくは別に構わないけど、健康診断ができなくなると大変だし…また夢を見せて特別室に置いてきたよ。で、ハーレイ…いや、教頭先生を呼んで、健康診断の続きはヒルマン先生にバトンタッチして貰うよう頼んできたんだ」
ふぅ、と息をついた会長さんの肌に残された赤い痕から目を離せないまま、私たちは真っ赤になっていました。まりぃ先生が夢の世界に送られたってことは、会長さんの勝利でしょうけど…。会長さん、余裕ありすぎです。心臓がドキバクしてますよぅ~!
「ぼくを何歳だと思ってるんだい?…百年もすれば君たちだって平気になるさ」
クスクスクス。会長さんは検査服の襟元を閉めて赤い痕を隠し、教室をグルッと見渡しました。
「そんなことより、球技大会の心配をした方がいいと思うよ。女子はぶるぅが1位を勝ち取ってくれるだろうけど、男子はどうする?…ジョミー、キース、マツカ…君たちが希望するなら手を貸そう。ぼくもA組の生徒なんだし」
「「「お願いします!!!」」」
即答したのはジョミー君たちではなく、教室中の男子生徒でした。土下座している人までいます。会長さんは苦笑しながら申し出を受け入れ、A組男子も1位への道をゲットしました。よ~し、ドンと来い、球技大会!




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見損ねてしまった親睦ダンスパーティーのワルツ。発売された公式録画を買った私は、帰宅するなり再生しました。本当は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋で見ようとしたのですけど、ジョミー君たちが「照れるから家で見てよ」と言ったんです。うわぁ、流れるようなステップが素敵。「壁の花になりたい」発言をしたアルトちゃんは途中でまりぃ先生と入れ替わったんですね。それに…まりぃ先生、私たちが体育館に戻ってくる前に教頭先生とタンゴを踊っていたなんて!…そのまりぃ先生のお色気が5割増になった原因が、生徒会長さんの保健室通いだったとなると…なんだか心配になってきました。会長さんとまりぃ先生、まさか本当に大人の関係?

会長さんとまりぃ先生のことが気がかりで、私はろくに眠れませんでした。寝不足の頭で登校すると…。
「諸君、おはよう」
グレイブ先生が今日も軍人みたいにカッカッと靴音をさせて現れました。
「突然だが、明日は健康診断がある。まりぃ先生の意向で球技大会に備えて実施することになった。全員、体操服を用意して登校するように」
げげっ!そんな急に言われても心の準備がありません。今更ダイエットなんか間に合わないし。あちこちで女子のブーイングが上がりましたが、グレイブ先生は涼しい顔で。
「健康診断は抜き打ちだからこそ意味がある…のかもしれないな。いいか、明日、食事抜きで来て倒れるような輩が出たら容赦はしない。該当者には向こう1週間、特別に宿題を出すことにする。むろん数学だけではないぞ。各自の弱点克服のため、苦手科目を加えておく」
うわぁぁ!…こんなことを言われちゃったら、食事を抜いても無駄ですよね。いっそヤケ食いしてもいいかも…。そんなわけで私とスウェナちゃんは普段どおりに昼食を食べ、放課後は「そるじゃぁ・ぶるぅ」のお部屋へ。今日はカロリーが高そうなチーズケーキが待っていました。ジョミー君とサム君は早速パクつき始めましたけど、スウェナちゃんと私が一瞬ためらったのを「そるじゃぁ・ぶるぅ」は見逃しません。
「どうしたの?…チーズケーキは嫌いだった?」
「ううん、そうじゃなくて。…太るかなぁ、って」
「太る?…二人とも急にどうしたの?」
キョトンとしている「そるじゃぁ・ぶるぅ」。紅茶を飲んでいた会長さんがクスクスと笑い出しました。
「明日は健康診断だそうだよ。だから体重を気にしているのさ」
「そっか。…ぼく、検査票に手形を押してあげようか?」
検査票に手形。そりゃ、パーフェクトにはなるでしょうけど…。
「ぶるぅ、女の子に失礼だよ。乙女心は複雑…だよね?」
うう。ウェディング・ドレスが似合う超絶美形の会長さんには、私たちの悩みなんて分からないでしょう。スウェナちゃんと私はチーズケーキのお皿を引き寄せ、ヤケクソで食べ始めました。ああ、でも…悔しいけれど、とってもとっても美味しいですぅ…。おかわりっ!

チーズケーキが無くなった頃、部活を終えたキース君たちがやって来ました。お腹を空かせた3人のために「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお好み焼きを焼き始めます。お決まりのコースで、いつもは私もスウェナちゃんも『おやつの追加』とばかりに食べるんですけど、さすがに今日は…。
「どうした、具合でも悪いのか?…それとも焼きソバ気分だったか?」
「今日は我慢してるんだよ。明日は健康診断だから」
キース君の言葉に即答したのはジョミー君です。
「なるほど、体重が気になる…か。俺に言わせれば体重なんか大したことではないんだがな」
「男の子には分からないわよ!とてもデリケートなことなんだから!!」
スウェナちゃんがブチ切れましたが、キース君は溜息をついて。
「…体重くらいで騒げる女子は幸せなんだぞ?…俺たちは明日はセクハラの危機だ」
「「セクハラ!?」」
見事にハモッた私たちの声に、柔道部の三人が頷きました。キース君、シロエ君、マツカ君。いったい何を知っていると…?
「…ぼくたち、運動部ですからね…。健康診断、よくあるんです…」
か細い声のマツカ君。
「そうなんです!…で、まりぃ先生の所に行くんですけど、まりぃ先生の好みに合った生徒の健康診断はいつだって特に念入りで!」
拳を握り締めたのはシロエ君。
「…筋肉の様子を調べるとか言って腕を撫で回すくらいは序の口だな。筋肉は腕だけに限ったわけではないし」
キース君が肩をすくめて言いました。
「そんなわけだから…ジョミーとサムも覚悟しておけ。俺の情報網によると生徒会長が一番ヤバイが、健康診断を受けずに済ませていると聞いたし、矛先は他に向くと思うぞ」
「ふぅん?…まりぃ先生がぼくを待ってるのか…」
のんびりとした口調で会長さんが呟いた時、フィシスさんが部屋に入って来ました。会長さんの隣に座ったフィシスさんに「そるじゃぁ・ぶるぅ」がお好み焼きのお皿を渡します。
「せっかく待ってくれているのに、行かないとガッカリされちゃうかな?…どう思う、フィシス。ぼくは健康診断に行くべきだろうか?」
「…健康診断は体操服で、と聞きましたわ。体育にはお出にならないのですし、体操服が無いではありませんか」
えっ、会長さんは体育の授業は不参加?虚弱体質っていう噂は本当だったのでしょうか。
「さぁ、どうだろうね?…体操服を持ってないのは事実だけど」
会長さんの顔に悪戯っぽい微笑が浮かびました。
「今日、ハーレイの所に検査服が届けられたみたいだよ。ハーレイはぼくの担任だけど、健康診断のことも検査服のことも…ぼくに伝えてはこなかったな。セクハラ疑惑も聞いたことだし、明日は検査服を着て健康診断に行ってみようか。ほら、こんなヤツ」

言い終わった途端、会長さんの制服は浴衣みたいな水色の検査服に変わっていました。バスローブほどではありませんけど、鎖骨とか…浴衣より短い裾からのぞいている白い足とか、胸がドキドキしてきます。こんな格好で出かけていったら、まりぃ先生の思うツボでは…。
「似合うかい?…体操服より検査っぽくていいだろう?」
「好きになさって下さいな。…よいではないか、と言われても私は知りませんわよ」
「大丈夫。帯はついてないから、帯回しなんてできっこないさ」
帯回しというと、もしかして時代劇で有名な…。まりぃ先生ならやりかねないような気がします。でも会長さんは健康診断に行く気満々で、フィシスさんも止めはしませんでした。どうか健康診断が無事に終了しますように!…あ、でも…その前に…。気がかりなことがあるんでしたっけ。セクハラ疑惑もあるという健康診断にわざわざ出かけようという生徒会長さんはやっぱり、まりぃ先生と…?
「…夢以上のサービスはしてないよ」
えっ?
「まりぃ先生には夢を見せてあげてただけなんだけど。…言っただろう、ぼくは昼寝がしたかったんだ。運動なんて面倒じゃないか」
パチン、とウインクする会長さん。私たち1年生はキース君を除いて全員真っ赤になってしまいましたが、フィシスさんは平然としています。会長さんの健康診断、まりぃ先生と会長さんのどちらが勝者になるのでしょうか…。 




明らかに乱れたベッドの上に寝転がっている会長さん。身体に巻きつけたシーツの下はバスローブ1枚で、少し離れたソファで爆睡中のまりぃ先生もバスローブ。私たち5人が踏み込んでしまったのはどう見ても大人の世界でした。
「し、失礼した!」
キース君が叫び、我に返った私たちは真っ赤になって部屋を飛び出そうとしたのですが。
「失礼って、何が?…ぼくは昼寝をしてただけだよ。君たちの純情さには感動するね」
会長さんはゆっくりと起き上がり、バスローブを肩から滑らせました。透き通るように白い肌が覗いた…と思った次の瞬間、目に入ったのは見慣れた制服。きっちりと着込んだ会長さんには一分の隙もありませんでした。惜しげもなく晒されていた足もしっかりズボンと靴で隠れています。
「「「え?えぇぇっ!?」」」
何が起こったのか把握できない私たち。制服は床に落ちていた筈なのに…。
「ぶるぅがダンスパーティーでやって見せただろう?…一瞬で着替え。ぶるぅに出来ることがぼくに出来ないなんて思っていたんじゃないだろうね?」
そういえばそんなことがありましたっけ。でも、一瞬で着替えはともかく…乱れたベッドとバスローブの理由は?昼寝だけだなんて、絶対変です。まりぃ先生もバスローブしか…着てらっしゃらないみたいですもん。キース君は懸命に平静を装っていますが頬がピクピク引き攣ってますし、ジョミー君とマツカ君の頬は赤いまま。スウェナちゃんも真っ赤な顔をして両手で口を覆っています。
「…ああ、バスローブ、ね。まりぃ先生が用意してくれていたんだよ。ぼくを保健室に連れてくるよう、アルトさんとrさんに頼んでるのを知っていたから…A組に入ったついでに連行されてみたんだけど」
「じゃあ、気分が悪くて倒れたんじゃなくて…わざと?」
ジョミー君の問いに会長さんは悪びれもせず頷きました。
「うん。いい加減、退屈していたし…ちょうどハーレイ…いや、教頭先生の授業だったし。教頭先生はまりぃ先生と親しいからね、特別室の存在を知っていたんだ。ぼくを保健室に近づけまいと思っている教頭先生の前で倒れて保健室行きっていうのは楽しいじゃないか」
あ。それで教頭先生は早退させようとなさってたんですね。会長さんはその裏をかいて…。
「そう。教頭先生は授業が終わってから慌てて様子を見に来たんだけど、とっくに手遅れ。『おでかけ中』の札を見つけて呆然とした後、入りもせずに帰っていった。入ってみればよかったのに。…ぶるぅがベッドをトランポリンにして跳ね回っていた時だったから、華麗な技が見られた筈だよ。ムーンサルトとか」
「「「トランポリン!?」」」
「せっかくの大きなベッドだからね、少し遊ばせてやろうと思って。よく弾むから喜んでいたよ。放っておくといつまでも跳ねていて、ぼくの寝る暇が無さそうだったから…半時間ほどで追い返しちゃったけど」
ベッドの上で「そるじゃぁ・ぶるぅ」がトランポリン。じゃあ、くしゃくしゃのシーツの原因は…。

「ぶるぅだよ。他にいったい何があると?」
「…何が、って…」
私たちはソファで寝ているまりぃ先生の方を見ました。バスローブ姿の会長さんと、まりぃ先生が特別室で二人きり。しかも大きなベッドつきで。
「あぁ、まりぃ先生の野望のことか。ぼくにシャワーを勧めてバスローブに着替えさせてから、先生もシャワー室に入って着替えてきたけどね…。ぼくは昼寝がしたかっただけで運動はしたくなかったんだ」
う…運動って…。会長さんがサラッと口にした言葉に、私たちの顔はボンッ!と真っ赤に。でも会長さんは全く気にしていませんでした。
「無理に運動するのは身体によくない。だから、まりぃ先生には夢を見てもらっているんだよ。目が覚めたら凄く満足してると思うな。…あ~んなことや、こ~んなことを楽しんだ後、シャワーを浴びてソファでぐっすり。理想だろう?」
あ~んなことや、こ~んなこと、って…。会長さんは耳まで赤くなった私たちを見てクスクスクスと笑いながら。
「この特別室、気に入ったよ。バスローブの肌触りもいいし、制服よりずっと昼寝向きだ。中間試験まで毎日、退屈だな…と思ってたけど。明日からここに来ることにしよう。好きな時に昼寝が出来るし、教頭先生を困らせて楽しむことも出来るしね」
「…そういえば、あんたの担任は…確か…」
キース君がハッと我に返って会長さんを見つめました。
「そのとおり。教頭先生はぼくだけを担当している担任だ。どこのクラスにも属さないとはいえ、担任もいないんじゃ学園生活に支障を来たす。…だから担任が必要らしいよ。教頭先生にはせいぜい心配してもらうさ」
そう言った会長さんは私たちを促し、まりぃ先生を残して保健室を後にしたのですが。翌日から中間試験前日までの間、会長さんの保健室通いは毎日のこと。そして、たまに見かけるまりぃ先生はとても充実した顔をしていて、色っぽさは普段の5割増でした。

ドキドキの中間試験は3日間。会長さんは約束どおりA組の全員にこっそり正解を教えてくれました。おかげでA組はぶっちぎりで学年1位をゲット。グレイブ先生も大満足です。
「諸君、私は君たちを誇りに思っている。この調子で球技大会も頑張ってくれたまえ!」
えっ、球技大会?…次はそんな催しが?
「そうだ、球技大会だ。A組が1位になるよう期待しているぞ。まあ、まだしばらく先のことだが…。その前に諸君には嬉しいお知らせがある。親睦ダンスパーティーの公式録画の発売日が明後日に決定した。希望する者は生徒会室で申込書を貰い、代金を添えて書記のリオに提出するように」
ワッ、と歓声が上がりました。スウェナちゃんと私も大喜びです。待ちに待ったワルツの録画、早速申し込まなくちゃ!…大騒ぎをしている間に、会長さんは机ごとA組から姿を消していました。A組の学年1位を確保した以上、もう私たちのクラスにいる必要はないですもんね。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の部屋に行ったのか、はたまた保健室なのか。…教頭先生を困らせたくて保健室かもしれません。まりぃ先生、今日も素敵な大人の夢を見ているのかな?




「試験試験…あぁ…」
 数学の教科書を開いて見るまでは出来るようになった。
 こうして昼休みも部室で特訓!を銘打たれて。イヤだったけど先輩たちもセルジュ君も、rちゃんも付き合うと言われてしまえば、当の私が逃げるわけにも行かず……。
 でも読み始めると途端に目眩が。
「眠くなるという人はよくいるけど…」
 セルジュ君が言えば、
「珍種だな」
 笑いながらパスカル先輩が答える。
「珍しい動物みたいに言わないで下さい!」
「でもねえ…」
 クスクスとパスカル先輩の笑い声は続く。
「でも、そんな状態で入学試験で1点も採れたのって、奇跡的だと思う」
 rちゃんの鋭い指摘にぐうの音も出ない。
「たぶんね…」
 急に真面目ぶったパスカル先輩が向き直り、
「選択式の回答欄があったろう?」
「あ!」
 問題用紙は伏せたままだったけど、記号を書いた記憶があった。
「それだよ」
 全部解凍を『a』にしたっけ。あれが一つ当たってたのかも。
「よかったね、0点じゃなくて」
「うん」
 思い切り返事したけど、後から考えたらよかったのかどうかアヤシイ。
「ところでね」
 rちゃんが思い出したように口を開き、
「クラスメイトが増えたの」
「へえ。入学直後に珍しい。可愛い女の子?」
「パスカル先輩は! 違う。生徒会長」
「え!?」
 パスカル先輩とボナール先輩は驚きの声をあげた後、力の抜けた表情をしてみせた。
「先輩、どういうことなんですか?」
 セルジュ君が一年代表で尋ねる。
「アルト、もう勉強しなくても大丈夫だよ。中間対策としては、だけど」
「え?」
「生徒会長がクラスメイトになったら、学年一位は間違いなしだ」
「嘘っ!?」
 じゃあこれで一位は安泰だねってみゆちゃんたちが言っていたのは本当だったんだ!
「でも、教科書が読める努力は続けないとね。」
「う……うん」
 まぁそれでも討ち死に覚悟で頑張る必要もなくなったんだ。
 でも本当かなぁ?

 昼休みが終わって教室に戻ると、教頭先生が教室に。
 慌てて席に着くと古典の授業が始まった。
 こっちは眠くなるんだよな…。
 ―――生徒会長も眠そうだね
 メモ書きしてrちゃんに投げる。
 と、こっちを向いて、うんうんと頷いてくれた。
 でも次の瞬間、ガタンと大きな音がした。
(えっ!?)
 倒れたのは生徒会長だった。
 教頭先生が走り寄ってきて腕を取っている。
 こ、これは…まりぃ先生にご恩返しするチャンスかも!
 グッと拳を握りしめてrちゃんを見る。
 思いは同じ。
「保健室へ行った方がいいと思います」
「私とrちゃんで責任を持って保健室まで送りますから」
「早退した方がいいだろう。今、リオかフィシスを呼びにやるから」
 えええっ。なんとか保健室に拉致する方法は……。
 必死に考えていると、
「…保健室でいいよ、ハーレイ。…アルトさんとrさん…だったね。すまないけど、保健室まで連れて行ってくれるかな?」
「「はいっ!!」」
 何という幸運!
 私たちは意気揚々と生徒会長を保健室に連れて行った。
「まりぃ先生。お願いします」
「あらぁ~、可愛い仔猫ちゃんたち、どうしたのかしら?」
 奥から出てきたまりぃ先生。今日も大人の色香が漂っていて素敵ですっ
「まぁ、倒れてしまったのかしら? ベッドに寝かせて差し上げて」
 あ…あれ? 特別室じゃなくて、普通のベッドでいいんですか? まりぃ先生。
「はい」
 辛そうな呼吸でベッドに横になると、生徒会長は襟を緩めた。
 その色っぽいことったら!
 顔だけじゃなくて全身真っ赤になりそうで慌てて保健室を飛び出した。
「に……任務完了」
 rちゃんと声を揃えて言った。


 あの後何があったかなんて、私たちには分からない。
 でもまりぃ先生の色気が5割増しになったことは学校中の評判になった。
 ……原因、生徒会長?
 rちゃんとこっそり話し合ったけど、結論は出なかった。 




私たちのA組が学年1位を取れなかったら恐ろしいことになるという中間試験。「そるじゃぁ・ぶるぅ」の赤い手形で満点を乱発してもらう他に…「生徒会長さんがA組の生徒になって中間試験を受ける」なんていう奥の手があるそうですが、それってどういう意味なんでしょう?
「文字通りさ。ぼくが君たちのクラスの生徒になるってこと」
「それって、会長さんが1年A組に編入するって意味ですか?」
「うん。変かな?」
変かな、って…。会長さんは3年生なのに、どうやって1年A組に?さっぱり意味が分からず、ジョミー君たちと騒いでいると部活を終えたキース君たちがやって来ました。「そるじゃぁ・ぶるぅ」がシフォンケーキを配る間に会長さんが騒ぎの原因を簡単に説明して。
「キースなら知っているんじゃないかな?…ぼくのクラスは何組だろうね」
ふふ、と笑った会長さんをキース君は大真面目な顔で見つめています。
「…言っていいのか?どうやら皆は知らないようだが」
「構わないよ。そろそろ知ってもいい時期だし」
キース君はスゥッと息を吸い込み、私たちの方に向き直りました。
「…会長はどこのクラスにも属してないんだ。3年生だと言われているが、どのクラスにも籍が無い。…三百年以上も在籍してる、と言われて以来、俺が独自に調べた結果だ」
「「「えぇぇぇっ!??」」」
私たちはビックリ仰天です。会長さんは…どのクラスにも属していない?言われてみれば何組なのか、聞いたことは一度もありませんでした。3年生とだけ思っていたんですけど…。
「キースが言ったことは本当だよ。ぼくには決まったクラスは無い。授業も試験も気が向いたら受けたりするけどね…そういう時は何処かのクラスに適当に入れてもらうのさ」
「な…なんで…」
「三百年も学校にいると授業に出ても退屈だし、テストだって楽勝だし。…ぼくなら全科目、満点を取れる。そのぼくが君たちのクラスに入って中間試験を受けると、クラス全員に正解を教えることができるんだよ。前に『心の声』を聞いたことがあるだろう?あの要領でクラスのみんなの頭の中に問題の答えを直接、流す。…もちろん頭痛や耳鳴りを起こさないよう、意識の下にこっそり流し込むんだけどね」
「じゃ、じゃあ…会長さんが来て下さったらA組は?」
「ぶるぅの手形を使わなくても、全員、百点満点だ。皆が自分で書いた答案が全て正解なんだから」
ゴクリ。…私たちの喉が鳴りました。そして次の瞬間、キース君を除くA組の生徒…ジョミー君、マツカ君、スウェナちゃんと私は、会長さんにA組で試験を受けてくれるよう、土下座してしまっていたのでした。

翌日の朝、登校するとA組の一番後ろに机が1つ増えていて…。
「おはよう。今日から中間試験までお世話になるよ」
にこやかな笑顔の会長さんが入ってきて増えた机に着席するなり、クラス中が大騒ぎになりました。女の子は頬を真っ赤に染めて会長さんを見つめています。そして始業のチャイムと共に現れたグレイブ先生は…。
「諸君、おはよ…ぅ?!…なんだ、ブルー!なぜ、お前が私のクラスにいる!?」
「心外だな。学年1位を誇りたいんじゃなかったのかい、グレイブ?」
わぁ…。先生にタメ口ですよ!でも先生は怒る代わりに眉間に皺を寄せただけでした。
「…来てしまったものは仕方ない、か…。いいか、その代わり!必ずこのA組が学年1位だ!」
「分かっているよ。早く行きたまえ、1時間目は数学じゃないだろう?」
「ああ、残念ながらそうだったな!…お前こそ居眠りしないよう努力することだ」
カッカッカッ…と靴音を響かせてグレイブ先生は出て行き、1時間目はエラ先生の歴史の授業。私は会長さんが気になって何度か後ろを向いてみましたが、教科書とノートこそ広げてあるものの、頬杖をついて前を見ているだけみたいです。テストは楽勝とおっしゃってましたし、何もしなくてもいいんでしょうね。そうこうする間に午前中の授業が終わって昼休み。私たちはいつものようにサム君たちと合流し、会長さんも一緒に8人で食堂に行きました。
「食堂のランチも久しぶりだな。いつもはぶるぅが作ってくれるからね」
ランチセットを食べている会長さんはとても楽しそうです。
「ぶるぅって…。もしかして会長さんはぶるぅのお部屋で一緒に暮らしてるんですか?」
「だいたい当たっているかな、それで。中間試験が終わるまで、ぶるぅは一人で昼ご飯なんだ。きっと今頃、とんでもない量のおかずを作っていると思うよ」
どうやら「そるじゃぁ・ぶるぅ」は放っておくと凄い量を食べてしまうみたいです。そういえばバケツプリンを食べてたことがありましたっけ。ワイワイと賑やかな昼休みの後は、教頭先生の古典の授業。ところが授業が始まってしばらく経った時、後ろでガタン!という音が響きました。
「ブルーっ!!?」
教頭先生の叫び声で振り返ってみると会長さんが床に倒れています。貧血?それとも何かの発作?教頭先生が駆け寄って脈を取っておられますが、大丈夫でしょうか?教室中がザワザワする中、アルトちゃんとrちゃんが立ち上がって教頭先生の所へ行きました。
「保健室へ行った方がいいと思います」
「私とrちゃんで責任を持って保健室まで送りますから」
あ、そうか…。こんな時には保健室!でも教頭先生は会長さんを抱え起こして。
「早退した方がいいだろう。今、リオかフィシスを呼びにやるから」
「…保健室でいいよ、ハーレイ」
教頭先生を呼び捨てにした会長さんが弱々しい笑みを浮かべました。
「…アルトさんとrさん…だったね。すまないけど、保健室まで連れて行ってくれるかな?」
「「はいっ!!」」
アルトちゃんとrちゃんは会長さんを両脇から支えるようにして教室をゆっくりと出てゆきます。女の子たちの羨望の溜息が聞こえ、教頭先生は複雑な顔をしておいでですが…保健室なら心配することないですよね。アルトちゃんたちが戻ってくるのを待って授業再開。そして会長さんは終礼の時間になっても教室に戻ってきませんでした。

「…サボリってことないと思うんだけど」
グレイブ先生が終礼を終えて出て行った後、口を開いたのはジョミー君です。
「本当に具合悪そうだったものね。…見に行った方がいいと思うわ」
「ぼくもそう思いますけど…行きますか?試験前で部活はお休みですし」
「そうだな、とりあえず行ってみるか。とっくにトンズラしてしまっているかもしれないが」
スウェナちゃん、マツカ君、キース君たちも意見がまとまり、私たちは5人で保健室へ行ってみました。ところが保健室の扉には『おでかけ中』の札が下がっていて「御用の人は保健体育のヒルマン先生の所へ行ってね(はぁと)」と書かれた紙が貼られています。まりぃ先生、いないのかな?…じゃあ、会長さんはとっくに帰ってしまったとか?
「教室にカバンを残したままでトンズラか。確かに似合いの展開ではある」
そう言ったのはキース君。保健室のドアノブに手をかけて回してみたのはジョミー君。
「あれ?…ここ、鍵はかかってないみたい。もしかしたら奥で寝てるかも…」
ゾロゾロと入ってみた保健室の中に人影はなく、ベッドも全部空っぽです。やっぱり会長さんはコッソリ早退?
「…いや、待て。ここにドアがある。まだ新しいもののようだが…この向こうから人の気配が…」
キース君が指差したのは、最近改装したばかりのように見える新品の扉でした。物音ひとつしませんけれど、人の気配を感じるなんて…さすが柔道一直線。神経が研ぎ澄まされているんですね。
「開けてみようと思うが、いいか?…まりぃ先生に叱られた時はみんなで連帯責任ってことで」
私たちは一斉に頷き、キース君が扉を開いてみると。
「「「!!!?」」」
「……見られちゃったか……」
大きなベッドの縁に座っていた会長さんが銀の髪をけだるそうにかき上げました。学生服は床に放り出されていて、纏っているのはバスローブ。白い足はもちろん裸足です。
「ま、ま、……まりぃ先生は!?」
パニクッっているジョミー君の叫びに、会長さんは艶っぽい笑みを浮かべて。
「…ほら、あそこ」
視線の先には立派なソファがあり、まりぃ先生がそこに寝ていました。もしかして、もしかしなくても…まりぃ先生もバスローブしか着ていないのでは…。
「ぼくのために作った特別室だと言っていたよ。とても寝心地のいいベッドなんだ」
クスクスクス。会長さんはコロンとベッドに転がり、くしゃくしゃのシーツを身体に巻きつけて私たちを見上げました。ど、どうしましょう…。とんでもない所に来ちゃったかも!?? 




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